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奈良・国宝 室生寺の仏たち

2014-08-26 21:40:30 | 展示会鑑賞

 先日、仙台市博物館の特別展『奈良・国宝 室生寺の仏たち』を見てきた。暫く前から仙台市内の博物館や美術館では、「東日本大震災復興祈念特別展」と銘打つ催しが開催されており、今回の展示会もそのひとつ。特別展のチラシ表には「「女人高野」から、癒しの「みほとけ」東北初出陣」のコピーがあり、裏面にはこう紹介されていた。

室生寺は奈良県北東部、清流が発する室生の地にたたずむ古刹(こさつ)です。女人禁制とされてきた高野山に対し、古くから女性の信仰を受け入れたことから「女人高野」の別称で親しまれており、山形県酒田市出身の写真家・土門拳が愛した寺としても知られています。
 室生寺の創建は奈良時代にさかのぼり、平安時代以後は天台宗真言宗の影響を受けながら独自の信仰を集めました。境内には平安時代の五重塔や金堂をはじめ歴史ある建造物が建ち並び、十一面観音菩薩立像や釈迦如来坐像(以上すべて国宝)などの美しく貴重な仏像を多く所蔵しています。本展では、これら国宝の仏像をはじめとする、室生寺の仏像美術の数々を一堂に展示するものであり、仙台市博物館でのみ開催いたします。

 室生寺では、1998年秋の台風による倒木で五重塔が大きな被害を受けましたが、全国からの温かい支援によって2000年に復興を果たしました。こうした自然災害の痛みを経験した室生寺からのお申し出により、東日本大震災復興祈念特の展覧会が開催の運びとなりました。本展が少しでも皆様の心の励ましとなれば幸いです。


 トップの画像は特別展の目玉、十一面観音菩薩立像。他にも数多くの十一面観音菩薩立像があるが、室生寺のそれは顔立ちがふっくらしており、実に女性的な特徴なのだ。平安時代に制作されており、当時は下ぶくれ気味の顔立ちが美形とされていたらしい。私的にはもっときりっとした顔立ちの観音菩薩像の方が好みだが、ふっくら顔のそれは現代人には親しみ易く感じる。



 上は十一面観音菩薩立像と同じく国宝の釈迦如来坐像。土門拳が「日本一の美男子」と評した像だが、真正面や斜めから見た限りではおじさん風で美男子には見えなかった。だが真横から見ると、「これが同じ仏像?」と思うくらい印象が違ってくる。土門拳が日本一と評したのは買い被り過ぎではなかった。



 展示されていた地蔵菩薩像も平安時代制作だが、重要文化財である。地蔵菩薩像にしては派手な首飾りを付けており、表示違いか?と思ったほど。今回の展示以外にも首飾りを付けている地蔵菩薩像はあるが、アクセサリージャラジャラの地蔵さんでは違和感がある。やはり地蔵は素朴に装身具無しがイイ。



 同じく重要文化財だが、鎌倉時代に制作された「十二神将立像」が12体全て展示されていたのは嬉しい。像自体は高さ1mほどの小ぶりなものだが、作品はどれも個性的。とかく形式主義に陥りがちな釈迦如来や観音菩薩像に対し、自由な造形と表情がいい。若く勇ましい神将ばかりではなく、年配者や首を傾け困ったような表情の神将像もある。



 私的に最も気に入ったのが午神の神将像。正確には午伽羅大将というそうだが、午神らしくブーツを履いている。しかもそのブーツにはベルト飾りもついており、デザインは現代のシューズショップで売られている品と殆ど同じ。右手は腰に当て、左手は高く上げるというポーズがまたイイ。とても力強い印象だし、同行した友人はこの像を見て、こう言っていた。
「まるでロックスターのようなポーズだね~ 「みんな、ノってるかい!」と叫んでいるような…」

 東日本大震災がなければ、このような御仏は“東北初出陣”しなかったはず。未だに不自由な生活を強いられている被災者には申し訳ないが、国宝級の仏像を拝観できただけで嬉しい、というのが実感である。次回も復興祈念特別展があることを願いたい。

◆関連記事:「法隆寺/祈りとかたち展
 「神さま仏さまの復興-被災文化財の修復と継承-展

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