エントリー名から映画007シリーズを連想された方もいるだろうし、このスパイアクションから題名を借りた。しかし、これから書くのは映画ではなく、以前に見たNHK BS1のTVドキュメンタリーへの感想。ダイヤモンド取引についての取材番組だった。
1年ちかく前だったか、記憶が曖昧となっているが、アフリカの紛争地でのダイヤ密売を規制、取引所を一括、一本化し公正な貿易を目指そうとする運動についての特集だった。ダイヤモンドには無縁の庶民ゆえ、この宝石相場には全く無知な私でも、世界のダイヤモンド市場をユダヤ人が牛耳っていることだけは知っていた。番組の内容の大半は忘れたが、アフリカ人とユダヤ人が議論しているシーンだけは妙に憶えている。
当時、アフリカの紛争地で採掘、密売されたダイヤが武装勢力の資金源になっているとの理由で、ダイヤ取引を世界で一本化、フェア・トレードを目指そう、というキャンペーンが行われていた。一見まっとう至極な理念に聞こえる。番組には名を忘れたがダイヤ産出国の代表と、ダイヤ仲買人をしていたというユダヤ人とのやり取りが映された。ユダヤ人らしくキッパ(kippa)と呼ばれる丸帽を被り、丸々と肥えた体型ながら、実に鋭い眼光の男は畳み掛ける口調でアフリカ人を説得していた。
密売ダイヤが紛争の資金になっていることは大いに問題だ、ダイヤの取引は一括管理し、公正なルールに乗っ取り行われるべきだ、管理は全世界で一本化すべきである、あなたはこの取り決めに参加することによって人権蹂躙防止に貢献することになる、参加してあなたの名を残したくないのか、すぐにでもダイヤの管理組織が必要なのだ…など殆どユダヤ人が捲くし立てていた。紛争地での人道問題など口実に過ぎず、ビジネスのみが目的なのは様子からも明らかで、この類の者なら担保として胸の肉1ポンドをとりかねないと感じさせられた。ユダヤ商人の強欲さは悪名高いが、そのイメージにぴったり当てはまる人物だった。
対するアフリカ人はやや懐疑的で、話しからこれまで紛争となるや人道支援の元に胡散臭い者や組織が現れたことを伺わせた。それでも取り決めを急かすユダヤ人に押され気味で結局は同意する。ユダヤ人が何度も口にした言葉が管理で、彼らが管理、指導するダイヤ貿易での傘下に入ったということになる。
この特集を見て、どうも私は腑に落ちなかった。密売されたダイヤで紛争が長引き、深刻な人権侵害が行われているのは問題にせよ、ダイヤ貿易は正規、密売問わず、これまでも問題のある政府や組織の資金源となっている。南アフリカのアパルトヘイト体制が典型だが、この国がナチスに追われたユダヤ人受け入れに前向きだったことは案外知られていない。何故今になって、ダイヤ貿易を一元化、管理するのか不可解だった。だが、先日『だれも知らなかったインド人の秘密』(パヴァン.K.ヴァルマ著、東洋経済新聞社)を読み、合点がいった。この本は2005年に出版(邦版は翌年)されたものだが、その128頁の一部を抜粋したい。
-アントワープでは世界有数のダイヤモンド証券取引所でユダヤ人を凌ぎました。そのシェアは260億ドルのダイヤモンドビジネスのうち、25%だったのが今では65パーセントにまで伸び、ユダヤ人によるものは70%から25%に落ち込みました…
インド商人がダイヤ取引でユダヤ人を凌いだとは知らなかったが、インドも昔から宝石の豊富な国であり、この方面のビジネスは長けている。単純にこの数値だけ見ても、ユダヤ商人の利権が大いに損なわれたことが知れる。最近になって声高に叫ばれるようになったダイヤ密売問題の裏事情と無関係とは思えない。昨年日本でも公開された米映画『ブラッド・ダイヤモンド』で、ダイヤ密売を知った人も少なくなかっただろう。欧米メディアでは今でもユダヤ系の独壇場でインド人の付け入る余地はない。
ダイヤに関る諸問題など、この光り物と絶縁状態にある私は考えたことはなかったが、複雑な背景があるのは確か。ビジネスの世界では人道をも具としても不思議ではない。今にして思えば、映画『ブラッド・ダイヤモンド』もある種のプロパガンダだったのか。それでもダイヤを贈り贈られたい人間は絶えることがないため、ダイヤモンドの問題は永遠に続く。
◆関連記事:「ブラッド・ダイヤモンド」
よろしかったら、クリックお願いします
1年ちかく前だったか、記憶が曖昧となっているが、アフリカの紛争地でのダイヤ密売を規制、取引所を一括、一本化し公正な貿易を目指そうとする運動についての特集だった。ダイヤモンドには無縁の庶民ゆえ、この宝石相場には全く無知な私でも、世界のダイヤモンド市場をユダヤ人が牛耳っていることだけは知っていた。番組の内容の大半は忘れたが、アフリカ人とユダヤ人が議論しているシーンだけは妙に憶えている。
当時、アフリカの紛争地で採掘、密売されたダイヤが武装勢力の資金源になっているとの理由で、ダイヤ取引を世界で一本化、フェア・トレードを目指そう、というキャンペーンが行われていた。一見まっとう至極な理念に聞こえる。番組には名を忘れたがダイヤ産出国の代表と、ダイヤ仲買人をしていたというユダヤ人とのやり取りが映された。ユダヤ人らしくキッパ(kippa)と呼ばれる丸帽を被り、丸々と肥えた体型ながら、実に鋭い眼光の男は畳み掛ける口調でアフリカ人を説得していた。
密売ダイヤが紛争の資金になっていることは大いに問題だ、ダイヤの取引は一括管理し、公正なルールに乗っ取り行われるべきだ、管理は全世界で一本化すべきである、あなたはこの取り決めに参加することによって人権蹂躙防止に貢献することになる、参加してあなたの名を残したくないのか、すぐにでもダイヤの管理組織が必要なのだ…など殆どユダヤ人が捲くし立てていた。紛争地での人道問題など口実に過ぎず、ビジネスのみが目的なのは様子からも明らかで、この類の者なら担保として胸の肉1ポンドをとりかねないと感じさせられた。ユダヤ商人の強欲さは悪名高いが、そのイメージにぴったり当てはまる人物だった。
対するアフリカ人はやや懐疑的で、話しからこれまで紛争となるや人道支援の元に胡散臭い者や組織が現れたことを伺わせた。それでも取り決めを急かすユダヤ人に押され気味で結局は同意する。ユダヤ人が何度も口にした言葉が管理で、彼らが管理、指導するダイヤ貿易での傘下に入ったということになる。
この特集を見て、どうも私は腑に落ちなかった。密売されたダイヤで紛争が長引き、深刻な人権侵害が行われているのは問題にせよ、ダイヤ貿易は正規、密売問わず、これまでも問題のある政府や組織の資金源となっている。南アフリカのアパルトヘイト体制が典型だが、この国がナチスに追われたユダヤ人受け入れに前向きだったことは案外知られていない。何故今になって、ダイヤ貿易を一元化、管理するのか不可解だった。だが、先日『だれも知らなかったインド人の秘密』(パヴァン.K.ヴァルマ著、東洋経済新聞社)を読み、合点がいった。この本は2005年に出版(邦版は翌年)されたものだが、その128頁の一部を抜粋したい。
-アントワープでは世界有数のダイヤモンド証券取引所でユダヤ人を凌ぎました。そのシェアは260億ドルのダイヤモンドビジネスのうち、25%だったのが今では65パーセントにまで伸び、ユダヤ人によるものは70%から25%に落ち込みました…
インド商人がダイヤ取引でユダヤ人を凌いだとは知らなかったが、インドも昔から宝石の豊富な国であり、この方面のビジネスは長けている。単純にこの数値だけ見ても、ユダヤ商人の利権が大いに損なわれたことが知れる。最近になって声高に叫ばれるようになったダイヤ密売問題の裏事情と無関係とは思えない。昨年日本でも公開された米映画『ブラッド・ダイヤモンド』で、ダイヤ密売を知った人も少なくなかっただろう。欧米メディアでは今でもユダヤ系の独壇場でインド人の付け入る余地はない。
ダイヤに関る諸問題など、この光り物と絶縁状態にある私は考えたことはなかったが、複雑な背景があるのは確か。ビジネスの世界では人道をも具としても不思議ではない。今にして思えば、映画『ブラッド・ダイヤモンド』もある種のプロパガンダだったのか。それでもダイヤを贈り贈られたい人間は絶えることがないため、ダイヤモンドの問題は永遠に続く。
◆関連記事:「ブラッド・ダイヤモンド」
よろしかったら、クリックお願いします
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/ca/649e7ae42e8eac9d4a8db35b1b6c094e.png)
![にほんブログ村 歴史ブログへ](https://history.blogmura.com/img/history80_15_femgreen.gif)
カナダへオーロラ見物に行かれたとはすごい!極寒の地でもオーロラはさぞ見ごたえがあったでしょうね。
ダイヤといえばアフリカやインドのような南国が思い浮かぶので、カナダも金やダイヤモンドがとれるとは知りませんでした。オーロラが見られる地は冬季はマイナス40度以下にもなるとは、やはり北極圏ですね。面白いお話を有難うございました。
最近叫ばれる地球温暖化で北極海の氷が解け、そこに眠る資源を巡り、カナダを含む周辺諸国で早々確執が起きていますね。
ウランはともかく、ダイヤモンドは古代から珍重されてきましたからね。
ダイヤも装身具以外に工業用として利用されてますが、鉱物を扱う組織なら価値が下がることを何としても阻止したいでしょう。