トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

評論家という名の似非文化人 その⑤

2010-03-04 21:28:09 | 読書/ノンフィクション

その①その②その③その④の続き
 トマスの物語から、またも山本七平は20世紀の事柄と比較するという展開をしている。再び「聖トマスの不信【その2】なぜ日本では、聖トマスが存在しないのか?」から引用する。

北ヴェトナム軍がユエで市民を生埋めにして虐殺した、と『サンデー毎日』編集次長の徳岡氏が書いておられる。これが事実なら、それは徳岡氏の思想・信条とは関係なく事実だから、もし何らかの名目で氏を非難する者がいたら、その者の頭がおかしいといわねばなるまい。これは『百人斬り競争』でも同じだし、「増原長官」の辞任問題(増原内奏問題)の一面も同じであろう。
防衛庁長官であった増原惠吉昭和天皇への内奏において、昭和天皇から戴いたお言葉を新聞記者に漏らしたことがキッカケで天皇の政治利用と批判を浴びて辞任する羽目になった。その辞任の際、増原長官は「天皇陛下から国政に関する御発言があったという事実は一切ございません」と以前本人が新聞記者に話した内容を否定したことを指す。

あったこと」を「なかったこと」にすると、正直に「あった」といった人間を「嘘つき」にしなければならない。そこである記者の話によれば彼を「捏造大臣ということにして」「記者団に虚偽の発表をした」ということにして、辞職させたそうだが、これが事実なら、実に「二重の虚偽」である。そして「トマスの不信」を認めないと、人は必ずこの「二重の虚偽」に落ちていく…

 週刊誌の編集次長は職務上、思想・信条とは関係なく特ダネを載せるにせよ、週刊誌に誤報も珍しくない上、たとえ頭のおかしくない者でも「不都合な事実」を認めず、出鱈目呼ばわりするケースも少なくない。残念ながら“事実”が必ずしも事実とはならず、虚偽やでっち上げが“真実”となるのも人類史なのだ。イエスの復活という「なかったこと」を「あったこと」にして、率直に「なかった」といった人間を「冒涜者」扱いにした社会は、何重もの虚偽を重ねることになった。「歴史とは、合意の上に成り立つ作り話に他ならない」とナポレオンも言っている。

 山本を私に熱心に紹介した「一知半解男」氏は、そのコメントで山本の言葉を挙げていた。「私自身は、その人がどんな”思想”をもとうとその人の自由だと思うが、ただもし許されないことがあるなら、自己も信じない虚構を口にして、虚構の世界をつくりあげ、人びとにそれを強制することであると思う…
 ならば全ての宗教、殊に処刑された教祖が蘇ったというキリスト教こそが虚構の世界に成立、信者のみならず異教徒にもそれを強制しているが、信者のよしみもあり山本はこの点には当然触れない。存在しないユダヤ人という虚構を口にして、虚構の世界をつくりあげた人物でもあるが、キリスト教徒にとって異教徒への嘘は罪にもならない。

「一知半解男」氏は自らのブログ記事で「山本七平信者の一知半解男です」と自称しており、相当な山本の心酔者である。それ自体は個人の信条の自由だが、山本の間違いや読者を欺く詐術的な論理展開を示しても、決して認めない。氏の山本擁護の決まり文句はこのパターン。「勿論、山本七平にも間違いはあるでしょう。彼の主張の「前提や彼の認識」が間違っている場合だってあるわけですから。ただ、その前提や認識が間違っているからと言って、それから導き出した彼の論理そのものを即座に否定することは出来ません」
 基礎となる前提や認識が誤っていれば、その結論もまた間違いとなるのだ。捏造データに基づいて出された地球温暖化説を、否定せずそのまま根拠とする環境保護活動家の心理と同じだろう。

 スパイ小説にはスリーパー(sleeper)と呼ばれる一般市民を装う潜入スパイが登場し、隠れ蓑として本屋を営む者がいる。wikiの山本の解説には興味深い箇所がある。
-1956年、世田谷区の自宅で聖書学を専門とする出版社、山本書店株式会社を創業する。山本書店を始めた頃に帝国ホテルのロビーを原稿の校正作業にしばしば使用していたら、フランク・ロイド・ライトのマニアということがきっかけでジョン・ジョセフ・ローラーとその友人ミンシャ・ホーレンスキーと親しくなった…ローラーは在日米軍の海外大学教育のため来日していたアメリカのメリーランド大学の教授で、1972年の大宅壮一ノンフィクション賞授賞式にはベンダサン代理として出席した。ホーレンスキーは特許関係の仕事をしているウィーン生まれのユダヤ人、妻は日本人…

 ブログ「世間の片隅で」の昨年8月の記事で、管理人「葵」さんはこの件に触れられている。「帝国ホテルはGHQの宿舎だったところ。今ではホテルで待ち合わせは珍しくないけど、当時は一般人には敷居が高い。そこで…わざわざ原稿の校正作業にしばしば使用していた…とは何かを感じる

 私も全く同感であり、まして天下の老舗ホテル。さらに1956(昭和31)年当時、聖書学を専門とする出版社など、キリスト教徒の至って少ない日本では経営が成り立つのは難しいはずだ。山本が何らかの支援を受けていたと見なしても当然だろう。GHQは戦後の日本支配で日本人クリスチャンを大いに活用していたし、後者も積極的に協力した。ある筋と繋がりのある御用評論家など、現代の言論界でも珍しくないし、むしろその手合いが大半だろうと私は思っている。評論家の地位は文才よりもパトロン次第で確立するのだろう。著名になった評論家を大半の人々は時の文化人として、疑いもせずご託宣を有難く拝聴する。

◆関連記事:「イスエラルの御用文化人
 「山本七平信者との対話
 「日本人のためのアラブ史教科書?

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23 コメント

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疑心暗鬼・・ (人参)
2010-03-05 13:53:59
国際基督大学の設立にD・マッカーサーは関与しているようです。
戦後指導者を失った日本にキリスト教を布教させようとしたような文を何かで読んだ記憶がかすかに・・。
眞子内親王はこの大学に入学されたそうです。
「天皇のロザリオ」なんていう本もありますし。
私としては戦後の平和は、憲法9条ではなく、
アメリカによる日本平定状態であることに日本国民が気付いてほしいものです。
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Re:疑心暗鬼・・ (mugi)
2010-03-05 21:21:19
>人参さん、

 全く同感です。憲法9条を持ち上げるサヨク同様、日本人クリスチャン文化人の多くは他国のひも付きだろうと私は見ています。捕虜になって以降、山本はずっと米国に仕えていたはず。アメリカの大学教授が大宅壮一ノンフィクション賞授賞式に、ベンダサンの代理として出席しただけで意味深だと思いませんか?

 英領インドでも王族を取り込み、統治に利用したように、日本の皇室にも同じ対応をしたのは容易に想像が付きます。皇族を改宗させれば、キリスト教化が出来ますからね。山本も知人の米国人たちと「何故、日本でキリスト教が普及しないのか」と話し合っていたから、その手先だったはず。他宗教を認めないのがキリスト教ですから。

 不可解なのはクリスチャンでもないはずのブロガー氏の盲目的崇拝ぶり。一物書きの意見を疑いもしない能天気さはサヨクといい勝負です。
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昭和期軍部への恨み、など (室長)
2010-03-05 23:14:48
mugiさん、
(1)昭和期軍幹部の形式主義、非人道性
 大米帝国が、占領した日本国に、将来とも使えそうな人物にてこ入れして、戦後も資金提供したりして育成してやっていた・・・それが山本七平の正体だ、ということですか。まあ、あり得る話しでしょう。資金を出せる機関としては、やはりCIAなのでしょう。とはいえ、あの当時、山本は、それなりに左翼思想の観念論を排撃し、「正しい右翼思想」を指し示そうとしていたように、小生は感じていました(70年代後半だと思うけど)。
 また、小生は、インパール作戦に関する批判的な記録を中学生の頃図書館で読んでいたので、昭和期の日本陸軍に対し、非常にマイナス・イメージが強く、山本七平、水木しげるなどが、昭和期の陸軍で将校が訳もなく部下を鉄拳で殴るとか、作戦現場への兵站が、ほとんど無視されていて、現場で兵隊達が食糧、飲料水の調達も出来ず、餓死者まで出る、或いは南洋で風土病でどしどし死亡する、などの惨状があり、他方で、将校らは缶詰とか、良い食糧を独占して配給されたり、インパール作戦の司令官などは、芸者を引き連れて進発するなど、全く呆れたことばかり。
 そういう意味で、司馬遼太郎も、昭和の幹部青年将校達を呪うようになるし、山本、水木も、何とか生還できたことを喜びつつ、戦争中の大本営、秀才参謀達の現場の苦労無視、非人道的な突撃作戦だけという精神主義に大反発したこと、戦後も、そういう幹部将校への反感が消えなかったことなど、全く正しいと思います。兵站・補給という概念が不十分で、現場では夜襲・突撃という、体当たり主義、兵隊の生命の軽視、全て昭和期軍部の大欠陥です。だから、元来クリスチャンだった山本七平は、昭和期の軍部を大嫌いになっただろうし、水木しげるも、司馬遼太郎も同じだったと思う。

(2)ライシャワー大使への悪口
 ハワイにいるとき、在日米大使館に勤務していた国務省のお役人と話したことがあります。彼は、自分が仕えていたライシャワーという大使について、日本側の利益に配慮しすぎて、圧力行使を控え、米国の国益を損なった、ダメな大使であったと酷評していました。
 館員としては、もっと強行に日本に圧力をかけて、叱りつけて欲しい場面でも、ついつい柔らかく苦情を言う程度で、効果が薄かったのだそうです。そういう本音を日本人である小生に、はっきり言う人がアメリカの外交官の中にはいて、まあ、ある意味米国人は、本音としては、日本人をそれほど嫌いではないのだな、と感じたものです。舞台裏をある程度明かせると考えていると言うことは、本当の敵とは見ていないということ。
 在日米大使館ばかりではなく、どこでも米国の外交官は、現地政府に圧力をかけ、自国の国益にそった形での政策を押しつけるのです。また、現地にCIAエージェントを養うのも、当然のことでしょう。
 他方、小生も、戦略的には日米協力を重視する方なので、山本七兵が、CIAエージェントでも、言っていることが正しければ構わない。しかし、mugiさんが言うように、色々それなりの偏見があるとすれば、そこは気をつけないといけませんね。

(3)韓国には、何故クリスチャンが多い?
 さて、山本がクリスチャンで、米国政府から信用され、支援もされていたということと関係があるのか、無いのか。小生は、ハワイでかなり多くの韓国人が、現地の韓国人教会(注:ハワイでは、各クリスチャンが、宗派別ではなく、民族別に、日本人は日本人教会、韓国人は韓国人教会、サモア人は、サモア人教会にそれぞれ日曜毎の説教を聞きに行く、という状況だった)に通うクリスチャンだと気づき驚きました。たぶん現在、韓国人の約4割は、クリスチャンで、しかもカトリックよりプロテスタント系が多いのではないかと思う。
 本来韓国人も、仏教と儒教が宗旨だったと思うが、朝鮮戦争後に、クリスチャンが増えたのではないかと想像します。小生がハワイにいた、80年代初頭、ハワイ(米国)に移民が認められる韓国人は、医師、弁護士、技術者などの高学歴者が多かったけど、中には在日だった人も結構いて、彼らは、どうも推測するに、クリスチャンが多かったように思う。米国が、韓国移民の受け容れ枠を緩和したのは、まず、ベトナム戦争への韓国軍の貢献が理由の一つだが、その緩和枠の中でも、クリスチャンの方が、移民を認可されやすい、というような状況もあって、韓国で急速にキリスト教が勢いを増したのでは無かろうか?それに、朝鮮戦争もあって、韓国人の多くが、一族を分散しておく必要性、特に米国に一族の誰かを移住、移民させて、いざ再度半島に動乱があれば、米国に難民として受け容れて貰いたい、という思惑もあり、そういうような非常時に役立つのは、キリスト教会系の支援機関でもある・・・そういう意味でも、一族の生き残り作戦として、キリスト教徒になる、という選択があったのではないか?と、小生は、過酷な韓国人の歴史的教訓から、クリスチャン信仰への転換、米国移民、或いは諸外国への移民の増大があったという風に想像しています。
  もっとも、以上は推測で、小生はきちんと調べていないので、誰か韓国通の人にご教示願いたいですね。
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韓国のクリスチャン (室長)
2010-03-06 13:15:12
mugiさん、
 その後、wikiの情報を当たってみると、韓国では人口の3割がクリスチャンで、キリスト教の布教は、併合後の総督府なども支援したらしいことが記述されている。すなわち、日本統治下の韓国で、キリスト教宣教師が増えたらしい。
 興味深いことに、カトリック対プロテスタントの比率は、1:2と後者が多いらしい。しかも、スコットランド特有の長老派教会が強いらしい。なぜ長老派?と小生には少し不思議でしたが、確かに今から25年ほど前位置度韓国を観光したときに見たのは、長老派教会の看板で、ソウル市の中心部だったように思う。
 また、最近では、韓国の教会が全世界に派遣する宣教師の人数が、米国など他の教会に比べて異常に多いらしい。この数字には、統一教会という文鮮明の偽キリスト教の宣教師も含むのかどうか?(日本人の統一教会信徒は全世界の各地にはびこっています)。

 ともかく、韓国のキリスト教会は、全世界に布教の姿勢を示しているし、パラオでは、この韓国教会施設を宿所にして、韓国の医師、看護師による短期の「診療ミッション」が来訪して、現地人に医療支援するなど、巧妙に各国に浸透工作している感じでした。
 
 
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Re:昭和期軍部への恨み、など (mugi)
2010-03-06 20:24:58
>室長さん、

 私も水木しげるの従軍体験を描いた漫画「総員玉砕せよ」を見たことがあり、とかく訳もなく部下を鉄拳で殴るシーンがありました。作家・池波正太郎の軍隊体験を書いたエッセイにも、自らが殴られたことが描かれてあり、私自身も昭和期の日本軍に対するマイナス・イメージが強かったですね。
 しかし、軍隊や戦争を扱った米国映画を見て、特に日本軍だけが酷かったとは言えないのではないか?と思うようになりました。「地上より永遠に」「プラトーン」「フルメタル・ジャケット」…酷い上官が登場したり、軍隊内部のイジメも出てくる。映画は誇張もあるかもしれませんが、ソ連邦崩壊前後は軍隊内でリンチや兵士の餓死者まで出ていた!第一次大戦を描いたレマルクの小説「西部戦線異状なし」も、軍隊内部の非人道性が見られる。これは日本軍の特殊事情ではないのではないか、と。

 日本の作家達の幹部将校への怒りは共感できますし、当然だと思います。兵站・補給もまるでなってない上、精神主義だけを唱え、兵士の生命を軽視したのは論外でした。
 ただ、日清、日露戦争時は兵士を大切にしていたのかも疑問に感じます。先の戦争で軍幹部の形式主義、非人道性への憤りが消えない理由は、敗戦ということに尽きるのではないでしょうか?極めてありえないことにせよ、もし勝利していれば、かなり心象も違ってきたのでは?

 国務省のお役人がライシャワーの悪口を言っていたのは興味深いですね。本当の敵とは見ていないというのは、日本には既に反抗する気概もないと思っていたのかも。もっともライシャワーのような大使がいたからこそ、日米同盟が巧く機能したのではないでしょうか?
 大英帝国も大米帝国も諜報機関をフル活用し、使えそうな現地人協力者を育成するのはお手の物です。たとえ戦後の日本で米国から資金を得ていた文化人でも、日本の国益になる正論を吐いていれば構わないと私も思います。しかし、時代と共に価値観は変わる。左翼全盛の'70年代前半なら山本は有益だったかもしれませんが、今では有害だ、と言った団塊世代の女性ブロガーもおり、私も同感です。

 私が山本に不信感を持つのもユダヤの息のかかったクリスチャン、ということに尽きます。欧米列強の植民地で改宗クリスチャンがいかに忠実な協力者、売国行為を働いたか知っているし、現に日本人キリスト教徒にも反日傾向がある。血筋的には同じでも宗教が異なれば、別民族となるのが他国では当り前です。

 私も韓国通ではないので、あの国の宗教事情には浅学ですが、「世界宗教地図」(石川純一著、新潮文庫)によれば、朝鮮半島でキリスト教が根付くようになったのは近代になってだそうです。清の属国として政争に明け暮れ、腐敗を極める李氏朝末期、儒教を真っ向から否定するのはキリスト教だけだったので、抵抗運動のドクマになったそうです。日本からの独立運動家にも朝鮮人クリスチャンが多かったそうで、戦後も民主化、労働運動を指導したとか。
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Re:韓国のクリスチャン (mugi)
2010-03-06 20:26:54
>室長さん、
 
 紹介されたとおり、韓国のキリスト教徒はやはりプロテスタントがカトリックより多く、元大統領・金泳三は前者、金大中は後者です。'94 年の統計では国民の24%がキリスト教徒だそうで、在日もクリスチャンが多いと聞きました。在日もプロテスタントが多いのか不明ですが、統一教会以外にも如何わしいカルト系キリスト教団も少なくない。

 アフガンで韓国人布教団が人質になり、殺害された事件がありましたね。こちらでは失敗しましたが、全世界に布教の姿勢を示す韓国のキリスト教会の動きは不気味です。日本のキリスト教会では韓国人神父を招いたりするそうで、連帯して反戦、平和活動とやらを行っているから、反日敵対集団でしょう。
 韓国人クリスチャンは国内でも他宗教に敵対的な行動をすることもあり、偶像崇拝を止めさせるため、他宗教の施設を破壊した者がいたことを、以前ネットニュースで見ました。このような教徒とは、絶対共存できませんね。
返信する
眞子内親王の場合 (スポンジ頭)
2010-03-06 20:32:27
横レスすいません。

眞子内親王の場合は学習院が荒れているので避けた感じですね。
ttp://headlines.yahoo.co.jp/cm/main?d=20100306-00000008-scn-int
>>ナイフによる傷害事件もあり、隠密に処理され、表に出てないと保護者から聞いたことがあり、

ttp://headlines.yahoo.co.jp/cm/personal?z=20100305-00000165-jij-soci&u=.7f9ExZ883gXStOlWENuVfc-
>>眞子様がICUに入学したり学習院離れも偶然ではないと聞いている。

初等科の話だそうですが、これが本当ならひどい。眞子内親王の場合は皇室キリスト教取り込みの陰謀ではないと思います。
返信する
人命軽視 (室長)
2010-03-07 09:51:09
mugiさん、
 父親の回顧によると、海軍の場合は、水兵は艦上生活ですし、食料品は十分積載されていて、陸上(軍港近くに家族が生活)の家族が食べる食物不足の方が大変だったようです。ただし、水兵の場合、軍艦が米国潜水艦の餌食となり始めてからは、死亡率が恐らく陸軍より高くなっていた。
 なお、インパール作戦に従軍させられた陸軍徴兵達(小生の学校の先生の話)などによると、本当に酷い食糧事情で、現地調達主義とかもあり、食べられるものは何でも工夫せざるを得ず、蛇などもごちそうの部類だった。空から襲う英空軍機に対しては、地上から機関銃などで応戦することも多かったけど、ある時鳥が群れ飛ぶのに対して機銃攻撃して実験したら、一羽も当たらなかったので、ましてや飛行機に対し発砲すると、日本軍の存在がばれて、報復の爆弾が降ってくるだけで、無駄と判断して、部隊長が航空機への機銃反撃は止めるよう命令したそうです。まともな指揮官もいたのです。
 牟田口という司令官は、チンギスカーンに倣い、馬倒れれば馬を食らい、とかいって、輸送馬などを食糧とする、という程度の兵站感覚で、自分はトラックに乗せた芸者らも引き連れて進発したという。全く言語道断の司令官です。

 太平洋戦線(グアダルカナル島)でも、現場将校達は、まともな作戦計画を立案できず、夜襲・肉弾突撃という、全く部下を無駄死にさせる作戦を多用したので、米軍、豪軍などは、夜襲に備えて機関銃を並べ、毎晩のごとく日本兵を機関銃の餌食にしたそうです。兵隊に食べさせる食糧もないし、士気を保つという目的も加わり、無意味な夜襲作戦を繰り返したようです。大本営でも、いくら多数の兵士が無駄死にしても、紙の上では、どこそこで夜襲、戦果多数などと、統計的なきれい事を並べられれば、それで良かったようです。小生は、そういう昭和期の軍人、あるいは、203高地で同じように、肉弾突撃を無意味に命令し、繰り返して、兵士の生命を軽視したという乃木希典将軍などが大嫌いです。
 もちろん、米軍、その他でも、映画ではそういう場面も出てくるでしょうけど、日本軍の規模で、兵站軽視によって、作戦現場で兵士を飢えさせ、或いは無駄な肉弾攻撃主義で、人命を損なった軍隊は少ないと思う。朝鮮戦争における人民解放軍も、兵器不足を人命でカバーしたらしいけど、それは共産党の軍隊だから、非人道的な面があって当然かも。
 我が日本軍だから、許せない!形式主義、作戦思想の貧困、せめて機関銃とか、三八式歩兵銃よりはまともな兵器をより多数配備、装備して、戦う位の常識もなかった軍隊とは、情けない!!
返信する
Re:眞子内親王の場合 (mugi)
2010-03-07 20:49:01
>スポンジ頭さん、

 興味深いサイトを2件紹介されて頂き、有難うございました!
 学習院が荒れていたとは初めて知りました。皇族が通う名門のイメージのある学習院で傷害事件があったとは…このようなことを地元紙では載せていません。ネットはやはり重宝です。
 
 ただ、いかに学習院が荒れているので避けるにせよ、ICU以外の学校もあるのに、何故ここを選んだのか不思議です。誰が勧めたか、やはり策謀があったのか、つい疑りたくなります。
返信する
Re:人命軽視 (mugi)
2010-03-07 20:49:37
>室長さん、

 戦争時のお話、惨すぎて言葉もありません。インパール作戦など日本軍ばかりか、インド国民軍も甚大な戦死者よりも餓死者を出すという、軍事に素人の私から見ても弁護の余地もない惨敗です。しかし、歴史観は十人十色ですが、この作戦は日本の将校による「至誠と愛情と情熱が出発点だった」と書いているブロガーもいるのには唖然とさせられました。よほどインド独立運動の背景を指摘してやろうかと思いましたが、このブロガーやファンから在日かシナ工作員呼ばわりされるのは目に見えているので、止めました。
http://nezu621.blog7.fc2.com/blog-entry-789.html

 ガダルカナル島の“玉砕”のことをはじめて聞いたのは、中学の歴史の授業でした。「玉砕」とは正にきれい事の最たる表現ですが、惨死に他ならない。きれい事を並べ、全滅の現実を見たくなかったのやら。
 水木しげるの「総員玉砕せよ」にも楠木正成に憧れる青年将校が登場し、楠木気取りでゲリラ戦をやろうとしている。結果は書くまでもありません。誰にも看取られず、ジャングルの中で戦死していった若者が哀れでなりませんでした。

 仰るとおり枢軸国軍、殊に日本軍ほど兵站軽視により夥しい人命を損ねた国もありません。ドイツも追い込まれていましたが、作戦思想は貧困ではなかったはず。本当に何故これほど差が出たのか?
 朝鮮戦争での中国人民解放軍は、国民党の敗残兵を前線に投入した上、元から膨大な人口があり人海戦術が効く。今でもあの国は人命など尊重しないのだから。しかし、日本軍が中共と同様の人命損失をしていたとは、情けないだけでなく解せません。戦争は生きるためにやるものであり、死ぬためではないのに。
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