その①の続き
7月20日付けの河北新報のドーア氏によるコラム「アジアでの覇権争い、米の影響力低下は必至」の冒頭も、著名人を挙げつつ展開していて興味深い。
-「競争相手 中国、インド、日本の三角形の権力争いが我々の次の十年をこう形成する」。最近出版された、前エコノミスト誌編集長エモット氏の本の刺激的なタイトルである。一流のジャーナリストに相応しく情報も豊富、新鮮なアイデア、洞察力に長けた分析である…
同国人のよしみもあるのか、辛辣な論調の多いドーア氏にしては珍しくエモット氏を賛辞して書いている。だが、コラムの半ばにはこうある。「しかし、エモット説の基本的な欠陥は、その「三角形」という枠にある。四画関係なはずだ。東アジアにおける「権力争い」を論ずるなら、依然として主役は韓国・沖縄・グアム・台湾を防衛圏前線としている、米国だということは出発点だろう」。さらにエモット氏の分析の誤りを正して記す。
-しかし、長期的にはアジアでの覇権が米国から中国へ移るということの可能性、或いは必然性、についてはあまり言及しない。「我々の次の十年」という彼の題の制約だろう。“我々”とは“人類”というより米国を親方とする“西洋”を指しているようである。おそらく、その“西洋”の“日食”の話は避けたい…
末尾近くでドーア氏は根拠として、中国の実質総生産が米国のそれを凌ぐのは2027年、米国の2倍になるのは2050年というゴールドマン社専門家の予測を挙げている。私はエモット氏の著書は未読の上、経済にはド素人だが、エモット氏の分析よりも己の見解が正確なのだという主旨だけは理解できる。これには苦笑させられる。それを日本の地方紙風情で述べた所で、所詮子供騙しの負け犬の遠吠えなのだ。直接エモット氏に反論でも書いたら如何、と言いたくなるが、日本の地方紙など見向きもしないエモット氏はドーア氏の意見など歯牙にもかけないだろう。
もちろん、中長期的にアジアで米の影響力が低下するのは書くまでもないが、中国に関しては専門家の意見も多岐に亘っている。2027年になれば、ゴールドマン専門家の予測が正しいのか証明されようが、資本家の小判鮫的職業であるエコノミスト連中の予測が当たる確率を調査すればさらに面白い結果が得られるかもしれない。
ドーア氏の著書『働くということ』(中公新書)の前書きだけを見たことがある。内容は殆ど忘れたが、「私の元には日本語で「貴方はこう言ったではないか」という皮肉のメールが来る。そのため英語で書いた…」との箇所だけは憶えている。私も含めドーア氏の元に皮肉のメールを送る日本人がいたことが分って笑えた。ただ、ドーア氏にメールする無名日本人もまたごまめの歯軋り程度であり、ドーア氏には痛くも痒くもないだろう。
ドーア氏の言う「狭い国益を超えて「良心国」として堂々と、国際会議で積極的に発言すれば国民の支持を得られよう」の“国民”もまた日本ではないのが知れる。中国含めアジア諸国、欧米国民にとって、望ましい「良心国」ということだ。平たく言えば、これまでどおり国益など二の次で、金は出すが口は出さない姿勢に徹しろということ。そんな国なら国際社会で受けがよいのは当然だが、ふと私はムハンマド・アリー朝のエジプト総督サイード・パシャ(在位1854-63年)のことを思い出す。サイードは欧州人から「善人」と呼ばれ、高く評価されていたが、取り巻きの欧州人の進言に易々と従った好人物でもあったからだ。あのスエズ運河会社に土地の全てを事実上無償で与え、会社に領土的な主権も認めている。結果は財政破綻と植民地化の進行。一方、日本を代表するイスラム学者・山内昌之氏は、サイードには「欧州諸国に対する警戒感が根本的に欠如していた」と厳しい評価を下している。
以上、知日家と呼ぶのも不快な気分にさせられる英国人のことを書いたが、もちろん日本に関った英国人学者にはもっとまともな人物はいる。今年2月、かつて国際基督教大学で英文学の教鞭を取っていたデレク・ブルーワー/Derek Brewer ケンブリッジ名誉教授の訃報が載ったが、確かドーア氏よりもまだ若かったはず。ブルーワー教授は英国中世文学研究の第一人者であり、あの『指輪物語』のトールキンとも親交があったという。真に良心的な学者として活動していたため、日本の地方紙には無縁だったようだ。
ドーア氏のメールアドレス rdore@alinet.it
◆関連記事:「一部の偏狭なナショナリスト」
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7月20日付けの河北新報のドーア氏によるコラム「アジアでの覇権争い、米の影響力低下は必至」の冒頭も、著名人を挙げつつ展開していて興味深い。
-「競争相手 中国、インド、日本の三角形の権力争いが我々の次の十年をこう形成する」。最近出版された、前エコノミスト誌編集長エモット氏の本の刺激的なタイトルである。一流のジャーナリストに相応しく情報も豊富、新鮮なアイデア、洞察力に長けた分析である…
同国人のよしみもあるのか、辛辣な論調の多いドーア氏にしては珍しくエモット氏を賛辞して書いている。だが、コラムの半ばにはこうある。「しかし、エモット説の基本的な欠陥は、その「三角形」という枠にある。四画関係なはずだ。東アジアにおける「権力争い」を論ずるなら、依然として主役は韓国・沖縄・グアム・台湾を防衛圏前線としている、米国だということは出発点だろう」。さらにエモット氏の分析の誤りを正して記す。
-しかし、長期的にはアジアでの覇権が米国から中国へ移るということの可能性、或いは必然性、についてはあまり言及しない。「我々の次の十年」という彼の題の制約だろう。“我々”とは“人類”というより米国を親方とする“西洋”を指しているようである。おそらく、その“西洋”の“日食”の話は避けたい…
末尾近くでドーア氏は根拠として、中国の実質総生産が米国のそれを凌ぐのは2027年、米国の2倍になるのは2050年というゴールドマン社専門家の予測を挙げている。私はエモット氏の著書は未読の上、経済にはド素人だが、エモット氏の分析よりも己の見解が正確なのだという主旨だけは理解できる。これには苦笑させられる。それを日本の地方紙風情で述べた所で、所詮子供騙しの負け犬の遠吠えなのだ。直接エモット氏に反論でも書いたら如何、と言いたくなるが、日本の地方紙など見向きもしないエモット氏はドーア氏の意見など歯牙にもかけないだろう。
もちろん、中長期的にアジアで米の影響力が低下するのは書くまでもないが、中国に関しては専門家の意見も多岐に亘っている。2027年になれば、ゴールドマン専門家の予測が正しいのか証明されようが、資本家の小判鮫的職業であるエコノミスト連中の予測が当たる確率を調査すればさらに面白い結果が得られるかもしれない。
ドーア氏の著書『働くということ』(中公新書)の前書きだけを見たことがある。内容は殆ど忘れたが、「私の元には日本語で「貴方はこう言ったではないか」という皮肉のメールが来る。そのため英語で書いた…」との箇所だけは憶えている。私も含めドーア氏の元に皮肉のメールを送る日本人がいたことが分って笑えた。ただ、ドーア氏にメールする無名日本人もまたごまめの歯軋り程度であり、ドーア氏には痛くも痒くもないだろう。
ドーア氏の言う「狭い国益を超えて「良心国」として堂々と、国際会議で積極的に発言すれば国民の支持を得られよう」の“国民”もまた日本ではないのが知れる。中国含めアジア諸国、欧米国民にとって、望ましい「良心国」ということだ。平たく言えば、これまでどおり国益など二の次で、金は出すが口は出さない姿勢に徹しろということ。そんな国なら国際社会で受けがよいのは当然だが、ふと私はムハンマド・アリー朝のエジプト総督サイード・パシャ(在位1854-63年)のことを思い出す。サイードは欧州人から「善人」と呼ばれ、高く評価されていたが、取り巻きの欧州人の進言に易々と従った好人物でもあったからだ。あのスエズ運河会社に土地の全てを事実上無償で与え、会社に領土的な主権も認めている。結果は財政破綻と植民地化の進行。一方、日本を代表するイスラム学者・山内昌之氏は、サイードには「欧州諸国に対する警戒感が根本的に欠如していた」と厳しい評価を下している。
以上、知日家と呼ぶのも不快な気分にさせられる英国人のことを書いたが、もちろん日本に関った英国人学者にはもっとまともな人物はいる。今年2月、かつて国際基督教大学で英文学の教鞭を取っていたデレク・ブルーワー/Derek Brewer ケンブリッジ名誉教授の訃報が載ったが、確かドーア氏よりもまだ若かったはず。ブルーワー教授は英国中世文学研究の第一人者であり、あの『指輪物語』のトールキンとも親交があったという。真に良心的な学者として活動していたため、日本の地方紙には無縁だったようだ。
ドーア氏のメールアドレス rdore@alinet.it
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鳩山氏の国連その他での「外交デビュー」に関しては、「25%削減の一方的公約」など、国益を損なう一方的な譲歩を含んでいて、冷徹な国益外交を信条とする小生にとっては、とんでもない愚行に見えてしまう。また、河北新法御用達の、怪しげなドーア氏が、「良心」などという、英国外交においても実践したことがない、不思議な勧告をしているとすると、日本国に有害な宣教師が、日本国の利益ではなく、西洋の利害を勧めるのと同じ、偽善を感じます。アイルランド人は、英国人のこのような隠れた偽善というか、自国の国益優先主義を、常に鋭く嗅ぎ分けるし、そういうアイルランドに4年近く在住した小生も、英国賛美一辺倒ではありません。ただし、英国知識人の能力もよく理解しています。
小生は、幸夫人のパーフォーマンスなどは、外国報道機関に売り込むセンスのよい広報活動として、高く評価しますが、欧米に媚びを売って国益を害するような鳩山外交の出初め式には、昔の河野家の容共・媚ソ連外交と同様に、嫌悪感を覚えてしまいました。出初め式で少し出血しても、その後のきつい外交で元を取るぐらいの冷徹な計算があれば良いのですが、単なるお坊ちゃまのお人好し外交ではないか、と危惧します。そうでないことを祈りたい気分です。
私の方こそ、長い海外滞在経験のある貴方でもドーア氏が聞いたことのない人物だったことを知り、安心しました。彼は以前、ライシャワーのような日本通欧米人は親日家と呼ばれていたのに、最近は知日家の表現に変わったことを、米国人が不満を漏らしているなどとも書いていました。それはドーア氏のような胡散臭い人物に一切責任があるし、ライシャワーとはそもそも格が違いすぎる。ドーア氏の強調する“良心”とは他国に対する姿勢を意味するのでしょう。
かつてのインド人独立運動家もまた英国式偽善を鋭くかぎつけました。英国人官吏は「大人の態度を示せ」「偏狭なナショナリズム」等と訓示していましたが、ネルーはこれを、「このような国際主義など、歪んだイギリス・ナショナリズムに過ぎない」と一蹴してます。英国人ほど欺瞞に長けた民族もいないし、そこが世界を制した理由です。全く油断もすきもないところがありますね。
現首相は欧米だけでなく隣国にも、出血バーゲンよろしく媚を売りまっているではありませんか。私は端から期待していないので、単なるお坊ちゃまのお人好し外交にしか思えません。記事にも書いたエジプト総督サイード・パシャも苦労知らずのボンボン、肖像画を見てもいかにも意志が弱そうな人物。お坊ちゃま君主の失敗例です。
今、頑張って「君主論」を読書中ですが、鳩山首相を念頭に置いて見ると、マキャベリが批判している君主(よい評判獲得のために国家を危うくする)そのものなので頭痛がします。しかも、当時は国家の衰運は君主の身の危険や財産の減少を齎しましたが、現在の日本は平和裏に政権が交代しますし(これはいいことですが)、政治家と国家の財産が分別されていますから、国家が怪しくなっても困るのは国民で、鳩山家は安泰なので悲しくなります。
青山氏によると「性格はよい人、でも政治では困る」だそうで、そもそも鳩山首相は元大学の助教授です。国立大学勤務の私の友人によると教授と言うものは非常識だそうで、悪い意味で世間ずれしていないのでしょう。
25%の件に関してはシナは削減しないと発言していますし、前政権が決定した与那国島への自衛隊配備を撤回する話は彼らの中華思想を喜ばせ、与那国島もシナのものだと増長させるだけになりそうです。
ttp://ansan01.blog121.fc2.com/
私も今、読書中の『トルコ狂乱』は第一次大戦後のトルコを描いた歴史小説ですが、「よい評判獲得のために国家を危うくする」皇族や知識人がゾロゾロ登場します。彼らはムスタファ・ケマルを散々罵倒、占領しているイギリス、ギリシア軍に媚びていたのです。
世間ズレしていない政治家くらい、政権担当能力が危うい者もいないのでは?自称元国立大教官のブロガーがいますが、非常識な世間知らずの見本のような人物でした。まさに税金ドロボーもよいところ。
興味深いブログを紹介して頂き、有難うございました。何といっても「鳩山首相はいい人!」ですから。
(元々、あそこは中国の島だしな)(とにかく日本は信じるな。狼は信じても、日本だけは信じちゃダメだ)(話は琉球と釣魚島(尖閣諸島)を中国に返してからだな)(戦犯を靖国神社から分祀しよう!!そして日中の相互信頼を築こう!!)(日本は中華民族にとって最大のガンだ。根本から取り除いてこそ安全だと言える)…