邦題ではふたりの女王の名が付けられているが、原題:Mary Queen of Scots 通り、スコットランド女王メアリー・ステュアートを主役とした史劇。エリザベス1世は専らメアリーとの関連で登場しており、それまでの“孤高の処女王”とは違う描き方だったのは興味深い。エリザベスが登場する映画は数多く制作されているが、メアリーを中心とした作品は意外に少ない。
西欧史上でもふたりはスター的女王だし、英国史に関心のある方ならメアリーとエリザベスは宿命のライバルだったのは既知のはず。後者が己への暗殺未遂に関係したとして後にメアリーを処刑するが、映画の冒頭も死に臨むメアリーが登場する。この時メアリーは殉教者を意味する赤いドレスを着用していたのは驚いたが、オーディオ・コメンタリーによればこれは史実らしい。ラストも同じシーンが写され、赤い衣装はそれだけでインパクトがある。
メアリーと言えばそれまでは恋多き女王で、奔放な男性関係の果て王冠を失い、君主の器量もないダメ女王のイメージが強かった。しかし、この作品ではとかくエリザベスに比べ低評価の印象を覆すストーリーになっている。美貌と大胆さに加え知略に富み、国政を動かしていく。
対照的にエリザベスは血筋による正当な王位継承権ばかりではなく美貌、恋愛、出産経験を持つメアリーには女としても太刀打ちできず、9歳年下の従妹には劣等感と嫉妬に苛まされていた。この作品で初めてエリザベスが天然痘を患っていたことを知ったが、あの厚化粧とカツラもそのためだったのだ。
気になったのは、イングランドに比べスコットランドは女王の権威や権力が弱い点。16世紀は男性絶対主義だったのはイングランドも同じだが、女王に従い、助言する重臣たちがスコットランドでは至って少ないのだ。映画にもメアリーを脅して署名を迫る貴族が登場しているが、この国では暗殺が横行し、メアリーがフランスから帰国するまで統治していた異母兄初代マリ伯爵も反対派貴族に暗殺されている。
陰謀や内紛が絶えなければ男の君主でも統治するのは難しく、エリザベスもメアリーの再婚を妨害する画策をしていた。それも有能な重臣と打ち合わせてである。補佐役に恵まれたエリザベスとは対照的に、映画でも忠臣がメアリーの周辺に登場していない。
映画で特に違和感を覚えたのが、メアリー、エリザベスの側近に有色人種がいること。メアリーの侍女の1人はアジア系の風貌だし、スコットランド駐在のイングランド大使は黒人なのだ。あの時代の英国ではアジア人や黒人は奴隷対象だったのに、映画では側近や重臣になっている。非白人役者への配慮のために登用されたのだろうが、ここまでくると歴史改ざんにちかい。
ふたりの女王が小屋で極秘対面したのは、作品の見せ場だろう。実際にふたりが顔を合わせたという記録はないにせよ、対面したら映画通りの会話となっただろうか?このシーンでもメアリーが血統を持ち出し、正統なイングランド王位継承権を主張している。エリザベスに保護された後でもその廃位の陰謀に加担していた。
生い立ち、血筋、度胸、美貌、恋愛……どれもエリザベスはメアリーに敵わなかったが、歴史の勝者となったのはエリザベスの方だった。全て持ち合わせていたはずのメアリーは自滅するかたちで斬首されている。ふたりの素質の違いもあるが、生まれた国の国情が大きい。もしメアリーが英国女王なら処刑されなかっただろうし、庶子のエリザベスはスコットランドでは女王になれなかったはず。
それでもメアリーの一人息子ジェームズ1世はエリザベスの死後、英国とスコットランド両国の王となり、その血筋は現代の英国王室にまで受け継がれた。長い目で見れば、メアリーの方が真の勝者だったのかもしれない。
ジョージー・ルーク監督はロンドンの演劇界で活躍する女性演出家で、今回が初映画監督作品だそうだ。そのためか現代的な女性の視点が反映されているのは結構だが、生理になったメアリーを映すシーンもあり、そこまでしなくとも……と思ってしまう。
私的にはケイト・ブランシェット主演でシェーカル・カプール監督の2本の史劇「エリザベス」「エリザベス:ゴールデン・エイジ」の方がよかった。女性の視点を強調しすぎるとメロドラマ化しやすいのだ。
タイトルに「adult」とあれば仕方ありませんが、そうでなくともブロックされるのは不可解です。スタッフにより基準が違っている?
白雪姫のガラスの棺はおとぎ話と思っていましたが、現実にもあったことには驚きます。聖人の遺骸を見せる目的なら分かりますが、何故ボスウェルの遺体にガラスの棺が使われたのかは不思議。現代の即身仏はガラスケースに収められており、3年前に私も見てきました。
確かに日本の城では幽霊が出るという話は聞かないような……大阪城さえ周辺地域を含めて幽霊話はなかったとは驚きました。日本の場合、城全体よりも一室に出そうですね。
対照的に欧州、殊にイギリスの城は幽霊で知られています。現代のドラッグスホルム城の画像は、いかにも高級ホテル然としていて意外でした。幽霊話、客寄せのためネタとして作っている可能性はありますね。
無理でした。以前マリー・アントワネットと弟とルイ十六世三人が描かれた肖像画を貼ろうとした時もダメでした。これはリンクのタイトルに「a d u l t」とあったのが原因らしく、別のリンクにしたら受け付けられました。画面が棺桶だからできなかったのかとも思いましたが、今回は大丈夫でしたし、不思議です。
>ガラスの棺
白雪姫ではガラスの棺がありますし、ググったら現実にも聖人の遺骸を見せるために使用していますね。もっとも、ボスウェルは聖人と程遠い人格ですが。棺を透明にして遺骸を見せる風習は日本人と感覚が違います。とは言うものの、即身仏を見ると聖者の遺骸を見せる風習は日本にもあったので、ガラスが高級品だからそんなものが日本にはなかったのかと思ったり。
日本の場合、妖怪が城に出るとは言われていても、幽霊が出るとは聞きませんね。また、大阪城は大阪冬の陣と夏の陣があったのにも関わらず、周辺地域を含めて幽霊話はありません。皇居にしてもありませんし。
現代のドラッグスホルム城の写真です。英語のウィキによると現在はホテルです。しかもググるとそれなりの高級ホテルです。幽霊話から陰惨な場所を想像していたら、全然違いました。幽霊話、ネタとして作っていませんか。https://en.wikipedia.org/wiki/Dragsholm_Castle#/media/File:Dragsholm_(Sj%C3%A6lland).JPG
https://www.agoda.com/dragsholm-slot/hotel/horve-dk.html?cid=1844104
特に制限していませんが、リンク先は前回コメント欄に受け付けられなかったのですか??特に問題はない内容なのに、時々ブロックされるサイトがあります。
ボスウェルと称される遺体が収められている棺ですが、1976年から閉鎖されたオークの木の棺に埋葬されたそうですね。それ以前は教会のガラスの棺に埋葬されていたようで、ガラスの棺があることには驚きます。
そして死ぬまで囚人として捕らわれていたドラッグスホルム城には、ボスウェルの幽霊が出没するとか。幽霊が出ることでデンマークで最も有名な城の一つになっているのだから、デンマーク人もこの類の話を好むのかも。
https://www.alamy.com/the-earl-of-bothwells-coffin-in-the-chapel-under-frevejle-kirke-faarevejle-church-near-dragsholm-castle-in-north-western-part-of-zealand-denmark-image344381991.html
イギリス人が書いたメアリー・スチュアートの伝記とは面白そうですね。通常、死刑執行人は権利として被処刑者の持ち物を自分の物にできたことは初めて知りました。王侯貴族であれば結構な“お手当”になりそう。
長年幽閉されていたといえ、メアリーの待遇は良かったはず。元から健康に恵まれていたのかもしれまんが、やはり飼い殺し状態では精神面で堪えたと思います。
ボスウェルの最後は初めて知りましたが、監獄で腐肉と水を与えてられていたとは酷い。パンと水だけなら結構生きられますが、受刑者に腐肉を与えるやり方は日本ではまずありえないでしょう。これでは狂人になってもおかしくない。
wikiで見たら、ボスウェルの統治力はなかなかのものだったようです。メアリーとの関係で悪印象がありますが、絶え間なく争っていた他のスコットランド貴族よりマシだったかも。
>>面白い内容は注意するべきだと先生が言っていた、
まさにその通り!やはり面白い書物のほうがより読まれるのは仕方ありません。面白いのと正確なのは必ずしも一致しないことに注意が必要でしょう。
鬘は白髪が増えたので髪を短くして鬘にしたのだそうです。しかし、イギリス側は鬘について知らなかったのでしょうね。それでなければ髪を持ち上げたら首が落ちると言う状態にはなりません。また、ツヴァイクでも一度斧が逸れて首を切りそこねる場面がありましたが、結局最後腱が一本残り、斧で切り落としたそうです。本当に凄惨。
また、遺物はメアリーを崇める為に使用されないようすべて処分したのですが、死刑執行人が確保していたメアリーの私物も没収です。通常、死刑執行人は権利として被処刑者の持ち物を自分の物にできたのですが、これもメアリーの場合は認められなかったのです。ただ、政府も代価として金銭を支払って買い取りました。防腐処置のために除去した内臓も、同じ理由でこっそりと埋めたそうです。解剖した医者によるとメアリーの心臓は健康だったそうで、幽閉されても身体面は思うほど損なわれてはいなかったのです。
ボスウェルは狂って死んだとツヴァイクは述べましたが、その本によると、柱に縛り付けられ、くの字に体を折り曲げて死んだそうです。完全に狂人に対する扱いですね。監獄に入れたのはデンマーク王ですが、腐肉と水を与えていたそうで、虐待もいいところです。まだメアリーの最期の方が恵まれてます。
そして、メアリーが捕まってから10年後にボスウェルと再会してもお互い容姿が変化していたので分からなかっただろうとか、10年間の有為転変は過酷なものでした。
こちらは、ウィキペディアの情報ですが、ボスウェルの遺体と称されるものはデンマークの教会にあり、監獄からそこの教会に埋葬され、19世紀にミイラ状態で発見されました。粗末な棺に入って置かれており、メアリーとはあまりにも対照的です。
古本の翻訳者によると、難解な本で自分一人の手に負えず、学者に意見を聞きながら翻訳したそうです。ツヴァイクと異なり細かい部分も記されています。でも、ざっと目を通しただけですがツヴァイクの方が面白いのです。面白いのと正確なのは必ずしも一致しない例でした。面白い内容は注意するべきだと先生が言っていた、とネットで書いた人がいましたが、本当にその通りです。
いかに恋は盲目でも酷い態度の臣下に熱を上げるメアリーも不可解ですが、それがエリザベスとの器の差なのでしょうね。そんなメアリーをツヴァイクは称賛していたのですか。
フェルセンはもしかすると王妃の恋愛感情を利用し、フランスの国家情報を盗んだり、祖国に有利な政策を採るように仕向けたことも考えられますが、騎士道精神は常にあったはず。
戯曲のマクベスは暴君のイメージが強すぎますが、wikiを見たら実際は統治能力に優れた人物だったようですね。それにしても暗殺が多すぎる。
私も西欧の埋葬の風習は知りませんが、遺体は鉛の棺に納められたというのは不思議ですね。防腐に効果があると思われていたのでしょうか。
それはもう。ボスウェルと「恋愛関係」に入ったあとのメアリーの行動や発言は見苦しいし、ツヴァイクの伝記でさえメアリーに対するボスウェルの態度は酷いものです。そんな相手に一方的に熱を上げているメアリーの恋愛をツヴァイクは称賛しているのです。そして、女王の勤めを蔑ろにして権利ばかり主張している印象が非常に強いのですが、恋愛関係がなければイメージが逆転します。それに、スウェーデン王の高級エージェントだったとしても、マリーアントワネットに最後まで尽くしたフェルセンはボスウェルと違います。しかし、フランス国家の秘密がフェルセンを通じてスウェーデンに漏れるとか、スウェーデンに有利な政策を採るようにするとかなかったのでしょうか。フランスの政策を国王から聞き出すよう要求したり、外交に介入させたヨーゼフの例もありますし。
>正式な結婚を挙げる前、暴行同然に関係を結んでいるのだから、
ツヴァイクの伝記だと、結婚するために二人が仕組んだ芝居と言う扱いでした。読んでいる方は呆れて「何だ、これは」でした。とにかく関係を取り繕うために出鱈目な行動をしている、と言う書き方です。
>目の前で残虐な殺人を見せつけられ、よく流産しなかったと思います。
私もそう思いました。そして、我が子が流産するかもしれないのにこのような行動をとるダーンリーもダーンリーです。この伝記でスコットランドには陰気な印象がついたのですが、スコットランドを舞台にした芝居のマクベスも陰鬱なストーリーですね。
メアリーの防腐処置に関しては私も驚いたのですが、内臓は防腐処置の関係で取り去られたもので、フランス王室の心臓とは異なります。内臓は処刑された城に埋葬され、遺体は何年も鉛の棺に納められていたそうです。向こうの埋葬の風習は知りませんが、鉛と言うのは何か意味があるのでしょうか。
ツヴァイクの伝記でメアリーとボスウェルの不倫は、マリー・アントワネット&フェルセンと同じく美化され好意的に描かれているようですね。ロマンスとしては面白いですが、史実通りとは限らないでしょう。
映画では不倫どこか、完全にボスウェルの野心に利用されたという設定でした。正式な結婚を挙げる前、暴行同然に関係を結んでいるのだから、恋愛感情を持てるはずがありません。時間の制約もあり、ボスウェルとの関係は端折ったのかもしれませんが。
複数犯だったにしても、リッチオは56回も刺されたのですか!目の前で残虐な殺人を見せつけられ、よく流産しなかったと思います。女王の前で行うところに、スコットランドの後進性が伺えます。
メアリーの埋葬はさすがに王族への配慮が感じました。フランス王家でも肉体と内臓は別々に埋葬されていましたよね。そのため革命後、保存されていた王族の心臓が絵の具に使われましたが。
リッチオ殺害事件の際は、リッチオがメアリーにイタリア語で助けを求めたにも拘らず、メアリーもどうする事もできず暗殺者を罵っていたそうですが、ここまでの事をしたダーンリーはすぐにメアリーに寝返って貴族たちを裏切るのですから、情けないとしか言いようがないです。そして、子供が生まれた際にはメアリーの圧力でジェームズの父親だと認めさせられ、認めさせられたあとはすぐお役御免の扱いになるので、完全に見限られていました。英語版のウィキだと、リッチオは56回刺されたとかで、もう人に見せられる状態ではなかったでしょう。
>こうなるとやはりギロチンは人道的でした。
何しろ一撃目は失敗、二撃目もきちんと切れなかったのですから。もっとも、ギロチンもリヨン虐殺の前に処刑されたシャリエのように、切り損ねる例もありますけれど。
英語のメアリー・スチュアートの処刑に関するウィキを見ると、処刑後は服などが燃やされ(遺物の流出を防止するため)、防腐処置をされて葬られたそうです。防腐処置という辺りは、やはり王族だからでしょう。肉体と内臓は別々に埋葬されました。しかし、王族と言えども中世は安泰ではありませんね。
wikiの解説にはダーンリーは「両親から甘やかされて育った非常なエゴイスト」で、「美しい女性に目がなく、浮気にも走るようになった」とあります。ツヴァイクの伝記にある通りメアリーに執着していたとしても、妻への愛情だけではなく王位を狙う野望も抱いていました。身重のメアリーの目の前で秘書官リッチオをめった刺しにしたのは酷すぎます。
なるほど、長い幽閉生活ではストレスで抜け毛になりますね。斧で斬首されても神経は死なず歯がカチカチなっていたというエピソードも初耳です。こうなるとやはりギロチンは人道的でした。
フランスで埋葬されることを望んだのに、叶えられなかったのは哀しいですよね。フランス時代のメアリーは生涯で最も幸福だったと思います。
テルマエ・ロマエでは主人公のローマ人や皇帝を日本人役者が演じていましたね。あの作品は専ら日本人向けでしたが、イタリア人が見たら違和感はあったのかもしれません。
信仰心の話で言えば、処刑の際にプロテスタントの司祭が祈ると、祈祷書に顔を伏せて祈りを唱えていたそうです。鬘に関しては年齢の点を考えると不思議だったのですが、ストレスから抜けたのだと思うことにしました。処刑後も神経はまだ生きていて歯がカチカチなっていたそうですが、女王の最期としては無惨ですね。
処刑後の遺体はフランスに葬って欲しいと要求していたのですが、結局イングランドに葬られました。フランスでの生活は非常に楽しかったのでしょうね。
>そのうちにアジア系や黒人女優がエリザベスやメアリーを演じるようになるかも。
舞台ならともかく、映画なら違和感満載ですね。と言いながらテルマエ・ロマエを思い出しました。あれはコメディであると同時に必要性があるから主要キャストが日本人になっている訳ですが。
メアリーは再婚した後、運が傾いたような印象ですね。映画ではダーンリーは同性愛者という設定になっていましたが、実際は美女と浮気を繰り返していたようです。男運に恵まれなかったにせよ、見る目がなかったと言われても仕方ありません。
イングランドも新教と旧教の対立は激しかったのですが、スコットランドは宗派対立だけではなく、貴族は利害で容易く背き、豪族同士が骨肉の争いをしている始末。これではイングランドに対抗できませんよね。
エリザベスは幼少時から苦労していました。ロンドン塔に入れられたこともあり、その不幸な生い立ちが後に非常にプラスになったはずです。一方メアリーは全てに恵まれていましたが、信頼できるブレーンを獲得する能力だけはなかった。
メアリーはそれほど熱心なカトリックには思えませんが、幽閉後にカトリックの女王として信仰に目覚めたのでしょうか。処刑時の鬘のエピソードは知りませんでした。44歳で没したのだから、まだ頭髪はあったはずなのに。当時の貴婦人は鬘を被る習慣があったのでしょうか。
黒人のイングランド大使には驚きました。新作007も黒人女優が検討されているのだから、映画の重要な役どころに黒人が増えそうです。そのうちにアジア系や黒人女優がエリザベスやメアリーを演じるようになるかも。
メアリー・スチュアートがスコットランドに帰国した際にはエリザベスの陰謀を退け、信用できない貴族や兄にも対抗できたのですけど、結婚の失敗から人望を失っていったのは痛いところです。あれもキッパリボスウェルと手を切っていれば助かったでしょうが、それができなかったのが間違いでした。
エリザベスの方は恋愛を理性で抑えて王位を守りましたが、これは幼い頃から防衛本能を発達させてきたからできたのでしょうか。しかし、イングランドもさることながら、暗殺三昧で身内も信用できないスコットランドには生まれたくないと思いました。
>美貌、恋愛、出産経験を持つメアリーには女としても太刀打ちできず
ツヴァイクがこの路線ですね。出産できればあれほど対立することもなかったろう、と言う感じでした。その上、エリザベスには女性として欠陥があったので、どうしてもメアリーには敵わなかったと。幽閉されているメアリーは憎しみのあまり、その事を手紙にしてエリザベスに書き送り、不倶戴天の仲となるのです。
処刑の際には祈祷書や十字架などの道具を持ち、信仰心で武装していたと言いますが当人にとってはプロテスタントのエリザベスとの争いは神に対する義務でもあったのでしょうか。斬首後、髪を掴んで頭を持ち上げたら、鬘だったので頭が落ちたとかで、想像するだけで寒くなる光景です。
しかし、エリザベスは信頼できる重臣を持っていてメアリー包囲網を敷きますが、彼女も最初は命の危うい孤立した状況にいたはずで、信頼できるブレーンを獲得する能力の有無が二人の命運を分けた感じです。
> 映画で特に違和感を覚えたのが、メアリー、エリザベスの側近に有色人種がいること。
完全に改ざんですよね。ツヴァイクの伝記にそんな話は出てきてません。もしそうなら、彼もその事を記したでしょう。イングランド大使が黒人って無茶です。…これがピョートル大帝の映画なら黒人の側近がいてもおかしくないのですけど。