幸福摩天輪

幸福摩天輪

ているのはヘロインの誘惑

2016-04-22 09:49:45 | book

体に合った服を買っても、首が太いので締め付けられて苦しくなってくる。 おまけに首がかゆくなってくる。 何故か頭も痛くなってくる。 閉所恐怖症の人が掃除道具入れのロッカーに閉じ込められたときに感じるような圧迫感と恐怖感が僕を襲う。 以上の理由で僕はタートルネックが嫌いだ。 あの首にまとわりつく異物感は、献血の時、僕の腕に刺さっている太い針のようだ。 献血の針を腕に刺したまま街中を歩きまわりたくはないし、そんな人と友達になりたくはない。 針を腕に刺すのに慣れてしまったら、僕を待っである。

そう言う理由で、僕はタートルネックが嫌いだし、マフラーも嫌いだし、何となく手袋も嫌いだ。 「耳あて」は好きかもしれない。

何年か前に大仏を見たのは、暑い夏の午後だった。蝉の声が境内に満ちていた。
木々の緑、空の青、大仏のくすんだ青銅色。汗を拭きながら大仏を見上げ、あの時何を思っていたのだろう?

記憶通りに拝観料を払ってお寺の門をくぐる。冬の夕日に映える大仏が見える。

斜めから大仏の顔を見ると、思ったより、頬がふっくらとしていて、生き生きと力強い。壮健な若者のようにも見える。もちろん仏様に年齢なんてないと思うけど、何歳くらいの男をモデルにしているのだろう?境内にあった与謝野晶子の碑に「美男」なんて歌われているものだから、そんなことを考えてしまう。

いつか鎌倉の大仏よりも年上になるのか。
大仏を見上げながら、表情には出さないが、ものすごく驚いていた。

この話を、「女子供って言い方はないんじゃない」と言った人に話したら、「とてもあなたを理解できない」という顔をされ、あきれられてしまった。 だから言いたくなかったんだ。 とにかく僕は手袋やマフラーと仲良くなれそうにもない。