金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

書けば出る

2015-08-21 12:11:19 | Weblog
書けば出るとは聞いたが、切国を行く本か上げた後少し進軍したら、ドロップに太郎太刀様がおいでくださった。
おもわず、パソコンに頭を下げて「ようこそおいでくださいました」と挨拶してしまった。
どうぞ少しでも長く現世を楽しんでください。

太郎太刀さま。あなたは欲しかった。
うちの切国に「前に大きいやつといた。そいつを・・・だ。」
と言わせて、その誰かのよりしろにあなた以外は考えられない。
自分たちの世界で幸せになれない魂を、やさしい戦神が拾ってくださった。
私が書くのはそういう話。
その結果、先細りで冷却死を迎えようとしている世界が、やさしい戦神のささいな手助けに喜んだ異界の神代行によって、新たな霊魂の種を与えられて救われる。
情けは人の為ならず。これは2つの世界のそういう話。

星天祭り用

2015-08-21 04:32:20 | コードギアス
わたしは、すきです







 小さいころの天子は髪を梳かれるのも結われるのも嫌いだった。鏡に映る姿はいつも自分だけ違うから。
「なぜ、わたしはこのようなすがたをしているの?」
白い髪、赤い瞳、他に誰もいない。
問いに答えは無い。
返答はある。
宦官達は口をそろえて言う。
「天子様でありますゆえに」
女官達は困ったように視線を交わす。それから(しかたないわね)と言いたげな顔をして、朱王朝最初の天子、朱源天のお話をする。紅い瞳、白い髪の戦士が月の聖地より降り立って中華を統一するおはなし。天子にはおはなしが信じられない。だって、話してくれる人が誰もおはなしを信じていないから。

天子がむずかりあやしきれなくなると、面倒になった女官達はある下級官史を呼ぶ。
黎星刻、本来天子と直接言葉を交わせるような生まれではない。だが、大宦官の第1人者たる
高亥が手元においているゆえに、連絡役として重宝されている。



もう日も高いのにいまだに乱れたままの髪をしている天子に星刻は小さな櫛を手に白絹の髪を漉いた。さらさらの心地よい手触り。天子の髪は癖がほとんど無い。
黄金と朱玉に縁取られた鏡がうつすのは星刻のつややかな黒髪。天子の白い髪。
「しんくー」
「はい、天子さま」
「どうしてわたしだけこの姿をしているの」
その疑問を天子は初めて星刻に問う。
しんくーは答えてくれる?
鏡の中、珠玉の瞳が揺れる。
髪を漉く星刻の手が止まる。星刻は女官達から言われていた。もし、天子様が問うなら朱源天のおはなしを答えよと。
しかし。
それは彼女の聞きたい答えではない。
「わたしはすきです」
えっ?
鏡の中の揺れる瞳が止まる。
「天子様の髪も、瞳も」
さらり、櫛を手放して、星刻の指が直接に天子の髪を漉く。

止まっていた天子の瞳が大きく見開かれる。
「わたしもすき。シンクーの髪」
勿体ないお言葉と答えようとして星刻は固まる。

天子の小さな手が鏡の中の星刻の髪に触れている。
その手を離せなくて、星刻は動けなくなる。
「切ってはいや」



以後、黎武官は「軍人にあるまじき」とさんざん批判されても、髪を切ることは無かった。


永続調和のちぎりはかわしていないけれど。

2015-08-21 00:44:41 | Weblog
わたしは、すきです 
永続調和のちぎりはかわしていないけれど。





 生まれたばかりの山姥切は髪を梳かれるのも結われるのも嫌いだった。鏡に映る姿はいつも自分だけ違うから。
「なぜ、このようなすがたをしている?」
細い体、金の髪、霊父に似ず、兄達とも違う。
問いに答えは無い。
返答はある。
父の弟子達は口をそろえて言う。
「本科様に合わせてうつくしくお生まれです」
それを聞き、山姥切は大きく膨れる。
見たこともない本科なんて知らない。

弟子達は困ったように視線を交わす。それから(しかたない)と言いたげな顔をして、本科の山姥退治のお話をする。銀の髪、銀の瞳の刀剣が悪しき神である山姥を切り平和をもたらしたお話。山姥切にはおはなしが信じられない。だって、話してくれる人が誰もおはなしを信じていないから。

山姥切がむずかりあやしきれなくなると、面倒になった弟子達はある下人を呼ぶ。
その下人は本来鍛冶場に姿を出せる身分ではない。だが、どういうわけか刀霊をはっきり見、声をかわすことができる。
どうも、その下人には刀霊が普通の人の子に見えているらしい。




もう日も高いのにいまだに乱れたままの髪をしている幼子に下人は小さな櫛を手に金糸の髪を漉いた。さらさらの心地よい手触り。幼子の髪は癖がほとんど無い。
鏡がうつすのは下人の真っ黒い髪と幼子の金の髪。
「なぜだ」
「はい、おかたなさま」
「どうしておれだけこの姿をしている」
その疑問を幼子は初めて下人に問う。

鏡の中、新緑の瞳が揺れる。
髪を漉く下人の手が止まる。下人は弟子達から言われていた。もし、山姥切が問うなら山姥退治のおはなしを答えよと。
しかし。
それは幼子の聞きたい答えではない。

「おらすいとるよ」
えっ?
鏡の中の揺れる瞳が止まる。
「おかたなさまの髪も、目も」
さらり、櫛を手放して、下人のごつい指が直接に幼子の髪を漉く。

「こげんきれいなもんはじめてみたと」
「きれい」
「んだ、きれいだ」
下人の目は己だけに注がれている。
幼子は知る。
これにとってきれいとは己なのだと。そこには比較も優劣もない。
ただ、己だけなのだから。

「おまえに許す。おれをきれいということを」
「へぇ」

「だから・・・」
だからの続きを幼子はその日言えなかった。
あす言おう。そう思った。

だが、幼子はその日の午後、注文主のもとへ運ばれた。

注文主は山姥切国広のきれいさをほめた。
しかし、幼子はそっぽを向いた。
「おれにきれいと言っていいのはあいつだけだ。」

「きれいなんていうな」
少年は今も自分だけを見ていたあの瞳以外の声を、拒絶する。