超私事!葉月の『今日の出来事』

粗にして野、しかし卑にあらず。
お下劣大好き、お下品大嫌い!
オババの好き勝手な独り言。

素甘は元気?

2024年08月03日 | 独り言


母の朗読サークルでの発表会がありました。
年に2回ほどある発表会です。



全員が登壇するわけではなく、先生からご指名がある生徒さんが朗読します。

もう10年以上続けている朗読サークルです。
母には意外な才能があった様で、ほぼ毎回ご指名により登壇し、複数ある先生の教室の代表としてトリをとっています。

今回は菊池寛の『入れ札』という短編。
朗読で読むにはなかなか長いので、25分くらいで読めるように”文章をいじらずに割愛”して短くする作業をします。

半年ほど前に、この作業をわたくしが行いました。

これはなかなか大変な作業です。
よく読み込んで作者の主題や世界観を理解し、また、読み手として伝えたいテーマをどのように”切り出す”か。

あらすじだけを追えばよいというものではありません。表情や仕草等、細かいところに登場人物の内面の”妙”が表れます。
作者が考え抜いて絞り抜いて紡いだ言葉やセンテンスのどこを削ぎ落とすのか…。

いやはや。
これをいつも母がやっていたのか…と感心しました。


さて、その『入れ札』は、浪曲などでもお馴染みの任侠の世界。
世に名を知られる大親分の国定忠治が、追手から逃れるために子飼いの可愛い子分たちと別れる【赤城の山も今宵限り。可愛い子分のおめえたち…】の一場面を描いています。

任侠の世界ですから、忠治親分や子分達の会話には

『おめぇ…』
『ふざけた事をぬかすんじゃねぇ』
『…なにおぅっ!?』

といった、浪花節な言い回しが多数登場します。

大親分らしくちょっとドスを効かせて迫力を持たせたりする母の朗読。
日頃”女学生ムード”で、キャッキャうふふ❤な母の、思わぬ堂々たる姿を樂しみながら傾聴しました。


作中では親分の心情以上に、子分達の忠義(悪人ながら)、誰もが持つ”卑屈で卑怯”な心の奥底、同じように誰もが持つ”良心”などが描かれています。

揺らぐ心。
どんな行動をとるのか。
自制と自分への誠実さと恥の概念。

任侠の世界も、いわゆる善良な庶民も変わらないなぁ。
しかしその反面、その仁や義や良心といったマインドそのものが、現代において随分と変わってきたようにも思う。


ところで、今朝の日経新聞の歌壇欄。
ある選者が第一首に選んだ、素甘(すあま)について歌ったものに目が止まりました。

好物の素甘(すあま)
何となく買わないでいたら、いつの間にか見かけなくなってしまった

そんな内容が短歌で詠われている。

選者の評
『存在を強く主張するものだけが生き残るのか』

これは考えさせられるなぁ…。


わたくしたちはいろんな発信ツールを手に入れました。
匿名性が高いものほど、心の中にあるものがストレートに現れます。

実世界では胸のうちに収めている想いやコトバ。
それが発信された途端に実態を帯びてくる。形がないものが形になる。
数が多ければ力になる。


数が多いことが必ずしも『正』ではないのに、その数の多さが力となって流される。
パレートの法則のパラドックス?


入れ札の世界観とすあま。
この2つの文学文芸を前に、様々な思いをめぐらす土曜日の朝なのだ。







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8 コメント

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Unknown (wada67miho)
2024-08-03 08:44:20
葉月さま

素晴らしいエッセイですね。感心しました。
返信する
Unknown (なおとも)
2024-08-03 10:30:57
葉月さま おはようございます!

素晴らしい文章に堪能致しました。「入れ札」は中学生の時の国語の教材で、登場人物の心模様などを考えることを学びました。よく考えれば、現代なら反社の世界ですね。お母さまの朗読を拝聴したいものだと思いました。それまでの作業、本当にお疲れ様でした。学びも多い事と思います。

素甘、大好きなのですが、確かに見なくなりましたね。素甘からの考察、さすがと感嘆しています。それにしても、文章がお上手で感心するばかりです。 なおとも
返信する
Unknown (mika)
2024-08-03 11:02:24
おはようございます。
いつもながら素晴らしい文章に朝から
頷きながら読ませていただきました。
任侠の世界も素甘も好きです❤️
返信する
Unknown (りぃ)
2024-08-03 22:10:33
お母さまの朗読聞いてみたいわ~°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
お腹から声出すのは本当に良いこと。
元気の源なんでしょうね👍

すあまの短歌を詠んだ人がそこまでの思いを込め
て詠んだのかどうか気になるところですが、言葉
の持つ意味は大きいと感じます。
返信する
Unknown (nan_nan_august)
2024-08-04 08:50:59
@wada67miho wadaさま

プロの方にそんな事を言っていただいて、穴を探してます💦

わたくしのブログも匿名なわけですが、それだけに自分が何者かを表明して表現されているwadaさんをリスペクトしています。

葉月
返信する
Unknown (nan_nan_august)
2024-08-04 08:55:22
なおともさま

おはようございます。
母は文学少女で活字中毒でもあります。朗読を始めたことで、母と小説について語り合う機会が増えたのは嬉しいことです✨

すあまは実は好んで食べることは無いものでしたが、この頃何故か気になっていました。
それで俳句が目についたのかもしれません。
そういえば黄身しぐれも和菓子やさんで見ないなぁ…。

葉月
返信する
Unknown (nan_nan_august)
2024-08-04 08:58:32
mikaさま

おはようございます✨
任侠というと何となく格好いいけど、まぁ反社ですよね🤭
国定忠治も殺人と強盗犯だし💦
それでも、昔はいかにヤクザだったとしても素人には手を出さないとか、強盗はしても人は殺めないとか、そういう矜持のようなものがあったと思うのですよね。

消えゆくすあま
消えゆく仁義

葉月
返信する
Unknown (nan_nan_august)
2024-08-04 09:00:50
りぃさま

おはようございます✨
そうそう、発声は良いそうですね。朗読や合唱なんてね。
おまけに母は太極拳も30年くらい続けてるんです〜。わたくしが敵うはずがありませんわ。

本当に、言葉って力がありますよね。
発した本人にも、もちろんぶつけた相手にも。

葉月
返信する

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