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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「ジェーンとキツネとわたし」                 イザベル・アルスノー:絵 ファニー・ブリット:文 河野万理子:訳

ときどき、気になる女の子に出会う。
この世界に、自分をなじませることが苦手な、幼い女の子。

立ち居振る舞いが不器用で、なかなか場慣れしない。
頭では正解がわかっているのに、そのように振る舞えない。
ちゃんと話せるのに、正面から問われると、返事ができない。

繊細で、傷つきやすい。
周りに「困った」「たすけて」と言えず、ただ固まっている。
おそらく、自己評価が低い。とても、低い。

そんな女の子が小学生になって、
一人でお話しが読めるようになり、やがて絵本を卒業して、
運よく、物語の世界に入れたら…、生き延びられる。
本を片手に、荒涼としたなじみにくい世界を、サバイブできる。

一方で、物語や小説の世界にうまく出会えぬまま、思春期を迎えてしまう子もいる。
本書は、そんな女子たちに、ぴったりだと思う。
「本は、きらい(=読んだことがない)。小説なんか、難しすぎる」と決めつけたまま、
思春期に突入してしまった女の子たちに。

本書は、子ども向けの読み聞かせ絵本ではなく、思春期以降の子が独りで読む絵本。
分類で言うと、グラフィック・ノベル。
言葉少なく、絵が重層的に多くを語りかけてくれます。

ちなみに、本書。ややこしい思春期を迎えた娘をもつ、お母さんにも、お勧めです。
お母さんもまた、不器用な娘を見ながら、同じように傷ついて、同じように言葉に出来ずにいるでしょうから。

静かに、人知れず、この世界をサバイブしていくために。
不器用な女子たちの、最初の武器になる一冊です。



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