句文集『セレネッラ』第九号上梓
俳句大学の俳友、金子敦氏、中山奈々氏、中島葱男氏の3氏による句文集『セレネッラ』第九号が平成28年9月20日付けで上梓された。B4表面カラー刷りの簡素な文集だが、3氏ともベテランの俳人であり、それぞれ現役で俳句活動をされている。本誌は、コンビニのネットコピーで入手することが出来、極めて手軽に発行し、登録番号さえ教えて貰えれば、全国各地で入手可能になっている。
伝統的な俳句結社が発行する句会誌は、結社に入会し、所定の会費を払わなければ入手する事が出来ない仕組みになっているが、このような手軽な方法でミニ句会報を発行することが出来るのは、インターネット社会の恩恵かもしれない。勿論、伝統的句会誌のような分厚い内容を盛ることは出来ないが、少人数で地域の枠を超えて交流する手段としては、ネットは便利なツールとして、俳句の世界でも広がるのではないだろうか。面白い試みである。俳句も従来のような句座を囲む必要も無くなるかもしれない。また、既存の俳句結社でも、インターネットやメールを媒体として全国ネットを構築している所もある。
本誌は、上記3氏と言う限定的なグループによるものであるが、もう少し人数を増やすことは可能だろう。これからも地域の枠を超えてご活躍を祈りたい。
本誌に投句された句は、「秋の章」として、各人6句ずつ投稿されている。また、特集となる「俳友客演」には、今回第一回として、杉山久子氏が投稿されている。小スペースの投稿欄に「新詠6句」と「季語考」が掲載されている。こじんまりした編集だが、纏まりの良い誌面に成っていて好感が持てる。
投句全12句の内、筆者として印象に残り、推薦(好きな句)できる句を挙げると、
秋薔薇や銀糸を紡ぐやうな雨 金子 敦(数式)
独り占めか一人ぼつちか大花野 金子 敦(数式)
靴下のかかと上擦る秋の風 中山奈々(靴)
合ふ靴なし会うひとのなし昼の月 中山奈々(靴)
野天湯や月詠む月をお迎えし 中島葱男(島時間)
秋の蝉昭和の少し固くなり 中島葱男(島時間)
俳人仲間の句、しかも句会ではないので句評は避けよう。ただ、各氏の句は、それぞれ秋らしい情景が詠み込まれていて好感の持てる句である。而も、詠み方に厭味がなく素直で読み易しい措辞の使い方が良い。俳句初心者が読んでも十分理解できる詠み方である。
(平成28年9月18日記)
追記:挿絵の岸恵子さん、懐かしいな。などと書くと、筆者の歳がわかるかも。
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