子どもの頃、家に鈴木光司さんの本「らせん」がありました。
本棚の中で一際目立つ赤い背表紙。
貞子で有名の「リング」に関係している内容ということは情報として持っていたので、怖い本であることは子どもながらに把握していました。
一度、本の表紙を見たことがあって、ハッキリと覚えていませんが、それはとても奇妙で不気味な絵に感じました。
内容は知らずともいつしか本の存在自体が怖くなりました。
よりによって寝室の本棚にあったので、寝る前起きた後に毎日のようにドキッとする日々が何年も続いたのです。地味にストレスだった
怖いので背表紙を隠すように逆向きに本棚に入れておいても、その本が放つオーラに結局びびっていました。
今は処分されてもうありませんが、本があったころは本棚を見るのも怖くて、視界には入れたくなかったし、前を横切るのもすごく怖かったんですよね。
木の節が顔に見えて怖い、みたいな感じと一緒で子ども独特の感性だと思うのですが。もし今も本があったら、変わらずびくびくしてると思います。トラウマです。
そんな私もなぜか今ではホラー好き。
ホラーゲームとかホラー映画をよく見ます。(本物は無理です見たくないです)
たくさん見るうちに「恐怖演出」に慣れてしまって、何見ても怖がらなくなってしまったのですが、「リング」一作目は何とも言えぬ空気があって、めずらしく怖いと感じます。何度も見ようとは思わないです。
でも貞子は全然怖くないんですよね。ただの役者やんって急に現実的になる。
呪いのビデオ映像が気味悪すぎる…
本当に怖い演出が上手い作品だと思います。
「らせん」はリングの続編なのですが、「リング2」とかいう映画もあるので、見るまで続編だと認識していませんでした。
リングは原作と映画版では違う部分も多いそうで、それに合わしてらせんも少しずつ違うようです。話のオチなど大きくは同じみたいですが、私は映画しか見てないのでわかりません。
以下感想と疑問です。ネタバレを含みます。
前半のホラー演出はとても良くてすごくドキドキしましたが、貞子が顔を出してから恐怖心が一気に薄れました。怖いというより後味の悪い作品。
特に高山が「自分の子どもをよみがえらせるなんて残酷なことはしない」と言ったのが複雑です。
リングのラストは浅川玲子が息子を守るぞと車に乗っているシーンで終わりますが、二人とも死んだのがらせんで判明してショックでした。
リングは「呪い」という得体の知れないものが死の原因であるとされてましたが、らせんでは死因が解明されて「ウイルスによるもの」と一気に現実味が出ます。
その割に感染経路はビデオ視聴や文書を読むこととされていてリアルではない。
また、貞子が安藤と舞の性行為によって復活したり、貞子の力によって死んだ人間が生き返ったりと、もはやファンタジー?
貞子が味わった恐怖を「リングウイルス」としてばらまいて人々をニュータイプにするという話もますますファンタジー。
そして疑問なのは、高山は貞子によって殺されたのになぜよみがえったときに貞子と共にいるのを選んだのか。
貞子も高山を気に入ってるのならそもそもなぜ殺したのか。
高山はなぜ回りくどく胃のなかに暗号を残したのか。
舞はどうして貞子をやどしたのか。
プレゼントとは安藤の息子が生き返ることだった?
劇中に「何が起こるなんて誰にも予想できない」といった趣旨の台詞がありますが、それで全て片付けようとしてるわけではあるまいな?
物語を素直に受けとると「超能力者たくさん!中でも貞子が人知を越えたぶっちぎりで凄いヤツ!」という見方になります。
高山も舞も超能力を持っているから不思議なことがたくさん起こった。尚且つ高山は変人だから貞子をも受け入れられた。
舞も超能力ゆえに貞子と存在が近くて貞子を宿すことができた。とか?
貞子はすごい能力者なので、DNAがあれば死んだ人でも復活させられる。
また、呪いの力で天然痘のウイルスを変異させて、ビデオや文書から人々に感染させることができる。
という感じで、全て超能力のせいにするのが素直な見方なのかなと。
もうひとつの考え方は全て安藤の精神不安定による妄想説
最後の海辺のシーンが特に気になりました。映像の質が少し違って夢っぽいような雰囲気で現実味がありません。
死体の高山が目を開けたり、向こうにいるように見えたりと、現実と虚構が入り交じっている演出もありました。そこへ恐怖心によってさらに妄想と現実の境目があやふやに?
しかしそうなると、作品の看板である貞子の存在を否定することになるんですよね。
リングの浅川も恐怖によって半分妄想状態だったというならまだ辻褄が合いますが。
井戸でウイルスが進化をとげ、その上に立てられた建物に来た若者がたまたま感染したことと
実際に井戸に突き落とされた貞子の話がうまく合ったので、浅川が「これは呪いだ」と解釈をして恐怖が伝染していったと。
そうなるとビデオの謎も残りますが、実は見る人の恐怖を写しているとか?というと少し強引な気もします。
舞は実は死んでいないという説を言っている人もいて、確かに安藤がチャックを開けるまでそれが誰の死体か誰も明言していません。
しかしそれならなぜわざわざ警察が安藤を現場に呼ぶのでしょうか。
死んだのは本当だけれど、安藤との関係に悩んで自殺したという考えなら納得できますが。
恐怖によって物事を悪い方へ、また時に都合のいいように安藤が妄想している。しかし全てが嘘ではなく実際に起こっていることもある、というのが妄想説のまとめです。
色々考えますが答えは結局出ません。小説を読めばまた変わるかもしれません。
映画も一度しか見てないのでもっとちゃんと見れば伏線があるかもしれませんが、何度も見返したいとは思えない作品です。
ホラー映画としては「成功」しているんじゃないでしょうか。
私としては全て素直に受け入れて超現象物語として見た方が正解なのかなと思ったりしますが、妄想説の方がよりホラーだと思います。
それにしても「らせん」とはDNAのことだったんですね。
月