不登校問題を考える・子ども応援センターTomorrow 

不登校問題への提言・問題提起/不登校の親の会「こぶしの会」/不登校・ひきこもりの人たちの居場所「水曜塾」の活動紹介

11月の「水曜塾」のお知らせ

2022-10-31 09:09:07 | お知らせ

    水 曜 塾  お知らせ 

水曜塾は、不登校や引きこもりの人たちの居場所になればと、2010年12月から開いています。

水曜塾は、亀岡総合福祉センターの一室を借りて、第2、第4水曜日に開いています。

現在の参加者は一人です。

机と椅子以外何もないけれど、誰でも自由に参加できます。

勉強がしたい人。

何をしたいかわからないけれど、何かをしたい、始めたいと思っている人。

誰かに合いたい、話がしたい人。

そんな人は、ぜひ一度、来てください。

              

 

11月の水曜塾

日 時 2022年11月16日(水)

         11月30日(水)

         午後1時から4時まで

場 所 亀岡市総合福祉センター 2階会議室

連絡先 主宰者 野中まで (携帯)090-9706-9431

持ち物などは、自分で考えて持ってきてください。飲み物、食べ物も持ってきてもいいです。

 

 


不登校24万人超 これは異常だ!!

2022-10-29 16:58:16 | 随筆

不登校24万人超 これは異常だ!!

            

不登校の小中学生が24万人を超えた。コロナ禍の影響があるとしても、これは異常である。

 文科省の「問題行動・不登校等調査」によると、やる気がなくて、生活が乱れている子、友だちとうまく関われない子、親が手を焼いている子、そんな子らが不登校になっているらしい。先生たちにはそのように見えているのだろう。(この調査の回答者は先生である。)

果たして、そうだろうか。私は、長年、不登校の子どもと関わって来たが、そんな子はいなかった。みんな学校に行きたくて、苦しんで、そして、藻掻いていた。無気力な子など、出会ったことがない。

 文科省が行ったもう一つの調査がある。回答者は不登校の当事者である。そこには「勉強が分からない」「先生との関係」「いじめ」が理由で学校へ行けなくなった、と子どもが訴えている。「問題行動・不登校等調査」とは様相が逆転している。

「授業・先生・友達」と言えば、学校そのものである。ワクワクしながら、これから起きることに胸をときめかせながら入学したのに、こんなことが原因で学校へ行けなくなれば、誰でも、自暴自棄にも無気力にもなるだろう。

不登校の原因は、そんな状態を作っている学校(教育制度)そのものにあるのではないか。

子どもたちの声に耳を傾け、子供たちの思いに寄り添えば、不登校問題の本質が自ずと分かるだろう。いつまでも真実から目を背けず、子どもたちがいそいそと通える、楽しい学校にするための教育改革(学校改革)に、今こそ真剣に取り組む時だろう。


11月の不登校を考える親の会「こぶしの会」のお知らせ

2022-10-26 20:58:43 | お知らせ

不登校を考える親の会「こぶしの会」のお知らせ

10月の「こぶしの会」は5人の参加でした。

それぞれの子どもたちの現況や成長の足跡について語り合いました。

15年ひきこもっていた人が、今は、高卒認定試験に頑張っています。などなど。

11月の「こぶしの会」は次のように行います。

日 時 2022年11月26日(土)

      午前9時30分~11時30分

場 所 ガレリア亀岡(亀岡市余部町宝久保)

参加費 300円(会場費として)

連絡先 世話人野中の携帯 090-9706-9431

    参加に予約は要りません。誰でも自由に参加できます。

    子どものこと、子どもの成長をいっしょに語り合いましょう!!

 

 

             

 


不登校問題の元凶は学校である!

2022-10-21 10:54:58 | 考察

Series 不登校問題を考える
第2章 不登校問題の元凶は学校である!
      ~2つの調査の乖離を考える~


1.はじめに
 令和2年度の「不登校に関する調査研究協力者会議」(以後、協力者会議という)において、文科省が行った2つの調査結果が報告された。「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」と「不登校に関する実態調査」である。
 第1章で触れたように、「不登校の要因やきっかけ」に関するこの2つの調査結果は、正反対というか、真逆というか、大きな差異が生じている。(ちなみに、「不登校に関する実態調査」は、文科省が、「協力者会議」に不登校当事者の声を反映させるために実施された調査である。)※1
  ※1 当事者の声として、直近まで不登校であった児童生徒やその保護者に対する実態調査の結果を積極的に活かすなど、不登校の当事者の意識や要望等に配慮しつつ議論を進めてきた。
 「協力者会議」では、委員から調査結果の差異(乖離)に関する発言があったが、座長は、すぐさま発言を引き取り、事務局と相談するとした。結果、議論は深まらなかったが、「協力者会議」の報告書には2つの調査結果の乖離について、次のようにまとめられていた。
 「今回、不登校の要因・背景(実態調査では、『最初に(学校に)行きづらいと感じ始めたきっかけ』)について『令和2年度問題行動等調査』と『実態調査』の結果に乖離が見られたのが、『教職員との関係をめぐる問題』(実態調査では『先生のこと』や『学業不振』(実態調査では『勉強が分からない』)であった。これについては、前者は学校を対象とした悉皆調査で、主な要因を1つ選択することとしているのに対し、後者は不登校児童生徒本人を対象とした抽出調査で、あてはまる要因を複数回答するものであることから、より幅広く回答がされたことなど、調査対象者数や調査手法等の違いによって差が出たものと考えられる。一方で、実態調査において主たる要因でない可能性があるとはいえ、これらの点について学校が認識しているよりも多くの児童生徒が感じていることが明らかになった。
 要するに、「乖離は調査対象差数と調査手法の違いによって生じたもの」として片付けられたてしまったのである。また、「実態調査」で子どもたちが回答した不登校のきっかけについて、「主たる要因でない可能性がある」としている。そして、「当事者の声を反映させる」という当初の目的は捨て置かれてしまった。※2
  ※2 「実態調査」に表れた子どもたちの声は、施策のそれぞれの箇所において引用され、参考にされている。形として、当事者の声を活かす、という体裁になっている。文科省の施策の妥当性を裏付けるものとして。
 はたして、「実態調査」に表れた子どもたちの声は、なんだったのだろう。実は、不登校問題の本質を突いているのかも知れない。第2章「不登校問題の元凶は学校にある!」では、2つの調査結果の乖離から、不登校問題の本質について考えていく。

2.文科省の2つの調査について
 文科省は、不登校に関して2つの調査を行っている。1つは、毎年実施している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以降、問題行動等調査という)と10年間隔で行っている「不登校に関する実態調査」(以降、実態調査という)である。
 不登校に関する調査は、以前は「学校基本調査」に含まれていたが、いつの間にか、問題行動等を調査していた「生徒指導上の諸課題に関する調査」に位置付けられ、「問題行動等調査」となった。この調査は、全児童生徒を対象とした悉皆調査であり、各小中学校が回答する。回答者は教職員である。(基本的に、各学校の生徒指導担当者と考えていいだろう。)
 これに対して、「実態調査」は、2001年に、1993年に中学3年生で不登校だった生徒を対象に行った追跡調査が第1回目である。第2回目は、2011年に、2006年の中学3年生を対象に実施した。そして、2020年に協力者会議への資料として、2020年当時不登校の小学6年生と中学3年生を対象に行った実態調査が3回目である。
 協力者会議に資料として提出されたのは、2020年設置の会議だけである。それまでの2回は、文科省ホームページに公表されていたが、協力者会議に資料としては提出されておらず、協議の対象になっていない。2020年の協力者会議において、委員から、「実態調査」と「問題行動等調査」との違いが指摘されたが、議論には至らなかった。
 しかし、両調査の乖離について、協力者会議のまとめである報告書には、わざわざ項を設けて見解を示している。ちなみに、第1章で指摘したとおり、第1回目から第3回目までの実態調査の結果は、3回とも同じ傾向を示している。

3.文科省の見解について
2つの調査結果の乖離に関する文科省の見解は次の諸点である。
(1) どのような乖離が生じたか
 〇今回、不登校の要因・背景(実態調査では、『最初に(学校に)行きづらいと感 じ始めたきっかけ』)について『令和2年度問題行動等調査』と『実態調査』の結果に乖離が見られた
  〇教職員との関係をめぐる問題』(実態調査では『先生のこと』)や『学業不振』(実態調査では『勉強が分からない』)であった。
 下の表を見ていただきたい。
  項  目            実・小学生    実・中学生    問・小学生   問・  中学生
先生のこと             29.7%    27.5%       1.9%     0.9%
友達のこと(いやがらせやいじめ)  25.4%    25.5%    0.3%      0.2% 
勉強が分からない          22.0%    27.6%    3.2%      6.5%
    実=実態調査   問=問題行動等調査
実態調査「先生のこと」=問題行動等調査「教職員との関係をめぐる問題」
実態調査「友達のこと(いやがらせやいじめがあった)」=問題行動等調査「いじめ」                      実態調査「勉強が分からない」=問題行動等調査=「学業の不振」

 この違い(差)は大きい。報告書は、「実態調査において主たる要因でない可能性があるとはいえ、
これらの点について学校が認識しているよりも多くの児童生徒が感じていることが明らかになっ
た。」と指摘しているが、はたして、認識の違いで済ませていいのだろうか。
 問題行動等調査を見ると、不登校の主な要因は、小学生で1位が「無気力・不安」(46.3%)、2位「生活リズムの乱れ」(14.0%)、そして、3位「親子の関わり方」(14.6%).4位「いじめを除く友人関係をめぐる問題」(6.7%)である。中学生では、1位「無気力・不安」(47.1%)、2位「いじめを除く友人関係をめぐる問題」(12.5%)、3位「生活リズムの乱れ」(11.0%)、4位が「学力の不振」(6.5%)そして、5位が「親子の関わり方」(6.2%)となっている。
「無気力・不安」「生活リズムの乱れ」「友人関係」そして、「親子の関わり方」、これらを合わせると、小学生67.6%、中学生66%となり、不登校の要因の大半を占めている。すなわち、不登校の要因は、主に子ども自身と家庭にあることになる。
しかし、実態調査を見ると、不登校は、上の表に示した「先生のこと」「友達
のこと(いじめ)」、そして、「勉強が分からない」の3つが主な要因を占めている。
 実態調査は複数回答が可能であり、対して、問題行動等調査は主な要因1つを選択としている。
協力者会議の報告書は、この複数回答と単一回答の違いによって乖離が生じたのだと説明している。
しかし、問題行動等調査は、主な要因のほかに、「主要でない要因」についても調べている。その結
果を合わせても、調査結果の集計には大きな変化は見られない。問題行動調査の結果は、不登校の要因
は、主に子ども自身と家庭にあることを示唆している。
 それに対して、実態調査は、不登校の要因は「先生」「いじめ」「勉強」という「学校」「学校生活」そのものにあると訴えている。
 
(2) なぜ乖離は生じたか
 なぜ、このような差(乖離)が生まれたのだろうか。文科省・報告書は、
〇前者(問題行動等調査)は学校を対象とした悉皆調査で、主な要因を1つ選択することとしている 
〇後者(実態調査)は不登校児童生徒本人を対象とした抽出調査で、あてはまる要因を複数回答するものであることから、より幅広く回答がされた
〇調査対象者数や調査手法等の違いによって差が出たものと考えられる。
 と、見解を示している。この見解について検討してみる。

 1)悉皆調査と抽出調査について
 「実態調査」は、「対象者の令和元年度に不登校であった者のうち、学校又は教育支援センターに通所の実績がある者を対象とし、全く家から出られないような不登校児童生徒の状況等、全ての不登校児童生徒の状況を反映した調査ではない点に留意する必要がある。」と報告書が指摘しているように、不登校者全員に対する調査ではなく、調査時点で調査可能な児童生徒に限られた抽出調査である。
 それに対して、「問題行動等調査」は、回答者が学校(先生)であり、学校基本調査と同じく、在籍児童生徒の状況を報告・回答することが義務付けられている全数調査(悉皆調査)である。
 悉皆調査は、「国勢調査」で用いられる方法であり、全体の実情が分かり誤差が生じにくいと言われている。他方、抽出調査は、「世論調査」に見られる方法であり、全体的な傾向を知ることができる。どちらも、調査の方法として実績があり、定着しており、どちらも、調査目的に応じて活用できるものである。
 今回の場合、どちらの調査も、不登校の要因やきっかけを知るために実施されたものであり、とりわけ、「実態調査」は、協力者会議に、不登校当事者の声を反映させるために実施されたものであり、その目的に合わせて活用できるものとして実施されたはずである。(なぜなら、文科省は、過去2回、調査研究会を設置して調査対象、調査方法を精査して実施してきた経緯がある。)※3
  ※3 実態調査の調査対象は、学校や教育支援センターに通所可能な子どもであり、家から出られない状況にある子どもに比べて、良好な状況にあると言える。もし、全ての不登校の子どもへの調査が可能であったら、調査結果は、より違った結果になっているかもしれない。過去2回の実態調査は、学年こそ中学3年に限っていたが、全員を対象に実施したにもかかわらず、全員からの回答は不可能だった。それだけ、不登校者は困難な状況にあると言えるのではないか。
 ゆえに、調査方法が違うから乖離が生まれたというのは、理由にはならない。また、調査目的に合わせて、それぞれの調査結果を活用すればいいのであって、調査結果の乖離を説明するために、調査対象、調査人数、調査方法を持ち出すことは、そもそも必要もなければ、根拠もないと言える。

2)回答数(単数回答と複数回答)が乖離を生み出したか
報告書は、「問題行動等調査は、主な要因を1つ選択」、「実態調査は、あてはまる要
因を複数回答するものであることから、より幅広く回答がされた」から、乖離が生じたとする見解を示している。
 また、協力者会議の報告書は、実態調査は複数回答が可能であり、それに対して、問
題行動等調査は主な要因1つを選択としているが、問題行動等調査は、主な要因のほか
に、「主要でない要因」についても調べている。その結果を合わせても、調査結果の集計に
は大きな変化は見られない。問題行動調査の結果は、不登校の要因は、主に子ども自身と家庭にあることを示唆している。
 第1章で見たように、不登校の要因は多様であり、複合的である。故に、不登校の実態調査のように、不登校の原因・きっかけについてもあてはまる事柄を複数回答できる方が、より実態に迫ることができると思われる。「問題行動等調査」でも、主たる要因のほかに、「主要でない要因」も調べている。「問題行動等調査」も複数回答を認めて、集計している。回答数(単数回答と複数回答)が乖離を生み出したとは言い難い。ちなみに、その結果を合わせても、調査結果の集計には大きな変化は見られなかった。問題行動等調査の結果は、不登校の要因は、主に子ども自身と家庭にあることを示唆していることに変わりはない。

(3) 学校の認識と児童生徒の認識の違いはなぜ生じたのか
以上、見てきたように、調査対象、調査方法、回答数などによって、2つの調査の乖離が生じたとは考えられない。では、なぜ、乖離は生じたのか。それは、二つの調査の回答者の違いによるものと考えられる。
学校とは、すなわち先生である。先生は、子どもの「無気力・不安」や「生活リズムの乱れ」、そして、「親子の関わり方」が不登校の原因であると捉えているから、「問題行動等調査」にも、その認識が反映されているのだろう。一方、当事者の子どもは答えを繕う必要もなく、自分の感じたこと、思ったことを、そのまま答えているのではないか。不登校に関わって、学校(先生)という立場と当事者という立場によって、とらえ方、感じ方が違っているのだろう。
これに関して、報告書は、「実態調査において主たる要因でない可能性があるとはいえ、これらの点について学校が認識しているよりも多くの児童生徒が感じていることが明らかになった。」と指摘している。
乖離とは、すなわち、学校(先生)と当事者(子ども)のとらえ方、感じ方が違いである。
はたして、乖離を先生と子どもの認識の違いで済ませていいのだろうか。
不登校は、子どもたちに大きな負担を負わせている。とりわけ、自己肯定感の否定、喪失は、子どもたちの発達・成長に大きな影響をもたらしている。それを取り戻すための苦しみは言葉にできないほどである。両者の認識の違い(乖離)は、「実態調査」に表れた子どもたちの思い、子どもたちの悲鳴が、先生たちに届いていないことを表しているのである。
 よって、「2つの調査の乖離」とは、「問題行動等調査」が不登校の子どもたちの思いを反映していないことを意味しているのである。
 「協力者会議」は、乖離を認識の違いとして済ませてしまった。当事者の声を反映させるための調査に応え、子どもたちがせっかく声を上げたものを「主たる要因でない」とさえ言っている。なぜ、率直に子どもたちの思いを受け止めないのか。
 子どもたちの声を率直に受け止めればいいものを、受け取らないのにはそれなりの理由があるものと考えられる。子どもたちの声は、不登校の要因として、「先生」「友達」「授業」を挙げている。「先生」「友達」「授業」とは、そもそも学校を構成している重要な要素であり、学校そのものではないか。それらが不登校を生み出している要因となっている。学校そのものが不登校を生み出している、と言って過言ではないだろう。
 子どもたちの声を率直に受け止めれば、これまでの不登校に対する認識が覆ってしまう。“不登校の要因は、主に子ども自身と家庭にある”という「問題行動等調査」に依拠した認識が。「問題行動等調査」は、文科省の不登校施策のデーターベースであり、この調査をもとに、不登校施策が考えられ、実施されてきた。そして、今、現在、「教育機会確保法」と新しい文科省通知をもとに“不登校の子どもは、学校以外の場で学べばよい”とする新たな不登校施策が繰り広げられている。
子どもたちの思いとかけ離れた調査結果をもとに講じられている不登校施策が、本当に子どもたちの為になるのだろうか。そして、不登校問題の真の解決につながっていくのだろうか。不登校施策の妥当性が問われることになる。


次回、第3章では、不登校施策の妥当性について考える。

 


不登校問題を考える

2022-10-09 11:50:07 | 考察

不登校問題を考える 

 不登校を生み出しているのは学校・学校制度!

 文科省調査から明らかになる不登校問題の本質!

     不登校問題の本質と解決への道すじ考える

なぜ、子どもたちは学校に行けなくなるのか。不登校に関する調査が行われている。調査によって、不登校の捉え方がまったく違う。先生から見た不登校。子どもから見た不登校。これほどまでに違うものか、と驚いてしまう。

文科省が行った不登校調査資料から、なぜ、子どもたちが学校に行けんなくなるのかを考えていく。

第1章 なぜ、子どもたちは学校に行けなくなるのか

 1.はじめに《本レポートの問題意識》

子どもたちは、なぜ不登校になるのか、不登校問題の本質とは何か、不登校問題を解決するにはどうすればいいか、について考えます。

学校へ行けない、行かない子どもが20万人近くいる。(2020年)

不登校が社会問題化してから数十年、文科省はスクールカウンセラーの配置、適応指導教室の設置など様々な対策を講じてきた。しかし、不登校になる子どもたち減るどころか、増減を繰り返しながら、今日では、小学生の100人に1人、中学生では25人に1人が不登校という状態になっている。

そうした中、2016年12月、『義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律』(教育機会確保法)」が成立し、2019年10月、文科省は、「不登校児童生徒への支援の在り方について」を通知した。それらは、“不登校の子どもは、学校以外の場で学んでも良い”とするものである。不登校政策の大転換だった。

既に、「教育機会確保法」から6年、「通知」から3年。その間にも不登校の子どもたちが増え続けている。しかし、学校以外の場で子どもたちが学び、過ごせる場所はほとんどなく、環境の整備は遅々として進んでいない。子どもたちには行き場がない。このような施策は、本当に子どもたちの為になっているのだろうか。

不登校の子どもたちをなくすために、これまでの、そして、いま行われている施策が本当に適切だったのだろうか。不登校をなくすにはどうすればいいのか。不登校問題を解決するために必要なのは何か。

不登校問題を、子どもたちの視点で、子どもたちに寄り添いながら捉えることによって、はじめて問題の本質が理解でき、問題解決の方途を考えることができると、私は思う。

幸い、不登校の子どもたちを対象とした調査が、文科省や民間団体によって、幾つか行われている。このレポートでは、それらを参考にしながら、子どもたちは、なぜ不登校になるのか、不登校問題の本質とは何か、不登校問題を解決するにはどうすればいいか、について考えて行く。

【 参考にする調査資料 】

なぜ、子どもたちは学校へ行けなくなるのか? 次の調査結果を参考にしながら考えてみる。

A.「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

(以降、「問題行動等調査」と略す。) 文科省が毎年行っている調査である。これが文科省の不登校施策のデーターベースになっている。2020年度の調査を参考とする。

B.「不登校に関する実態調査」

(以降、「実態調査」とする。文科省が、2020年の「不登校に関する調査研究協力者会議」の資料とするため実施された調査である。

C.「不登校傾向にある子どもたちの実態調査」

(以降、「財団調査」とする。)日本財団が2018年に実施した調査である。

上記各調査の調査結果が示している不登校の要因、学校に行けない、行きにくい理由とその比率を以下のようにまとめた。

 D.不登校生徒に関する追跡調査報告

  「平成18(2006)年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」

 文科省が、2011年に調査研究会を設けて、2011年から2012年にかけて実施した調査である。(以下「追跡調 査」とする。)なお、2001年にも同様の調査を行っている。

まずは、「2.資料で見る不登校の理由やきっかけ」に目を通していただきたい。

 

2.資料で見る不登校の理由やきっかけ 

A.「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

小学生(不登校者 63,350人)

 

主たるもの

主たるもの以外

いじめ

171人

0.3

96人

0.1

いじめを除く友人関係をめぐる問題

4259人

6.7

2621人

4.1

教職員との関係をめぐる問題」

1187人

1.9

1005人

1.6

学業の不振

2049人

3.2

4822人

7.6

進路に係る不安

153人

0.2

238人

0.4

クラブ活動・部活動への不適応

11人

0.0

25人

0.0

学校のきまり等をめぐる問題

453人

0.7

549人

0.9

入学・転編入学・進級時の不適応

1121人

1.8

785人

1.2

家庭の生活環境の急激な変化

2408人

3.8

1523人

2.4

親子の関わり方

9227人

14.6

8888人

14.0

家庭内の不和

1027人

1.6

1403人

2.2

生活リズムの乱れ・あそび・非行

8863人

14.0

6802人

10.7

無気力・不安

29331人

46.3

7247人

11.4

上記に該当なし

3090人

4.9

***

***

 

中学生(132,777人)

 

主たるもの

 

主たるもの以外

 

いじめ

228人

0.2

109人

0.1

いじめを除く友人関係をめぐる問題

16571人

12.5

6524人

4.9

教職員との関係をめぐる問題」

1226人

0.9

1201人

0.9

学業の不振

8626人

6.5

11485人

8.6

進路に係る不安

1428人

1.1

2174人

1.6

クラブ活動・部活動への不適応

772人

0.6

1060人

0.8

学校のきまり等をめぐる問題

1061人

0.8

1118人

0.8

入学・転編入学・進級時の不適応

5412人

4.1

2512人

1.9

家庭の生活環境の急激な変化

3259人

2.5

2183人

1.6

親子の関わり方

8168人

6.2

9923人

7.5

家庭内の不和

2456人

1.8

2834人

2.0

生活リズムの乱れ・あそび・非行

14576人

11.0

9130人

6.9

無気力・不安

62555人

47.1

12840人

9.7

上記に該当なし

6439人

4.8

***

**

上の表の内、「学校に係る状況」は、「いじめ」から「入学・・」まで、「家庭に係る状況」は「家庭の生活環境・・」から「家庭内の不和」まで、「本人に係る状況」は「生活リズム・・」と「無気力・不安」です。

 

B.「不登校に関する実態調査」

小学6年生(713人)

1.友達のこと(いやがらせやいじめがあった)

25.2%

2.友達のこと(1以外)

21.7%

3.先生のこと

29.7%

4.勉強が分からない

22.0%

5.部活動の問題

2.1%

6.学校の決まりなどの問題

2.7%

7.入学、進級、転校して学級や学校に合わなかった

7.4%

8.1~7以外の理由で学校生活と合わなかった

13.3%

9.親のこと

6.7%

10.親の学校に対する考え

1.3%

11.家族関係

4.9%

12.家族の世話や家事が忙しかった

1.1%

13.身体の不調

26.5%

14.生活リズムの乱れ

25.7%

15.インターネット、ゲーム、動画視聴、SNSなどの影響

18.1%

16.学校を休んでいる人がいて影響を受けた

7.2%

17.学校に行く意味が理解できず、行かなくてもいいと思った

13.6%

18.その他

4.8%

19.きっかけが何か自分でもよくわからない

25.5%

20.特にきっかけはないと思う

2.2%

21.無回答

2.0%

 

中学3年生(1,303人)

1.友達のこと(いやがらせやいじめがあった)

25.5%

2.友達のこと(1以外)

25.6%

3.先生のこと

27.5%

4.勉強が分からない

27.6%

5.部活動の問題

13.3%

6.学校の決まりなどの問題

7.8%

7.入学、進級、転校して学級や学校に合わなかった

10.0%

8.1~7以外の理由で学校生活と合わなかった

12.3%

9.親のこと

8.9%

10.親の学校に対する考え

1.8%

11.家族関係

6.2%

12.家族の世話や家事が忙しかった

1.2%

13.身体の不調

32.6%

14.生活リズムの乱れ

25.5%

15.インターネット、ゲーム、動画視聴、SNSなどの影響

17.3%

16.学校を休んでいる人がいて影響を受けた

5.9%

17.学校に行く意味が理解できず、行かなくてもいいと思った

14.6%

18.その他

4.1%

19.きっかけが何か自分でもよくわからない

22.9%

20.特にきっかけはないと思う

1.5%

21.無回答

1.9%

【凡例】

〇友達のことA・・(いやがらせやいじめがあった)

〇友達のことB(A以外)

〇先生のこと・・・(先生と合わなかった、先生が怖かった、体罰があったなど)

〇勉強が分からない・・(授業がおもしろくなかった、成績がよくなかった、テストの点がよくなかったなど)

〇部活動の問題・・(部活動に合わなかった、同じ部活の友達とうまくいかなかった、

試合に出場できなかった、部活に行きたくなかったなど)

〇学校の決まりなどの問題

         (学校の校則がきびしかった、制服を着たくなかったなど)

〇親のこと・・・・ (親と仲が悪かった、親がおこった、親の注意がうるさかったなど)

〇親の学校に対する考え

         (親がそもそも学校に行く必要はないと考えていたなど)

〇家族関係・・・・(自分以外の家族どうしの仲が悪かった、家族が失業した、家族が離れ離れになったなど)

〇身体の不調・・・(学校に行こうとするとおなかが痛くなったなど)

〇生活リズムの乱れ・・(朝起きられなかったなど)

〇インターネット、ゲーム

      ・・・(インターネット、ゲーム、動画視聴、SNS(LINEやツイッターなど)等の影響(一度始めると止め   

          られなかった、学校に行くより楽しかったなど)

〇学校を休んでいる人の影響

        ・・・(兄弟姉妹や親しい友達の中に、学校を休んでいる人がいて、影響を受けた)

〇学校へ行く意味が理解できず

        ・・・(なぜ学校に行かなくてはならないのかが理解できず、行かなくてもいいと思った)

 

C.「不登校傾向にある子どもの実態調査」

*調査対象の子どもの特徴(タイプ)

調査対象者・・12歳から15歳(6,500人) 有効回答6,450人

1-1・不登校・・・・・年間30日以上学校に行っていない

1-2・不登校・・・・・1週間以上連続など一定程度学校に行っていない

2・・・教室外登校・・・保健室登校、図書室登校、校長室登校、校門登校など

3・・・部分登校・・・・基本的には教室で過ごすが、授業に参加する時間が少ない

4・・・仮面登校A・・・教室では過ごすが、みんなと違うことをし、授業に参加する時間が少ない

5・・・仮面登校B・・・教室で過ごしているが、学校に行きたくない、学校が辛い、嫌

6・・・登校・・・・・・学校に馴染んでいる

*分類 1-1,1-2を不登校。2~5を不登校傾向とし、2~4と5を分ける。

*比率 1-1(3.1%)、1-2(1.8%)、2~4(4.0%)、

5(4.4%)、6(86.7%)

 

〈学校に行きたくない理由TOP10〉

  • 1-1・・・不登校

①朝起きられない・・・・・・・・・・・・・59.5%

②疲れる・・・・・・・・・・・・・・・・・58.2%

③学校に行こうとすると体調が悪くなる・・・52.9%

④授業がよく分からない、ついて行けない・・49.9%

⑤学校は居心地が悪い・・・・・・・・・・・46.1%

⑥友達とうまくいかない・・・・・・・・・・46.1%

➆自分でもよく分からない・・・・・・・・・44.0%

➇学校に行く意味が分からない・・・・・・・42.9%

➈先生とうまくいかない、頼れない・・・・・38.0%

⑩小学生の時と比べてよい成績が取れない・・33.9%

 

  • 1-2・・・不登校

①疲れる・・・・・・・・・・・・・・・・・38.2%

②朝、起きられない・・・・・・・・・・・・32.6%

③自分でもよく分からない・・・・・・・・・31.0%

④友達とうまくいかない・・・・・・・・・・30.1%

⑤授業がよく分からない、ついていけない・・29.2%

⑥小学校の時と比べてよい成績が取れない・・28.9%

➆学校に行こうとすると体調が悪くなる・・・28.1%

➇学校は居心地が悪い・・・・・・・・・・・24.5%

➈先生とうまくいかない、頼れない・・・・・23.4%

⑩テストを受けたくない・・・・・・・・・・23.2%

 

  • 2~4・・・教室外登校、部分登校、仮面登校A

①疲れる・・・・・・・・・・・・・・・・・44.0%

②朝、起きられない・・・・・・・・・・・・35.6%

③授業がよく分からない、ついて行けない・・33.3%

④友達とうまくいかない・・・・・・・・・・28.5%

⑤小学校の時と比べてよい成績が取れない・・27.1%

⑥テストを受けたくない・・・・・・・・・・27.0%

➆先生とうまくいかない、頼れない・・・・・26.1%

⑧学校は居心地が悪い・・・・・・・・・・・25.9%

⑨校則など学校のきまりが嫌だ・・・・・・・22.5%

➉小学校の時と比べてつまらない・・・・・・21.8%

 

  • 5・・・仮面登校B

①疲れる・・・・・・・・・・・・・・・・・48.7%

②朝、起きられない・・・・・・・・・・・・32.2%

③学校に行く意味が分からない・・・・・・・31.9%

④学校は居心地が悪い・・・・・・・・・・・28.4%

⑤テストを受けたくない・・・・・・・・・・28.2%

⑥小学校の時と比べてよい成績が取れない・・27.8%

➆授業がよく分からない、ついて行けない・・27.3%

⑧先生とうまくいかない、ついて行けない・・26.1

⑨小学校の時と比べて、つまらない・・・・・25.0%

➉友達とうまくいかない・・・・・・・・・・24.1%

 

D.不登校に関する実態調査

 「平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」

調査の概要

*調査対象…平成18(2006)年度に中学校第3学年に在籍し学校基本調査において不登校として計上された者 41,043人

*調査時期 平成23(2011)年から平成24(2012)年

*在籍中学校に対する基礎的調査(A調査)・・・・・・回答数28,388人

*対象者本人に対するアンケート調査(B調査)・・・・回答者 1,604人

*対象者本人に対するインタビュー調査(C調査)・・・回答者   379人

調査資料について

*調査資料はB調査の集計表を基にして作成した。

【調査資料】・・・「不登校のきっかけ」

全項目に対して総回答数1,604 有効回答数1,581であった。

 問 「あなたが学校を休みはじめた時のきっかけは何ですか。思いあたるものすべて

に〇をつけてください。」

選択肢

回答数

H18調査(%)

H5調査(%)

1.友人との関係

849

53.7

44.5

2.先生との関係

420

26.6

20.8

3.勉強が分からない

500

31.6

27.6

4.クラブや部活動の友人・先輩との関係

366

23.1

16.5

5.学校のきまり等の問題

161

10.2

9.8

6.入学、転校、進級して学校や学級になじめなかった

273

17.3

14.3

7.家族の生活環境の急激な変化

155

9.8

4.3

8.親との関係

288

14.4

11.3

9.家族の不和

160

10.1

7.5

10.病気

235

14.9

13.2

11.生活リズムの乱れ

548

34.7

12.インターネットやメール、ゲームなどの影響

246

15.6

13.その他

257

16.3

19.3

14.とくに思い当たることはない

88

5.6

10.8

*表のH5年調査は、平成5(1993)年度に中学3年生在籍の不登校だった生徒を

対象に、平成13(2001)年に実施した追跡調査である。

*選択肢の具体例

1.友人との関係・・・・・・・いやがらせやいじめ、けんかなど

2.先生との関係・・・・・・・先生がおこる、注意がうるさい、体罰など

3.勉強が分からない・・・・・授業がおもしろくない。成績がよくない、テストが嫌いなど

4.クラブや部活動の友人・先輩との関係

            ・・・先輩からのいじめ、他の部員とうまくいかなかったなど

5.学校のきまり等の問題・・・学校の校則がきびしいなど

6.入学、転校、進級して学校や学級になじめなかった

            ・・・転校、進級した時の不適応

7.家族の生活環境の急激な変化

            ・・・父親や母親の単身赴任、家族の別居、親の転職や失業などの経済的な問題など

8.親との関係・・親がおこる、親の言葉や態度への反発、親との会話がほとんどないなど

9.家族の不和・・・・・・・・両親の不和、祖父母と父母の不和など

10.病気

11.生活リズムの乱れ・・・・・朝起きられないなど

12.インターネットやメール、ゲームなどの影響

         ・・・・・・一度始めると止められない、学校より楽しいなど

13.その他

14.とくに思いあたることはない

 

3.考察Ⅰ 調査が示す不登校の理由やきっかけ

資料に目を通しただけで、子どもたちが学校に行けなくなる理由やきっかけが多様であることに気づく。

学校へ行けない子どもたちが、19万人。私の暮らす街の人口の2倍以上である。こんなにも多くの子どもが、学校に行けなくなっている。

ワクワクしながら、小学校の入学式を迎えたはずなのに。学校って楽しいところ、勉強するって嬉しいこと、友だちたくさんできるかなって、胸躍らせていた子どもたちが、どうして学校に行けなくなったのか。

 

(1)「問題行動等調査」の不登校の子どもたち

なんと、不登校の子どもたち(小学生も中学生も)の約半数は、本人の「無気力・不安」によって学校に行けなくなったらしい。それに続くのが、「生活リズムの乱れ」である。つまり、朝、学校に行く時間になっても、起きられない子どもたちだ。6割近くの子どもが、これらの理由で学校に行けなくなっている

子どもたちが学校に行けなくなるのは本人に原因がある、ということが「問題行動等調査」からは読み取れる。

そして、見落としてはならないのが、「親子の関わり方」である。中学生で6.2%、小学生では14.6%、と大きな割合を占めている。「無気力・不安」「生活リズムの乱れ」に次ぐ不登校の要因である。

社会的に問題となっている、いわゆる「いじめ」を原因とする不登校は、小学生0,2%、中学生0,3%と極めて少ない。しかし、いじめ以外の友達関係は、不登校との関りが大きいことが分かる。

「無気力・不安」、「生活リズムの乱れ」、そして、「親子の関わり方」と「友人関係をめぐる問題」、これらを合わせると、小学生67.6%、中学生66%となり、不登校の要因の大半を占めている。

何事にもやる気が見られず、いつも何か心配事があるようで落ち着かない様子の子。遊びやゲームに夢中になったり、非行に走ったりして生活リズムが乱れ、朝、起きられずに、学校を休みがちになる子。

不登校になる子どもには、そんな傾向がみられるようだ。親に反抗したり、言うことを聞かなかったり、親子関係がうまくいっていない子、そして、いさかいを起こしたり、喧嘩をしたり、友だち関係がうまく築けない子どもが不登校になりがちである。

「問題行動等調査」からは、そんな子どもたちの姿が浮かんでくる。

 

(2)「実態調査」から分かる子どもたちの思い

次に、「実態調査」を見る。

「実態調査」を見ると、「問題行動等調査」とは相反する不登校になった原因、きっかけが浮かび上がってくる。

 

先生とうまくいかなかったから、先生が怖かったから、体罰があったから、学校へ行けなかった。

授業がおもしろくない、勉強が分からない。だから、学校へ行くのが辛くなって、学校を休むようになった。

友だちからいやがらせをされたり、いじめられたりするから、学校に行くのが嫌になった。

さらに、朝、起きられない。お母さんが起こしに来ても体が動かず、起きられない。学校へ行こうとすると、おなかが痛くなり、吐き気がしたり、体の調子が悪くなって、休んでしまった。

これが、「実態調査」に表れた子どもたちの思いである。これらのことは、「問題行動等調査」には、ほとんど表れていない。

学校は、先生がいて、友だちがいて、みんな、わいわいガヤガヤおしゃべりをして、遊んで、そして、勉強するところ・・・・。

今日の算数頑張るぞ。理科の実験が楽しみだなあ。休み時間は何をして遊ぼうか、ドッジボールをしようかな。給食は何だろう。子どもたちは、何か、きっと、楽しいことがあるような気がして、学校へ行くのだろう。そんな学校だと楽しいのだが。

でも、先生の怖い顔が浮かんできたり、今日も友だちにいじ悪されたり、いじめられたらどうしようと悩んでいたりしたら、朝起きるのも辛いだろう。

勉強が分からなくて、授業について行けなかったら、どんな思いで座っているのだろ。どんな気持ちで、先生の話を聞くのだろう。

「実態調査」に表れた子どもたちの声が、私には悲鳴に聞こえる。

 

(3)全く相反する調査結果

 二つの調査からは、子どもたちが学校に行けなくなるのには、いろんな理由やきっかけがあること、そして、友だちとの関係が大きな要因になっていることがわかる。

しかし、二つの調査結果は、大きく違っている。「問題行動等調査」では、子ども自身と家庭に大きな要因である。反対に、「実態調査」では、学校やいじめが大きな要因となっている。

 

4.考察Ⅱ 学校へ行けない子どもたちの思い(届かない子どもの声)

(1)その他の調査が示していることは?

「実態調査」と「問題行動等調査」では、結果に大きな食い違い(乖離)が見られる。幸い、この二つの調査以外にも、子どもたちが学校に行けなくなる理由を調べた調査がある。民間の社団法人「日本財団」が実施した「財団調査」と文科省が「不登校に関する追跡調査研究会を立ち上げ、実施した「不登校生徒に関する追跡調査」である。それらについて見てみる。

 

 ア)「財団調査」

「財団調査」は、2018(平成30)年に、中学生6500人を対象に、不登校傾向にある子どもたちの学校に馴染めない原因、背景を知るために実施されて調査である。6500人の内、1-1不登校が201人、1-2不登校が117人、合計318人である。その生徒たちの声を聞いてみる。

「財団調査」では、「疲れる」「「朝起きられない」「学校へ行こうとすると体調が悪くなる」といった身体的な症状が学校に行けなくなる要因として浮かび上がってくる。次に、「授業がよく分からない、ついて行けない」「小学校の時と比べてよい成績が取れない」という勉強や授業のことが不登校につながっていることも伺える。そして、この調査でも、「友達とうまくいかない」「先生とうまくいかない、頼れない」といった先生や友達との関係が不登校の要因になっていることが分かる。

 イ)「追跡調査」

「追跡調査」を見て、まず、浮かぶことは、「実態調査」と同じ傾向ではないか、ということだ。不登校になるきっかけ、理由は、「実態調査」と同様に、「友人との関係」「生活リズムの乱れ」「勉強が分からない」「先生との関係」が大きな比率で現れている。(なお、「身体の不調」は「追跡調査」には選択肢に入っていなかった。)

 両調査を、割合の大きい上記の項目について比べてみると、次のようになる。

設問項目

実態調査

H18追跡調査

H5追跡調査

友達との関係

51.0%

53.7%

44.5%

勉強が分からない

27.6%

31.6%

27.6%

先生との関係

27.5%

26.6%

20.8%

生活リズムの乱れ

25.5%

34.7%

・・・・・

 

「追跡調査」は、中学3年生の時に不登校だった人を対象に、5年後に調査をしたもので、2001年と2011年の2回実施している。比較するために、「実態調査」も中学3年生分の比率を使った。

「身体の不調」と「生活リズムの乱れ」は、「追跡調査」の選択肢に入っていないため比較はできないが、不登校になる理由として割合の大きい「友達との関係」「勉強が分からない」「先生との関係」は、どの調査でも大きい割合を占めている。

「実態調査」と「追跡調査」は、10年ごとに実施されている。いわば30年間の不登校の要因の推移が分かる資料であるとも言える。しかし、上の表のように、「友達との関係」「勉強が分からない」「先生との関係」が、ずっと変わらず、不登校の大きな要因であることが分かる。

 

(2)子どもたちは、なぜ、学校へ行けないのか

「実態調査」「財団調査」「追跡調査」では、「友達関係」「先生との関係」「勉強が分からない」が不登校の大きな要因であることが分かる。また、「生活リズムの乱れ」「体調の不調」「朝起きられない」も大事な要因として浮かび上がってくる。

これらの調査と「問題行動等調査」とでは、結果に大きな違いが見られる。

思うに、「問題行動等調査」は、先生が回答者であり、先生の視点から見える不登校の要因であり、他の調査は回答者が子ども本人であり、いわば、子どもの視点から見える不登校の要因であるのではないだろうか。

先生は、子どもに「やる気がないから」、「親子関係がうまくいっていないから」不登校になった、と言う。子どもたちは、「先生との関係」や「友達との関係」、そして、「勉強が分からない」から不登校になったと言う。

 

(3)追 記

「問題行動等調査」は文科省が毎年行っている調査で、文科省の不登校施策のデーターベースである。果たして、適切なデーターといえるだろうか。

これらについては、次章で改めて考えてみたい。