![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/60/bfe29bc5737a1f8299d4f513a32c2301.jpg)
この程、探査機カッシーニの観測データから、土星の衛星レアにハローや円盤、リングといった構造が存在する可能性が示されました。
上はその想像図です(実際はあまりに希薄で肉眼では見えませんが…)。
円盤やリングをもつ衛星はこれまで知られていません。
その分析結果はアメリカの科学雑誌サイエンスに掲載されました。
今回はその内容を特集します!
1.レアの周りに広がる物質を発見
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/c0/8bd6d11a56183f56689bc7f037f622aa.jpg)
2005年11月26日、NASAの土星探査機カッシーニが土星の衛星レアの高度500kmを通過しました。
土星の周りには磁気流が存在しますが、カッシーニの経路はレアの下流を通っており(上図A)、ちょうどその陰を通ったときに電子の減少が捉えられます。
ところが、カッシーニはレアの大きさを超えて広い範囲で電子の減少を捉えました(上図B~D)。
これは2007年8月の接近時にも捉えられた現象です。
このような広範囲の電子の減少はディオネやテティスなどの衛星ではみられないものです。
一方、エンセラダスでは同様の電子の減少が捉えられており、これは南極地域から放出される粒子が電子を吸収していることを意味しています。
レアの周囲にも電子を吸収する物質が存在するようです。
実際、宇宙塵分析器(CDA)や電波・プラズマ波科学観測機器(RPWS)が塵を検出しました(下図A・B)。
観測結果からは大量のイオンが存在する証拠はないため、電子を吸収する物質は主に中性のガスや塵からなると考えられます。
2.レアを包む球状ハロー
エンセラダスでは南極から物質が放出されているため、電子の吸収は南極地域の近くでのみ起こります。
しかしレアの場合、電子の減少がみられる範囲は対称に広がっていました(上図B~D)。
半径約6000km(レア半径の約8倍)にわたるその範囲は、ちょうどレアの重力圏(Hill球、レア半径の約7.7倍)にあたります。
CDAとRPWSは、最接近点付近で急激に塵が増加していることを示し、微小隕石がレア表面に衝突して物質が放出されていると考えて矛盾しないことがわかりました(下図A・B)。
3.レア赤道面に塵円盤
ハローの存在だけでは、広範囲の電子の減少を説明することができません。
電子のデータからは、レアの赤道面近くに電子を吸収する物質が集まっていることが推測されました。
カッシーニ自体はレアの赤道面よりも南側を通過したため(上図A)直接検出することはできませんでした。
この円盤は1m以下の粒子からなると考えられます。
円盤内に存在すると思われる中性のガスは、土星の磁場の作用によって電離し、運ばれているはずです。
実際に、カッシーニはHill球に入る際にわずかな電子数密度の上昇を捉えています(上図F)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/26/6e0f2d0db29560fb386ea8934e6f25d7.jpg)
4.レアにリングが存在?
下図Bは、磁場撮像機器(MIMI)の低エネルギー磁気測定機器(LEMMS)が捉えた電子の流れです。
レア本体の影響による電子の減少の前後に、3回ずつ鋭い下降がみられます。
それぞれの幅は数秒間で、カッシーニが数十km移動した時間に相当します。
電子を吸収する物質が、そのくらいの幅で存在することが考えられます。
またこれらの下降は、最接近時を挟んでほぼ対称に起こっています。
その対称性から、電子を吸収する物質は、同心円状の3本のリング、もしくはアークを形成している可能性が高いと思われます。
ただし、実際にはリングが1本しか存在しないのに、干渉によって複数の信号が捉えられているという可能性もあります。
短い下降が検出された地点の直上にリングが存在するとした場合、3本のリングの半径はおよそ1610km、1800km、2020kmと推定されます(下図C)。
データを注意してみると、検出された下降は最接近時に対して完全に対称ではなく、わずかなずれがあります。
これは局所的な磁場の歪みによるのかもしれません。
一方、磁場の流れがリングの接線を通ったときにこのような下降が検出されるという可能性もあります。
この場合、リングの半径はより小さい推定になります(下図D)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/02/8a153fdb4d1eb99d1483569ee0a9dd3b.jpg)
5.リングはいつどのように形成されたのか?
シミュレーションによると、物体はレア周囲を長期間安定して回り続けることができるようです。
7000万年程前に天体衝突が起こり、飛び散った物質が回り続けている可能性もあります。
また、外側からやってきた小天体がレアに捕獲され、その後破壊されてその破片がリングを作っている可能性も考えられます。
また、惑星のリングの形成・維持には、羊飼い衛星などの衛星の重力が大きな役割を担っていることが知られています。
レアにもその周囲を回る未発見の微小衛星や物質の塊が存在し、その重力の影響によって細いリングもしくはアークが維持されている可能性もあります。
上はその想像図です(実際はあまりに希薄で肉眼では見えませんが…)。
円盤やリングをもつ衛星はこれまで知られていません。
その分析結果はアメリカの科学雑誌サイエンスに掲載されました。
今回はその内容を特集します!
1.レアの周りに広がる物質を発見
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/c0/8bd6d11a56183f56689bc7f037f622aa.jpg)
2005年11月26日、NASAの土星探査機カッシーニが土星の衛星レアの高度500kmを通過しました。
土星の周りには磁気流が存在しますが、カッシーニの経路はレアの下流を通っており(上図A)、ちょうどその陰を通ったときに電子の減少が捉えられます。
ところが、カッシーニはレアの大きさを超えて広い範囲で電子の減少を捉えました(上図B~D)。
これは2007年8月の接近時にも捉えられた現象です。
このような広範囲の電子の減少はディオネやテティスなどの衛星ではみられないものです。
一方、エンセラダスでは同様の電子の減少が捉えられており、これは南極地域から放出される粒子が電子を吸収していることを意味しています。
レアの周囲にも電子を吸収する物質が存在するようです。
実際、宇宙塵分析器(CDA)や電波・プラズマ波科学観測機器(RPWS)が塵を検出しました(下図A・B)。
観測結果からは大量のイオンが存在する証拠はないため、電子を吸収する物質は主に中性のガスや塵からなると考えられます。
2.レアを包む球状ハロー
エンセラダスでは南極から物質が放出されているため、電子の吸収は南極地域の近くでのみ起こります。
しかしレアの場合、電子の減少がみられる範囲は対称に広がっていました(上図B~D)。
半径約6000km(レア半径の約8倍)にわたるその範囲は、ちょうどレアの重力圏(Hill球、レア半径の約7.7倍)にあたります。
CDAとRPWSは、最接近点付近で急激に塵が増加していることを示し、微小隕石がレア表面に衝突して物質が放出されていると考えて矛盾しないことがわかりました(下図A・B)。
3.レア赤道面に塵円盤
ハローの存在だけでは、広範囲の電子の減少を説明することができません。
電子のデータからは、レアの赤道面近くに電子を吸収する物質が集まっていることが推測されました。
カッシーニ自体はレアの赤道面よりも南側を通過したため(上図A)直接検出することはできませんでした。
この円盤は1m以下の粒子からなると考えられます。
円盤内に存在すると思われる中性のガスは、土星の磁場の作用によって電離し、運ばれているはずです。
実際に、カッシーニはHill球に入る際にわずかな電子数密度の上昇を捉えています(上図F)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/26/6e0f2d0db29560fb386ea8934e6f25d7.jpg)
4.レアにリングが存在?
下図Bは、磁場撮像機器(MIMI)の低エネルギー磁気測定機器(LEMMS)が捉えた電子の流れです。
レア本体の影響による電子の減少の前後に、3回ずつ鋭い下降がみられます。
それぞれの幅は数秒間で、カッシーニが数十km移動した時間に相当します。
電子を吸収する物質が、そのくらいの幅で存在することが考えられます。
またこれらの下降は、最接近時を挟んでほぼ対称に起こっています。
その対称性から、電子を吸収する物質は、同心円状の3本のリング、もしくはアークを形成している可能性が高いと思われます。
ただし、実際にはリングが1本しか存在しないのに、干渉によって複数の信号が捉えられているという可能性もあります。
短い下降が検出された地点の直上にリングが存在するとした場合、3本のリングの半径はおよそ1610km、1800km、2020kmと推定されます(下図C)。
データを注意してみると、検出された下降は最接近時に対して完全に対称ではなく、わずかなずれがあります。
これは局所的な磁場の歪みによるのかもしれません。
一方、磁場の流れがリングの接線を通ったときにこのような下降が検出されるという可能性もあります。
この場合、リングの半径はより小さい推定になります(下図D)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/02/8a153fdb4d1eb99d1483569ee0a9dd3b.jpg)
5.リングはいつどのように形成されたのか?
シミュレーションによると、物体はレア周囲を長期間安定して回り続けることができるようです。
7000万年程前に天体衝突が起こり、飛び散った物質が回り続けている可能性もあります。
また、外側からやってきた小天体がレアに捕獲され、その後破壊されてその破片がリングを作っている可能性も考えられます。
また、惑星のリングの形成・維持には、羊飼い衛星などの衛星の重力が大きな役割を担っていることが知られています。
レアにもその周囲を回る未発見の微小衛星や物質の塊が存在し、その重力の影響によって細いリングもしくはアークが維持されている可能性もあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/33/0486230a5f361b3c0f8f10aca9e15d14.jpg)
とは言え、今回直接検出されたのはハローだけで、ディスクやリングは観測データを説明するための仮説に過ぎないので、色々な可能性を考えておく必要はありそうです。
いずれにしても、惑星の周りをリングや衛星が回っているだけの単純な系じゃなくて、物質のやり取りが活発に行われている複雑な系のようですね…