水無月の思い出
帰り道、黄色い長靴はいて
黄色い帽子に
黄色い傘。
なかなか、お家に着かない帰り道。
お風呂屋さんの角曲り
ようやく見えた裏路地の竹の垣根に
紫陽花がお帰りなさいと咲いている。
黄色い長靴立ち止まり、
黄色い帽子に
黄色い傘がしゃがみ込む。
葉影に止まった蝸牛、
息を潜めてみていると、
ゆっくり角が動き出す。
不思議な動きに見惚れていると
どこからか声がする。
誰かが呼んでいる声がする。
今では懐かしい声がする。
ようやく、後でその声が
聞こえてくるのが分かったらしい。
黄色い帽子と黄色い傘が
立ち上がって見た先は、
今では懐かしい顔がある。
笑顔で片手を差し出して、
お帰りなさいと声がした。
今では懐かしい声がした。
黄色い長靴、歩み寄り、
黄色い帽子と黄色い傘が
一緒に並んで帰って行った。