ココヨリトワニ

野球と文章書きに生きる男、空気王こと◆KuKioJYHKMのブログです。(人が死ぬ創作文があります、ご注意を)

ガーディアンアカデミー第1話 「入学式」(後編-b)

2010-01-22 23:59:04 | 二次創作
◇ ◇ ◇


「メラゾーマ!」
「わしがガーディアンアカデミー校長江田島平八である!」

オストラコンが紡いだ呪文が、巨大な火の玉を生み出し江田島を襲う。
だが江田島は力強く拳を振るい、その風圧で火の玉を四散させてしまった。

(ただの風圧で、火炎系究極呪文を相殺するとは……。これほどのレベルなのか、七英雄!)

対峙した相手の予想を上回る戦闘力に、オストラコンは思わず舌打ちを放つ。
一度で通用しないのなら二度、と次の攻撃に移ろうとした彼だが、そこへ横合いからの攻撃が飛んでくる。

「ライダーチョップ!」
「ぐっ!」

神速の手刀を、オストラコンはかろうじて回避。だが指先が頬をかすめ、激痛と共に血が噴き出す。

「どうした、先に仕掛けてきたのはそちらだろう? 一対多数だからといって、卑怯とは言わないよな?」

手刀を放った男は、静かな声でオストラコンにそう告げる。
その戦士は、バッタを模したような仮面を身につけていた。
否、それは仮面であり仮面ではない。それは、英雄のもう一つの顔。
本郷猛が「変身」した姿、「仮面ライダー」だ。

「ククク、さすがだ。さすがだな、江田島に本郷! 七人がかりとはいえ、ゾーマ様を破っただけのことはある!
 だからこそ、その首に価値がある! 貴様ら二人を討ち取れば、俺は魔王の称号をほぼ確実に手に入れられる!」
「ほざけ! わしの首も本郷の首も、貴様のような男に取られるほど安くはないわ!」

不敵に笑うオストラコンに、江田島が接近して蹴りを見舞う。
両腕を交差させてそれを防御するオストラコンだが、蹴りを受けた両腕は激しい衝撃と痛みに襲われた。

(ガードしてこれか……! つくづく魔物以上の化け物だな!)

心の中で悪態をつきつつ、オストラコンは後ろに飛んで距離を取る。

「メラミ! メラミ! メラミ!」

今度はメラゾーマよりランクを落とした、中級火炎呪文を連射するオストラコン。
だがそれも、江田島の鉄拳の前にことごとく弾かれる。

(数で押しても通用しないか! それなら……ぐおっ!)
「雷華崩拳!」

次の策に切り替えようとしたオストラコンの脇腹を、壮絶な痛みと電撃が襲う。
死角から一気に接近したネギの魔法拳が、彼に炸裂したのだ。

「この場にいるのは、英雄のお二人だけではないということを忘れてもらっては困りますね。
 ガーディアンアカデミーが誇る教師陣全てが、あなたの敵なのです」

ネギがそう言い放つのと前後して、教師たちがオストラコンを取り囲んでいた。
そのいずれもが、一騎当千の強者ばかり。もはやオストラコンに、勝利の可能性は残されていないかに見えた。
だが、彼の顔からは未だ余裕が消えてはいなかった。

「仕方ない……。切り札はもう少し後まで取っておきたかったが……。
 認めよう、貴様らは強い。だが、だからこそ地獄を見ることになる!」

意味深な言葉を呟くと、オストラコンは懐から何かの薬を取り出した。
そして、それをすぐさま飲み込む。その瞬間、彼の体から溢れる邪悪なオーラが一気にふくれあがった。

「くっ!」

放置すればこちらが不利になると判断し、追撃を放とうとするネギ。
だが彼が攻撃態勢に入る前に、オストラコンはネギの眼前にまで戻ってきていた。

(速さが……違う!)

次の瞬間、オストラコンの拳がネギを大きく吹き飛ばしていた。

「ネギ先生!」

思わず包囲網を解き、ネギに駆け寄る教師たち。その様子を見て、オストラコンの顔には歪んだ笑みが浮かぶ。

「見ろ! これが『善滅丸』の力だ! 魔界の薬師が調合したこの薬は、飲んだ者の力を数倍にまで跳ね上げる!
 副作用も決して小さくないが、それも些細なこと! この圧倒的な力なら、貴様ら全員を血祭りに上げてお釣りが来る!」

薬の作用もあってか、異様なまでに高揚した口ぶりでオストラコンは叫ぶ。
だが、彼の言葉を真っ向から否定する声がその場に響く。

「いや……そんなものは力じゃない」

声の主は仮面ライダー・本郷猛。彼はゆっくりとした足取りで、オストラコンに近づいていく。

「薬なんかに頼って手に入れた力なんか……本当の力とは言わないさ。
 努力して、血と汗を流して、自分の体に染みついた力こそが……本当の強さだ」
「ハーッハッハッハッハ! 片腹痛い! よりによって貴様がそれを言うか、本郷猛!
 力を得るために、自分の体を機械に置き換えたのは誰だ! 紛れもない貴様だろう!」
「たしかに……今の俺の体は、大部分が機械だ。だが、それは安易に力を得ようとした結果ではない。
 俺の力は、あくまで努力により鍛え上げたものだ」
「ぬかせ! しょせん貴様の力も、機械の体に頼ったものだろうがぁ!」

目を血走らせながら、オストラコンは本郷に殴りかかる。しかし、本郷はその一撃をたやすくかわして見せた。
さらに連撃を放つオストラコンだったが、その攻撃はことごとく本郷に回避されてしまう。

「なぜだ! スピードも充分すぎるほど上昇しているというのに! なぜ当たらない!」
「わからないのか……。それが労せずして手に入れた力と、体に染み付いた力との差だ」

静かに言い放つと、本郷はカウンターの蹴りを放つ。その一撃は、吸い込まれるようにしてオストラコンの腹に突き刺さった。

「好機か!」

オストラコンの動きが止まったのを見て、江田島が本郷に並ぶ。

「一気にいくぞ。合わせられるか、本郷!」
「誰に言っている」
「ふはは! そうであったな!」

短く言葉を交わすと、江田島と本郷は共に走り出す。
なんとか体勢を立て直したオストラコンだが、二人のあまりのスピードに何も反撃の策が打てない。

「わしがガーディアンアカデミー校長……」
「ライダー……」

二人は、何の合図もないというのに同時に拳を振り上げる。

「江田島平八である!」
「パンチ!」

そして、彼らの拳は同時にオストラコンの体に命中した。
二人が放ったのは、何の変哲のないただのパンチ。
だが、その破壊力は善滅丸で強化されたオストラコンの肉体ですらたやすく打ち壊す。

「がはあっ!!」

口から血をまき散らしながら、オストラコンは講堂の床を転がっていく。

(何だ、何だこの強さは……! 俺は魔将軍の地位を得られるほどの力を持っていたはずだ!
 それをさらに強化して……。なぜあんなごく普通の攻撃に屈する!!)

おのれが倒されたことに納得できず、心の中でわめき散らすオストラコン。
そこに、江田島が歩み寄る。

「貴様は……」

江田島が蹴る。オストラコンが吹き飛ぶ。


「貴様は……」

江田島が蹴る。オストラコンが吹き飛ぶ。

「七英雄を舐めた!!」

そして、脳天を叩き割るべく手刀が振り下ろされる。
だがオストラコンも、最後の力を振り絞ってその攻撃を回避する。
結果、江田島の手刀はオストラコンの脳天を叩き割りはしなかった。
その代わり、その一撃はオストラコンの右腕を肩もろとも胴体から切り離した。

「がああっ……!」
「ふむ、外したか。だが、今度こそ……」

悶絶するオストラコンを憮然とした表情で見下ろしながら、江田島は今一度右手を振り上げる。
だがその手が下ろされる前に、その場を異変が襲った。

「む! これは!」

江田島が見たのは、黒い球体。そう、オストラコンたちがこの場に乗りこんでくるときに発生した次元の歪みだ。
それが、今はオストラコンのすぐ後ろに出現しているのだ。

「悔しいが認めよう、人間の英雄たちよ。俺の力は、貴様らの足元にも及ばん。
 だが覚えていろ。俺はいつの日か貴様らを超える力を手に入れ、今日の雪辱を晴らす!」
「逃がすものか!」

この場でオストラコンの息の根を止めようと、江田島は改めて手刀を振り下ろす。
しかし、その一撃が届く前にオストラコンの体は黒い球体の中に消え去っていた。

「クックックック……。ハーッハッハッハッハ!!」

出現したときと同じ高笑いを残し、オストラコンは消え去った。

「逃がしてしまったか……。すまんな、本郷。せっかく総理たる貴様も戦ってくれたというのに」
「いや、謝る必要はない。追い払えただけでも上出来だ」

ばつが悪そうな表情で、すでに変身を解いた本郷に向かって言う江田島。
それに対し本郷は、穏やかな声で返す。
だがその声にわずかな悲しさが混じっていることに、江田島は気づいていた。

「あのようなゲスの言うことなど気にするな。貴様が安易な理由で肉体を機械に置き換えたのでないことは、わしがよく知っている」
「ああ、そうだな。ありがとう、江田島」

自分を気遣う江田島の言葉を受け、本郷は笑みを浮かべる。

「さて、それより新入生たちよ。戦況はどうなっておる」
「もう全滅させたみたいですね。いやあ、頼もしい連中ですわ」
「なるほど、さすがはわしが見込んだ精鋭たちといったところか」

ななこからの報告に、江田島はまさに「破顔」と言うべき笑顔を見せた。

「新入生諸君、ご苦労であった! これにて最初の授業を終了とする!」


続く

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