ココヨリトワニ

野球と文章書きに生きる男、空気王こと◆KuKioJYHKMのブログです。(人が死ぬ創作文があります、ご注意を)

ガーディアンアカデミー第1話 「入学式」(後編-a)

2010-01-23 00:01:43 | 二次創作
魔物の大群へと突入したハルヒと古泉。二人の周囲は、瞬く間に魔物で埋め尽くされた。
だが、二人の顔から余裕は消えていない。

「光栄に思いなさい。未来の勇者様の剣で倒されるんだから!」

強気な台詞を吐くと、ハルヒは剣を上段に構えて正面にいた魔物・グリズリーに斬りかかる。
刹那、彼女の剣は灼熱の炎に包まれた。

「涼宮流! アトミックファイヤーブレード!」

叫び声と共に、ハルヒは剣を振り下ろす。熊に酷似したグリズリーの巨体は見事に両断され、さらに炎の熱で消し炭と化した。

「まずは一匹……! ちょろいわね」

口元にかすかな笑みを浮かべ、ハルヒは呟く。
ちなみにこの技、正式名称を「火炎斬り」といい、剣術の心得があるものなら比較的容易に習得できるオーソドックスなものである。
つまり、涼宮流でもなんでもない。だがハルヒにとって、「自分の覚えた技は自分のもの」なのである。

「相変わらずですねえ、涼宮さんは。まあ、その方がこちらとしてもありがたいのですが」

ハルヒの行動を見て、古泉は苦笑を浮かべる。一見隙だらけの彼に向かって、猿型の魔物・キラーエイプが豪腕を振るう。
だが古泉は、その一撃をあっさりと回避。さらにカウンター気味に、手の平に溜めていたエネルギーを解放する。

「PKサンダー!!」

古泉の手から放たれたのは、青白く輝く電撃のボール。それは狙いを過たず、キラーエイプを捉える。
電撃を浴びたキラーエイプは全身を激しく痙攣させた後、ぱたりと倒れそのまま動かなくなった。

「さて……。次はどなたが相手になりますか?」

作り物めいた笑みを浮かべながら、古泉は周囲の魔物に向かって言い放った。


◇ ◇ ◇


「ヒャド」

長門有希の唱えた氷結呪文が、ポイズントードの腹部に命中する。
すかさず長門は距離を詰め、凍結した部分に拳を見舞ってポイズントードを粉砕する。
魔法と格闘を組み合わせて戦う、「魔法拳士」。それが長門の戦闘スタイルだ。

「な、長門さーん。魔力はまだ大丈夫ですか?」
「まだ問題ない。消耗が激しくなってきたら回復をよろしく」

長門の背後から、気の弱そうな少女……朝比奈みくるが声をかける。
彼女は、戦闘能力をほとんど持っていない。一見すると、場違いに思える存在だ。
だが、その考えは間違っている。
たしかに彼女は、直接戦うことはできない。だが、戦う仲間を支援する術に長けている。
ガーディアンに求められるのは、強さだけではない。
みくるのような後方支援要員も、実戦の場では必要とされるのだ。

「頑張ってください、長門さーん」
「…………」

みくるの声援を背に受けながら、長門は黙々と拳を振るい続けた。


◇ ◇ ◇


「はあっ!」

小野寺ユウスケの回し蹴りが、一つ目の巨人・サイクロプスの胸板を叩く。
だがサイクロプスはそれを意に介さず、手にした棍棒をユウスケ目がけ振り回した。
ユウスケはそれをギリギリで回避し、バックステップでいったん距離を取る。

「くっ、やっぱりこのままで戦うのは無謀か……」

悔しげに呟くユウスケ。そこに、もう一人の新入生が近づいてくる。

「よう、ご同輩。出し惜しみなんかせずに、変身したらどうだ?」
「ご同輩って……まさか君も?」
「ああ、同類はなんとなく雰囲気でわかるんだ」
「そうか。じゃあ、二人でいこうか」
「おう」

ユウスケともう一人の男……キョンは、横に並ぶと共に腰へ手を持っていく。
すると、その場所へそれぞれ違う形状のベルトが出現した。

『変身!!』

続けて、二人はおのおの定められたポーズを取りながら叫ぶ。
その直後、彼らの体を光が包んだ。光の中で、二人の姿は劇的に変化する。
ユウスケは、赤い複眼と黄金の角を持つ仮面の戦士に。
キョンはコウモリの羽根を思わせる、いびつな形状の仮面の戦士に。

七英雄・本郷猛の異名に倣い、この世界では彼らのように姿を変えて戦う戦士をこう呼ぶ。

「仮面ライダー」と。

「自己紹介がまだだったな。俺は小野寺ユウスケ。リントの戦士・仮面ライダークウガだ」
「俺はキョン。ファンガイアの戦士・仮面ライダーキバだ」
「それじゃあ、今日は君と俺で……」
「ダブルライダーといきますか!」

ファイティングポーズを取ると、二人の仮面ライダーは足並みを揃えてサイクロプスに向かって走り出した。


◇ ◇ ◇


「ローリングディフェンス!」

鳥形の魔物・ホークブリザードが吐く氷の息を、ジョウは鎖を回転させてはじき飛ばした。
彼が操る鎖は聖闘士の証、聖衣(クロス)の一部。そして聖衣は、絶対零度でなければ凍結させることはできない。
将軍クラスならともかく、一介の魔物程度が操る冷気でどうこうできる代物ではないのだ。
だが、たいした知性を持たぬホークブリザードがそんなことを理解できるはずもない。
かの魔物は、通用しない冷気をひたすらに吐き続ける。

「くそっ、これじゃこっちから攻撃できないじゃないか……。フラグビルドさん、大丈夫ですか!」

ジョウ一人ならば、聖衣を装着してしまえば冷気など恐れずに攻撃に転じられる。
しかし、他に人がいるとなれば話は別だ。
自分の後ろに隠れている少女の存在が、彼に防御に徹することを強いているのである。

(さて、どうしますかねえ……)

フラグビルドは考える。

(このままジョウさんに守られるお姫様を演じるのも悪くないですが……。
 まさかこれから三年間一緒にいるのに、正体を隠しっぱなしというわけにはいかないでしょうし。
 だったら今すぐ私の力を見せても同じ事ですか)

一つ深呼吸をすると、フラグビルドはジョウに声をかけた。

「ジョウさん、そのまま防御を続けていてください。私がアタッカーを引き受けます」
「えっ、でも!?」

フラグビルドの言葉に、ジョウは驚きの表情を浮かべる。
アカデミーに来るまでの道中で短くない時間を共にしたにもかかわらず、彼女の能力に関しては何も聞いていなかったからである。

「今、お見せします。私の力をね」

自信に満ちた表情を浮かべると、フラグビルドはパチンと指を鳴らす。
その瞬間、ホークブリザードの体は真っ二つに引き裂かれた。

「え……!?」

思わぬ事態に、ジョウはあっけに取られていた。上空にいる相手を、一瞬にして葬り去る。生半可な技ではないことは、深く考えずとも明らかだ。

「フラグビルドさん、君はいったい……」
「申し遅れました。我が師匠はBF国十傑衆の一人、素晴らしきヒィッツカラルド。
 私はその一番弟子にして、師の通り名と技を受け継いだ者。素晴らしきフラグビルドです」

自らの素性を告げると、フラグビルドはニッコリと笑う。
ジョウはその幼い笑顔に、なぜか背筋がぞくりとするのを感じていた。


◇ ◇ ◇


「そこ! そこ! そこおっ!」

セラス・ヴィクトリアの連射する銃が、近づく魔物達の頭部を次々と粉砕していく。
彼女が手にする銃は、主から餞別代わりに託された対魔物用拳銃「ジャッカル」。
かのゾーマとの戦いでも使用された、由緒正しい武器である。

「しかし、さすがジャッカル……。銃弾一発で魔物が死ぬんだからすごい威力よねえ……」

受け継いだ銃の凄まじい威力に、セラスは思わず呟く。
一瞬銃弾が止んだその隙を突いて、一体の魔物が彼女に向かって突進してきた。
ネズミ色の肌の悪鬼・スモールグールだ。
だが、それは無謀な突撃と言わざるを得ない。
セラスの戦闘スタイルは銃器使いだが、肉弾戦においても水準以上の強さを持っているのだ。
彼女に、格闘術の心得はない。だが、それでも彼女は強い。
それは純粋に、吸血鬼である彼女の筋力が異常だからだ。

「はっ!」

セラスは左手を伸ばし、スモールグールの口から飛び出した長い舌をつかむ。
そしてそれを、容赦なく引っ張った。舌は簡単にちぎれ、魔物の青い血液が周囲に飛び散る。

「よし、次!」

足下で悶え苦しむスモールグールには目もくれず、セラスはジャッカルを構え直した。


◇ ◇ ◇


一人の少女が、獣人と激しい肉弾戦を繰り広げている。
獣人は格闘パンサー。その名のとおり、格闘技を習得した豹の魔物だ。
それと拳を交える少女は、御庭つみき。小さな体に強大な力を秘めた武闘家である。

格闘パンサーが目にも止まらぬ速さで、パンチの連打を繰り出す。
だがつみきは冷静に敵の動きを見極め、全ての打撃をかわす。
焦りを募らせる格闘パンサー。その隙を突き、カウンターが一閃。
つみきの拳が、格闘パンサーの顎を砕いた。

「…………」

とりあえずの勝利に、安堵の溜め息を漏らすつみき。
だがその時、一本の矢が彼女目がけて飛んできた。

「危ない、つみき!」

どこからか飛んできた声に反応し、つみきは反射的に身を翻す。その肩を、矢がかすめていった。
その直後、彼女の背後から鉄串が飛んでくる。その串は、矢を撃った魔物・リリパットの喉を貫いた。

「つみき、大丈夫だったか?」

そういいながらつみきに駆け寄ってきたのは、鉄串を投げた張本人。
つみきのパートナーである青年、音無伊御である。

「大丈夫……。でもちょっと悔しい……」
「悔しい? なんでさ」

つみきから返ってきた答に、伊御は首をかしげた。

「伊御に助けてもらわなかったら、やられてたかも……」
「なんだ、そんなことか。気にするなよ。俺たちはチームだろ?」

ふくれっ面のつみきに対し、伊御は彼女の頭を撫でる。
つみきの頬が赤く染まっていることに、彼はまったく気づいていなかった。


◇ ◇ ◇


「メラ……」
「メラ……」

炎を操る怨霊・メラゴーストの唱える火炎呪文が、一人の新入生を襲う。
だが彼は、幾度となくその身に火の玉を受けても平然と断っていた。
その新入生の名は、アラシヤマ。眼前の魔物と同様に、炎を操ることができる青年だ。

「効きまへんなあ、そないなちゃちな炎」

余裕すら感じられる口調で言い放つと、アラシヤマは両手をメラゴーストたちに向けてかざす。

「炎を使うなら、せめてこれぐらいはできまへんとなあ。平等院鳳凰堂・極楽鳥の舞い!」

叫ぶと同時に、アラシヤマの手から巨大な鳥をかたどった炎が吹き出した。
火の鳥は瞬く間に、メラゴーストたちを飲み込んでいく。
そして炎が消えたとき、哀れな怨霊たちの姿はどこにもなかった。

「堪忍な……。成仏しておくれやす」

勝利の喜びなど微塵も見せず、暗い表情でアラシヤマは呟いた。


◇ ◇ ◇


赤と白の二色に塗られたボールが乱れ飛び、それに当たった魔物はボールの中に吸い込まれていく。
ボールを投げているのはCLAMP国の王子にして希代の頭脳を持つ天才・妹之山残。
そして投げているのは、彼自身が開発した魔物捕獲装置・モンスターボールである。

「何も暴力だけが魔物に勝利する手段ではない。これぞ科学の勝利!」

次々とボールの中に収まっていく魔物達を見ながら、残は自信に満ちた笑みを浮かべる。
だが、その笑みはすぐに消え去った。ボールの投擲をかいくぐり、二体の魔物が残に向かって突き進んできたのである。
翼竜・プテラノドンが上から、山羊のような顔を持つ悪魔・メッサーラが正面から残に迫る。
だが残は、笑みこそ消したものの決してうろたえたりはしない。
なぜなら、彼には絶対の信頼を置く仲間がいるのだから。

残の脳天に狙いを定め、降下を始めようとするプテラノドン。だがその瞬間、彼の両の翼が切り落とされる。
そしてその事実を認識する前に、プテラノドンの眉間にはクナイが突き刺された。

「相変わらず見事な腕前だな、蘇芳」
「お褒めの言葉はありがたく受け取っておきますが、もうちょっと気を引き締めてください、王子。
 ここはすでに、命のやりとりをする場になっているのですから」

プテラノドンをしとめた張本人に対し、残は賛辞の言葉を贈る。
それを受け取りつつ忠告を返すのは、鷹村蘇芳。
残の護衛役として共にアカデミーに入学した、忍者の少年だ。

「ああ、少し油断が過ぎたかも知れないな。心に留めておこう。
 そういえば、もう一匹の魔物は……」
「はい、取り押さえましたー」

残の耳に、前方から無邪気な声が届く。そちらに視線をやれば、もう一人の護衛である伊集院玲がメッサーラの巨体を地に倒している。

「うむ、やはり持つべきものは頼れる仲間だな!」
「ですから、気を緩めないでください……」

満面の笑みを浮かべる残の傍らで、蘇芳は顔をしかめつつ溜め息を漏らした。


◇ ◇ ◇


明神弥彦は、憤慨していた。
彼が相手している魔物の名は、骸骨剣士。その名のとおり、死して白骨化した剣士に邪悪な魂を吹き込んで生み出された魔物だ。
弥彦の流派は、「活人剣」を掲げる神谷活心流である。
常々命の重さを叩き込まれてきた彼にとって、死者を歪んだ形で再生させたアンデッド系の魔物は死者への冒涜としか思えないのだ。

「今……解放してやるからな」

沈痛な面持ちで呟くと、弥彦は一気に間合いを詰めるべく走り出した。
それに合わせて、骸骨剣士は手にした剣を振り下ろす。だがそれは、弥彦の予測範囲内の行動だ。

「神谷活心流奥義、刃止め!」

叫ぶと同時に、弥彦は両腕を頭上で交差させる。そして、手の甲で相手の剣を挟み込んだ。

「刃渡り!」

さらに弥彦は、敵の刃を封じたまま前進。手にした刀の柄を、骸骨剣士の頭部に思い切り叩きつける。
一撃を加えられた頭蓋骨は瞬く間にヒビが入り、粉々に砕け散った。
それと同時に、首から下を構成していた骨も結合力を失い四散する。

「…………」

ただの白骨死体と化した魔物に、弥彦は切なげな視線を送る。
だがすぐに気を取り直すと、刀を構え直した。

「さあ、次にやられてえのはどいつだ!」


◇ ◇ ◇


武闘家のチェック・メイトは、すでに数多くの魔物を撃破していた。
しかしそれでも、魔物の勢いは止まらない。また新たな魔物が一匹、彼に襲いかかる。
牛と鳥の合成獣、あばれ牛鳥である。

「獣には獣……といったところですかね」

誰に言うでもなく呟くと、チェックは自分の肩に備わったスイッチを押した。
すると、驚くべき変化が彼の体に表れる。
チェックの肩に乗っていた馬の頭を模した飾りが、彼本来の頭部と入れ替わったのである。
同時に、その下半身も馬のそれへと変化している。

「ケンタウロスの黒い嘶きーっ!!」

技の名前を宣言すると同時に、チェックは馬の前脚で猛烈な蹴りの連射を放つ。
それをまともにくらったあばれ牛鳥は他の魔物を巻き込みながら吹き飛び、そのまま動かなくなった。
だが、それでもまだ彼を狙う魔物は残っていた。アークマージや悪魔神官といった呪文を使う魔物達が、遠距離からチェックを攻撃してくる。

(これは困りましたね……)

チェックは、内心で愚痴をこぼす。彼は純粋なる接近戦のスペシャリスト。
ゆえに遠距離からの攻撃に対して反撃の術を持たないのである。
どうしたものかとチェックが考え始めたその時、彼の頭上から活力に満ちた声が響いた。

「起風!」

その叫びと共に、室内だというのに強風が吹き荒れる。その風は、チェックの周辺にいた魔物達を吹き飛ばしていった。

「発雷!」

上空の声は、新たな言葉を紡ぐ。すると今度は、落雷が魔物達を襲う。
あっという間に、チェックを取り囲んでいた魔物は壊滅させられていた。

「よう、大丈夫か?」

未だ状況が飲み込めずにいるチェックの前に、声の主が降りてくる。
それは漆黒の翼を背中から生やした、褐色の肌の少年だった。

「ええ、大丈夫です。助太刀、感謝しますよ。私はチェック・メイトという者です。
 よければ、あなたのお名前も聞かせていただけませんか?」
「俺か? 俺は雷震子だ!」

素直に自分の名前を告げると、雷震子はまじまじとチェックを見つめる。

「あの……何か?」
「お前、ひょっとして妖怪仙人か?」
「!!」

雷震子の発言に、チェックは身をこわばらせる。
妖怪仙人とは、物体が気の遠くなるような長い間、月の光を浴び続けることによって生命体と化した存在だ。
そして一部では、魔物に近しい存在として差別の対象とされている。チェック自身も、過去にいわれのない迫害を受けたことがあった。
ゆえに彼は、自分を妖怪仙人だと見抜いた雷震子を警戒する。
だが次に雷震子が発した言葉は、チェックの予想とはまったく異なるものであった。

「そっかそっか、よろしくなー、チェック」
「え?」
「なんだよ、そんな驚いて。俺、なんか変なことしたか?」
「あなたは私が妖怪仙人だと知って……何も思わないのですか?」
「なんだよ、そんなことか」

チェックの問いかけに対し、雷震子はつまらなそうに溜め息を漏らす。

「俺は崑崙山の道士だぜ? 妖怪仙人なんか見慣れてるんだ。今更ギャーギャー騒ぎたてねえっての」
「そうだったのですか……」

こぼれるように呟くチェック。その声には、かすかに明るさがにじんでいた。

「さあ、おしゃべりはここまでだ! さっさと残った敵を片づけようぜ!」
「わかりました!」

再び天井すれすれまで浮上し、飛び立つ雷震子。チェックも、迷わずその後を追った。


◇ ◇ ◇


「やあっ!」

白刃がきらめき、魔物の体を切り裂く。胸を深々と斬りつけられた猿に似た悪魔・シルバーデビルは、床に崩れ落ち息絶えた。

「はあ、はあ……」

おのれの身長に匹敵するほどの長大さを誇る刀を構え、少女は荒い息を吐く。
彼女の名は、犬塚信乃。先祖代々続く由緒正しい「侍」の一族である。

「くそっ、斬っても斬っても……!」

顔を滑り落ちる汗を拭いながら、信乃は愚痴を漏らす。
そこへ、さらに魔物が襲いかかってきた。先程倒したのとは別個体のシルバーデビルだ。

(しまった、気を抜きすぎたか! 反応が間に合わない!)

シルバーデビルは、敏捷性が売りの魔物である。フルスピードで接近してくる悪魔に対し、信乃の防御は間に合わない。彼女は、直撃を覚悟する。
だがシルバーデビルの爪が信乃の柔肌を切り裂く直前、その頭蓋を一本の槍が貫通した。

「え?」

突如出現した文字通りの横槍に、信乃は目を白黒させる。
そんな彼女の反応をよそに、槍を放った張本人は悠然と槍を引き抜き、信乃に語りかける。

「刀々斎の作、破邪の大剣・村雨か……。良い刀を持っているな」
「あ、ああ、うちの家宝だ。それより、助けてくれてありがとう」
「何、気にすることはない」

礼を言う信乃に対し、槍使いの青年は謙虚な言葉を口にする。
その態度に好感を抱く信乃だったが、その感情は次の瞬間あっけなく砕け散った。

「これから君は、俺のパートナーになるんだからな。助けるのは当然だろう」
「は?」

唐突な発言に、信乃はその端整な顔立ちを崩してしまう。

「いや、いきなりパートナーとか言われても……。どういうことだ?」
「俺の槍、雪篠も刀々斎の作品! 同じ刀匠の作を持った二人の侍が、ここで出会う!
 これはまさに運命だと思わないか?」
「いや、思わないんだけど……」
「間違いない! 俺と君はここでコンビを組む運命にあったんだ!」
「人の話を聞けー!」

声を張り上げて抗議する信乃だが、相手は聞いてくれはしない。

「おっと、まだ名乗っていなかったな。俺は荘助! 犬川荘助だ! さあ、共に戦おう、相棒!」
「いや、ちょっと待て。だから人の話を……って、おい! やめ……うわああああ!!」

悲鳴を上げる信乃を強引に引きずり、荘助は魔物の中に突撃していった。



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