再びドウス昌代氏の本。
「ハワイに翔けた女」と並ぶ、日系移民をテーマにしたドウス昌代氏の
力作です。「ハワイに翔けた女」はハワイ島の女請負師・岩崎田鶴子の
人生に焦点を当てた作品ですが、この本は同時代に生きた日本人移民達
の通訳坂巻銃三郎の命を狙ったダイナマイト爆破事件という生々しい
事件から幕を開けます。
当時の中国人ハワイ移民や、その後に続く日本人、フィッリッピン人など
の移民と耐え難い労働や安い賃金から自然発生した移民たちのストライキ
に焦点を当てて書かれています。それに絡む米国の思惑や経済背景にも
ぴたっと焦点を合わせ、妥協を許さない、かつキメの細かい表現能力を持つ
作者に改めて感心させられます。
例によって丹念で精密な文章で構成されています。微細なこともひとつひとつ
裏付けを取りながら調査をしたことをうかがわせるもので、必要ならば米国
政府に情報公開まで迫るその取材魂は、作者のストイックなまでの真実を
追求する姿を読む方に強く印象付けます。
明治から始まった日本人によるハワイへの移民、その時代の世界情勢や
戦前までの日系移民たちを巡る日米政府の見解、移民たちの実際の生活、
さまざまなトラブル。そして発展していく日本人街。蓄積した鬱憤からストに
入るフィリッピン人労働者やそれに続く日本人労働者。そしてついにダイナ
マイト爆破事件へと発展して行きます。
日本政府はハワイ移民に対してはあまり関心を示さず、これは現在でも
その傾向がありますが、一方米国政府は当時まだアメリカの正式な州にも
なっていないハワイの情勢に早くから関心を持ち情報を収集しておりました。
これがそのまま移民の戦後史へと繋がって行きます。
黒い点が砂糖耕地。上の島オアフ島、□のところがストライキのあった地域。
やがてせまってくる戦争の足音、真珠湾攻撃に始まる日米交戦。日本人
の子でありながら米国のために参戦する二世たち。
ハワイの日系移民の歴史をテーマとする本の中では、恐らく群を抜いて
秀でていると思われるドウス昌代氏の代表作です。
処分されたはずの裁判記録が収集好きの大学の米国人教授によって
運良く保存されていたが、1920年代のものでゴミ同然。それもまた捨て
られる寸前だったものを作者が見つけ出したエピソードがあとがきとして
書かれている。この資料無くしては、この本は成り立たなかったはずで、
どこまでも事実を追い詰めようとする作者の執念を感じさせるものがあり
ます。
あるはずのない資料。会うことがないであろう大学の教授。収集家である
という、聞かなければ知らないで終わったはずの事実。これらの偶然が
はからずも重なり、作品の成就への道を示していく。ひとつひとつ、紐を
解いて、忘れられた歴史を明らかにしようとする気の遠くなる努力には頭
が下がります。
日系ハワイ移民の歴史を知る上で読み応えのある本です。
「ハワイに翔けた女」と並ぶ、日系移民をテーマにしたドウス昌代氏の
力作です。「ハワイに翔けた女」はハワイ島の女請負師・岩崎田鶴子の
人生に焦点を当てた作品ですが、この本は同時代に生きた日本人移民達
の通訳坂巻銃三郎の命を狙ったダイナマイト爆破事件という生々しい
事件から幕を開けます。
当時の中国人ハワイ移民や、その後に続く日本人、フィッリッピン人など
の移民と耐え難い労働や安い賃金から自然発生した移民たちのストライキ
に焦点を当てて書かれています。それに絡む米国の思惑や経済背景にも
ぴたっと焦点を合わせ、妥協を許さない、かつキメの細かい表現能力を持つ
作者に改めて感心させられます。
例によって丹念で精密な文章で構成されています。微細なこともひとつひとつ
裏付けを取りながら調査をしたことをうかがわせるもので、必要ならば米国
政府に情報公開まで迫るその取材魂は、作者のストイックなまでの真実を
追求する姿を読む方に強く印象付けます。
明治から始まった日本人によるハワイへの移民、その時代の世界情勢や
戦前までの日系移民たちを巡る日米政府の見解、移民たちの実際の生活、
さまざまなトラブル。そして発展していく日本人街。蓄積した鬱憤からストに
入るフィリッピン人労働者やそれに続く日本人労働者。そしてついにダイナ
マイト爆破事件へと発展して行きます。
日本政府はハワイ移民に対してはあまり関心を示さず、これは現在でも
その傾向がありますが、一方米国政府は当時まだアメリカの正式な州にも
なっていないハワイの情勢に早くから関心を持ち情報を収集しておりました。
これがそのまま移民の戦後史へと繋がって行きます。
黒い点が砂糖耕地。上の島オアフ島、□のところがストライキのあった地域。
やがてせまってくる戦争の足音、真珠湾攻撃に始まる日米交戦。日本人
の子でありながら米国のために参戦する二世たち。
ハワイの日系移民の歴史をテーマとする本の中では、恐らく群を抜いて
秀でていると思われるドウス昌代氏の代表作です。
処分されたはずの裁判記録が収集好きの大学の米国人教授によって
運良く保存されていたが、1920年代のものでゴミ同然。それもまた捨て
られる寸前だったものを作者が見つけ出したエピソードがあとがきとして
書かれている。この資料無くしては、この本は成り立たなかったはずで、
どこまでも事実を追い詰めようとする作者の執念を感じさせるものがあり
ます。
あるはずのない資料。会うことがないであろう大学の教授。収集家である
という、聞かなければ知らないで終わったはずの事実。これらの偶然が
はからずも重なり、作品の成就への道を示していく。ひとつひとつ、紐を
解いて、忘れられた歴史を明らかにしようとする気の遠くなる努力には頭
が下がります。
日系ハワイ移民の歴史を知る上で読み応えのある本です。
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