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北岳・間ノ岳間の尾根道
バケットリストにも挙げていた白根三山縦走を実現した。
娘夫婦に同行させてもらう積りでいたが、彼らが行けなくなったので独りでと考えていた。
しかし、単独行は家人の反対が強かった。
そこで、ツアーを物色しクラブツーリズムに申し込んだ。
新宿発のツアーだが登山口の広河原で合流する。
車で自宅から下山口の奈良田温泉まで行き、バスに乗り換え広河原。
広河原には10時前に着いたが、本体の到着は大幅に遅れ午後2時を回った。
新たに制定された山の日から始まるお盆連休では仕方ないことだ。
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広河原のインフォメーションセンター。
昨夏の仙丈ケ岳行きもここから北沢峠まで入った。
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御池小屋のテント場から北岳の一部が覗いている。
白根御池小屋には5時前の到着。
たった3時間の登りだったが、久しぶりの登山で足が疲れた。
ここ数日酷暑の中、暑気払いのアルコールが体内に残留していたせいか異常に大汗をかいた。
総勢はガイド1、添乗1を含め女性13、男性9人の22人。
平均年齢は55歳辺りか。
山小屋では男性だけで1部屋当てがわれた。
中にいびきの大きな人が2人ばかりいて、その競演に悩まされ殆ど眠った気分になれなかった。
肩の小屋で弁当を食べ、11時前に北岳山頂。
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3,193メートルは日本第二の標高。
頂上直下の急登は堪えた。
だが達成感は一入だ。
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第2峰から第1峰富士山を望む。
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去年登った仙丈ケ岳の全容が見渡せる。
いよいよ長年憧れていた稜線歩きに入る。
北岳から間ノ岳を経由して農鳥岳に至る稜線ルートは3千メートル級の日本一の長さになるそうだ。
この晩は山頂から少し下って北岳山荘に泊まる。
客は溢れるほどで、1枚の布団に3人だと申し渡された。
上向きに寝ることが出来ない。
しかし、夕食後、予備であったらしい屋根裏のスペースが空いているのを見付け、急いでもぐり込んだ。
いびきも気にならず、清々眠ることができた。
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日の出を拝む。
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3,190メートル間ノ岳山頂。
間ノ岳は子供のころから大井川の源流となる山だと聞かされてきた。
頂上から見回すと、多くの谷を作っている大きな山体だ。
深田久弥も『日本百名山』の中で、その図体の大きいことは日本アルプス第一だろうと云っている。
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次に向かう農鳥岳の右横に塩見岳が望まれる。間には荒川三山も。
農鳥岳との鞍部に位置する農鳥小屋で弁当を食べる。
農鳥岳(3,026)より西農岳(3,051)の方が高い。
農鳥を極めると、これでメインは終わったと思った。
大門沢小屋までは下りで、コースタイムは3時間半、遅くとも4時までには着くだろうとたかを括った。
これが大間違いだった。
急なゴロタ石の下り坂や崩れかけた傾斜道で難儀させられた。
途中で故障者も出て、大いに時間を食った。
小屋に着いたのは5時だった。
全行程12時間を要した。
今回一番ハードな道行だった。
自身も最後は膝がもつのか心配になってきた。
粗末な夕食の後一杯飲んですぐに横になった。
ひと眠りして、外が騒がしいので目を覚ます。
消灯時間の8時を越えているのに明りが灯っている。
9時近く、消灯に来た従業員が云うことには、我々の後ろを下山してきた人が滑落してけがをした。
それをグループで担ぎ下ろしてきたとのこと。
幸い意識は回復したが病院搬送は夜が明けてからだ。
けが人は韓国の女性、小屋には韓国の客が多く、数グループで40人近く泊まっているらしい。
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翌朝夜明けに到着した救急のヘリコプター、隊員を下ろし収容の準備に入った。
翌朝、収容作業を横目に見ながら下山を開始。
コースタイムでは4時間弱だが、厳しい下りが続くようだ。
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手入れの悪い橋。
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壊れかけた桟道。
南アルプスは北に比べまだ入山者が少ないので設備のメンテナンスが十分ではないようだ。
登山を快適にする梯子や橋、ロープなどの設備も貧弱だ。
登山道の整備も不十分だとガイドが云っている。
しかし、本来の自然な山を楽しもうと思ったら不満を言うべきではないのかもしれない。
最終日の下りも急坂の連続で始まった。
回復した脚がまた心配になる。
幸い、後半はなだらかな道になり、ほぼコースタイムで下山口に着くことができた。
奈良田温泉で疲れを取り、昼食を済ませ、グループを離れた。
途中何度か心配になる場面もあったが、もし単独行だったら無理をして故障の原因になるようなこともあったかもしれない。
長年の懸案を片付けることができた。
更に欲も出てきたが。