裏庭でひっそりとシュウメイギクが咲いていた。
もう季節は秋が近いようだ。
一昨日は整形外科クリニックの受診の日だった。
8月5日の骨折から3週間。
いつの間にか上手に使いこなせるようになった
相棒の松葉杖をつきつき
もうそろそろギプスが外してもらえるかな…?と
心ひそかに期待しながら出かけたのだが…。
レントゲン撮影の後、名前を呼ばれて診察室に入ると
私に写真を見せながら担当医がこう言った。
「だいぶ良くなってますよ。あと2週間ですねぇ~。」
「ということは、ギプスはまだ…?」
「はい、もうしばらくこのままでいきましょう!」と
明るくキッパリと言われてしまった。(笑)
私の期待はもろくも打ち砕かれてしまい
無情にも再び奈落の底へと突き落された気がした。
やれやれ、あと2週間もこんな生活が続くのか…。
箸も使えず、字も書けず、ペットボトルの蓋も開けられない。
入浴時にはギプスが濡れないようにポリ袋でカバーして
不自由な手で体や髪の毛を洗わなければならない。
ゴムで髪を結あえることさえ一苦労なのだ。
もちろん山庭を歩くことも、草取りをすることも
トマトやきゅうりの収穫もできない。
ましてや趣味の手仕事なんか夢のまた夢だ。
日常生活がままならないうえに
ささやかな楽しみさえも奪われてしまった。
こんな不自由な暮らしがこの先まだ2週間も続くなんて…。
私は鬱々とした気持ちで病院を後にした。
迎えに来てくれた夫の車の助手席に乗って…。
山荘に帰るとすぐ、いつもの習慣でテレビをつけた。
特に何を観たいというわけではなかったが
画面はパラリンピックを映していた。
骨折して以来、夫に面倒を見てもらいながら
3食昼寝付きの山荘でのんびりと過ごしている私にとって
できることと言えば、テレビを観ることぐらい。
ちょうど私のケガとオリンピックの時期が重なったので
おかげでそれほど退屈しないで済んでいた。
そしてオリンピックが終わり、今はパラリンピック。
テレビの画面に映し出されるパラアスリートたち。
様々なハンディを抱えながらも
それをものともせず懸命に競技に取り組む姿には
観ている私たちが胸を打たれる。
彼らを見ていると、こんな骨折ぐらいで
落ち込んでいる自分がとてもちっぽけに思えてきて
何だか恥ずかしくなってくる。(笑)
自分がこんなことになって初めて
思い通りに体を動かせない不自由さや不便さを知り
「あれもできない。これもできない。」と
できなくなったことをひたすら嘆くばかりの私。
でも彼らはそうじゃない。
できないことじゃなく、できることを探した。
「あれはできる。こうすればできる。」と
自分にある能力を見つけ、信じて伸ばしていった。
その結果がパラリンピアンなのだ。
ハンディを乗り越えてここまで来るために積み重ねた
彼らの努力や葛藤を思うと頭が下がる。
右手右足が自由に動かせないというだけでも
私はこんなに大変な思いをしているのに…彼らはどうだ。
テレビに映し出されるどの顔も明るく輝き
誰もがとびっきりの笑顔を見せている。
いやあ~、参った、参った。(笑)
私もこんなふうにありたいものだ。
私の辛抱は、ギプスが外れるまでのあと2週間。
幸か不幸か、緊急事態宣言が発令されたので
その間は各種習い事も休講だ。
こうなりゃ、心置きなくテレビの前で
パラリンピックを観て元気と勇気をもらうとしますか…(笑)