limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

New Mr DB ⑩

2018年12月21日 12時18分23秒 | 日記
ベトナム工場の正門前には、連日、近隣住民が押し寄せていた。口々に「“異臭”を流すな!」と叫んでいた。「またか、これで何日目だ?」事業所長はあきれ果てて問うた。「もう、2週間になります。排気ダクトからの“異臭”の流出を止めなくては、騒ぎが拡大していく一方です」「本社は何と言って来た?」「地下空間と付随するエアコンを消毒しろと言ってます。DBに与える水にもアルコールを微量混ぜろとの事です」「うーん、そろそろ2ヶ月になる。いい加減手を付けなくては無理か?」「はい、何らかの手を打たなくては騒ぎを治めるのは難しいかと」「仕方あるまい。クレゾールはあるか?」「はい、ストックはあります」「では、DBに睡眠薬を投与して、地下空間の除菌・消臭作業を実施しよう!」「では、早速手配にかかります!」事業所長はため息を付きながら「“養豚場”の掃除か・・・、おっと、豚に対して失礼千万だな!食用蛙・・・、やはり礼を欠くな・・・、例えが見つからん!ともかく“臭い囚人”を洗い清めなくては!」手のかかる作業を前に、彼の機嫌は悪かった。

「ふふふふふ、やったぞ!U事務所は壊滅した!蛍光管の破裂を見たか!これで“二の丸”は落ちた。後は、“本丸”を落とせば、ミスターJの組織は壊滅的大打撃を受けて、何の手出しも出来なくなる!さて、横浜へ向かうぞ!」“AD事務所”の社長は上機嫌だった。「社長、1つ問題があります」サイバー部隊員が重い口を開いた。「何だ?」「撹乱波発生器の蓄電量を2割温存しましたが、横浜へ着くまでにフル充電出来る手立てがありません。予備のバッテリーを使っても、出力は7割出せるかどうか分かりません」「電源が他に無いのか?」「ええ、大破したベンツには予備の発電機がありました。社長の車には改造が施されていません。このままでは、電力不足です」「うーん、確かにそう言われればそれまでだが、“節電”をしなくてはならんと言う事か?」「はい、エアコンやノートPC、その他電子機器を一旦切って、電力を回さないと充電できませんし、肝心の攻撃が不発に終わる恐れがあります」「最善の手は何だ?」「事務所に戻って充電する事です」「だが、そんな時間は無いぞ!他には?」「“節電”しながら高速走行をする事ですね。エンジンをぶん回せば、発電機の発電量も増えます。少しでも電力を増やすにはそれしかありません」「うぬー!横浜へ直行出来ないではないか!ガソリンも補充しなくてはならん!大体、何時間かかる見込みだ?」「おおよそ、4時間程度は走らなくてはなりません」「4時間だと?!うぬぬぬー!俺の見込みが甘かった!止むを得ん。ガソリンを補充したら、都心環状線を周回するしかあるまい!時間稼ぎをして蓄電量を増やすぞ!最低限必要な機器以外は電源を落とせ!それと、事務所を呼び出せ!」「はっ!」携帯で事務所を呼ぶと「俺だ。システムはどうなっいている?」とサイバー部隊長に誰何する。「1台だけですが、復活に成功しました。ネットワークからは切り離して“ゲーム”をクリアさせました。サーバーは完全に“ゲーム”に乗っ取られている模様ですので、隔離して外部からも切り離しました。これから、1台づつ“ゲーム”をクリアさせて元に戻します!」「気が遠くなる話だな。“ゲーム”のクリア方法が見つかったのか?」「ええ、散々手こずりましたが、方法は分かりました。無線LANのルーターも初期化しましたので、タブレットからも“ゲーム”を駆逐していきます」「徹夜で復旧させられそうか?」「はっきりとは申し上げられません。ですが、通常業務に支障が出ない様には戻せると思います」「よし!出来る範囲で何とかしろ!お蔵入りにした旧サーバーに繋げば業務は行える。正し、外部との接続はするな!またしても“乗っ取り”に逢ったら今度こそアウトだ。我々は、“本丸”の攻撃に移る!そちらは任せるぞ!」「はっ!」携帯を切った“AD”の社長は、スタンドへ乗り付けた。ガソリンを満タンにするためだ。「今現在の蓄電量は分かるか?」「30%前後です」「予備バッテリを繋いでも35%か!やはり、周回走行をするしかあるまい。今の内に食料も調達して置くか。コンビニにも寄るぞ!」ベンツはコンビニへも滑り込んだ。そして銀座から首都高へ入った。「都心環状線を周回する!」ベンツは出来る限りのスピードを維持して走り出した。追跡している“機動部隊”の一群も離されまいと速度を上げた。「“機動部隊”よりミスターJへ、ベンツは都心環状線に乗り入れました。理由は不明です。距離を保って追跡を続行します!」相変わらず追尾には気付いていなかった。

「ダメだ!頑固すぎる。この汚れは!」便器に付着した汚れは尋常ではなかった。「希塩酸を降ろす。とにかく“異臭の素”は根こそぎ拭い去れ!」ノイズ交じりの声が響く。「クレゾールもお願いします!床も汚れだらけで、とても足りません!」地下空間で“清掃作業”に当たった作業員達はみな悲鳴を上げた。防毒マスクが無ければ、とっくの昔に窒息死していただろう。DBの“高級リゾート”は、想像以上に臭かった。睡眠薬で眠らされたDBを拭き上げている作業員からも「ガーゼが直ぐに黒くなるぜ!尋常な汚さじゃない!」「ボロボロのトランクスは、持ち出せないな!レーザーで処分してもらおう!それにしても相当に臭いし汚いな。親父臭と入り混じって異様な悪臭がでる訳だ!」とグチがボロボロと出ていた。だが、エアコンを担当した者はもっと悲惨な現実に立ち向かっていた。「なんじゃこりゃ?!赤黒い膜が全て汚れなのか?スチーム洗浄機で落とせる代物とは思えん!」「だが、これを取り除かなきゃ悪臭を駆逐した事にはならんぞ!とにかく慎重に作業を進めよう!」彼らは油ギトギトよりも酷い汚れの洗浄に取り組んだ。「どうだ?順調かね?」事業所長がモニター画面に見入って尋ねた。「いえ、かなり手こずってます!予想外に汚れが落ちない模様です」「希塩酸にクレゾールにアルコール、高温スチーム。それでも難しいのか?」「レンジの油汚れより酷いそうです。各所で薬品の追加使用を求められています!」「クソ!人体の汚れがこれ程酷いとは思わなかった!DBは獣なのか?」「使う水に原因がありました。石鹸の使用を認めないと、悪臭は繰り返す恐れがありますね」「いや、逆だろう。石鹸など使わせたら、より悪臭が湧くだろう!エアコン内部の噴霧口からアルコールを撒けるように細工をして置け!そっちの方がより現実的だ」「はい、エアコン担当に伝えます」「クスリが切れる前に完了させるには、骨が折れるだろうが何とか片付けろ!後、3~4時間が限度だ!」「分かっています。廃棄物の処理も含めて3時間以内に終わらせます」「難しいのは、分かるが時間は限られている。何とか頑張ってくれ!」事業所長は唇を噛みながらモニター室を出た。「豚舎よりも不潔とは・・・、本社に追加予算を請求しなけりゃならんな!」苦虫を噛み潰したように呟くと、本社へ送信するFAXの原稿を書き始めた。

「“機動部隊”よりミスターJへ、ベンツは都心環状線に乗り入れました。理由は不明です。距離を保って追跡を続行します!」“司令部”に大隊長の声が響いた。「用心してかかれ!周回を続ける可能性がある。動きがあれば直ぐに通報しろ!」ミスターJはすかさず指示を伝えた。「Nよ、どうやら推測は当りの様だな。向こうは蓄電量を増やすために動き出した。だが、我慢がいつまで続くかな?」「焦ってくれれば、充分に勝機はあります。ルーレット族にも邪魔されれば、癇癪を起して向かって来る可能性は高いですね」「シールドの状態は?」「多少の拡張をして見ました。向こうの撹乱波が予測より弱まるとすれば、U事務所よりダメージは少なくなるでしょう。しかし、念のためシステムのシャットダウンは必須です」「それは止むを得ん。後は、向こうの動き次第だ!」「ミスターJ、U事務所からメールです。被害状況とT女史からの報告です」リーダーがペーパーを差し出す。「Y副社長との会談は無事に終了。“音声記録”に大満足された様だ。これでこちらの思惑通りに事後処理が出来る。被害は大したことは無い様だ。シールドでの防御が効いたな。レーザープリンターが1台“おしゃか”になっただけで済んだとある。念のため、しばらくは表立った活動を控えると言って来た」「では、データーの損傷も無く、今後の進展にも対処は可能ですね」「ああ、残るはウチだけだ!明日になったら、第2段階の手立てに移るが、今の内に手を回して置くか」ミスターJは、受話器を取り上げた。「もしもし、社長、無事で何よりだった。悪いが姉さんを呼んでくれるか?ああ、頼む」ミスターJは、オープンマイクに切り換えると1枚の書面を手に取った。「お呼びですか?」「姉さん、いよいよ“AD事務所”を取り戻す時が来た。明日、事務所に乗り込んで全権を掌握してもらいたい」「弟はどうします?」「予定では、今晩これから米軍に拘束される。出社は叶わんよ」「では、この隙を突いて弁護士たちをこちらに引き入れてしまえば・・・」「そうだ。実権を握ってしまえば、後は“経営権”の譲渡を条件に取引が出来る」「弟はどうなりますか?」「米軍での尋問の後、警察に引き渡されるだろう。もっとも、その前に弁護士会から“除名・追放”されるだろうな。文字通り裸の王様になる訳だ。そこで、U事務所が弁護を引き受ける。首都高の“襲撃事件”の事後処理の過程でヤツも譲らざるを得ない状況に持っていく。最終的には“嫌疑不十分”で不起訴にはなるだろうが、その時には全てを失う事になるだろう」「では、全て予定通りでよろしいのですね?」「そうだ。メインサーバーも明日には届けさせる。思い通りに事務所の再建に入ってくれ!」「分かりました。まだ何かございますか?」「済まんが社長に変わってくれ」ミスターJは、別の書面を手に取った。「社長、首都高での“襲撃事件”は“事故”として処理出来るかね?」「いくつか手はあります。運転していた者達も“事故”として警察に申告しているでしょうから、事を穏便に片付けるのは難しくはありません」「監視カメラの映像などの物証があってもか?」「“事故”のあった三宅坂JCT付近に監視カメラはありますが、丁度死角に入っています。直前の映像はあったとしても、関係者の証言が曖昧ならば、それほど問題にはならんでしょう。原因不明の物損事故として扱わざるを得ないでしょうし、当事者としても真相が明らかになるのはマズイ事ですからな」「そこを突いて“AD事務所”の“経営権”の譲渡を進めてくれ。なるべく穏便にな」「分かりました。それ程難しい話ではありませんよ。表沙汰になれば訴追は免れない話ですから、向こうも折れるしかないでしょう」「R女史は、意識を回復した。退院までにはまだ時間がかかるが、そちらも穏便に片付けて欲しい」「ウチのTが上手く片付けますよ。Rさんとは大学の先輩と後輩の間柄。こじれる事も無く済むでしょう」「では、万事予定通りで進めてくれ!こっちはまだ“大捕り物”が残っているが、何とか切り抜ける。弁護士会への手回しを含めて宜しく頼む!」「“連合艦隊”が圧力をかければどうにでもなりますよ。後はお任せ下さい」「では、宜しく頼む」ミスターJは、電話を終えた。「いよいよ、“AD事務所”の取り潰しですか。上手く行きますかね?」リーダーが心配そうに聞く。「姉さんなら、徹底的にやるだろう。サイバー部隊の解散も含めてな。看板を掛け替えると同時に、親父さん達の様な“人情味”溢れる事務所に再建するだろう。さて、“大魚”は何処で暴れとるかな?大隊長!ベンツは何処に居る?」「依然として都心環状線を周回してます。転進する気配はありません!」「そろそろ我慢の限界に達するはずだ!動きを見逃すな!」「了解!」「待つのは長いな。今の内に腹ごしらえでもするか。リーダー、オーダーを取って食事を手配してくれ」「はい、みんな何を注文する?」リーダーはオーダーを取り始めた。緊張が少し解れた瞬間だった。

「蓄電率は?」「まもなく50%に達します」「このブンブンと走り回るスポーツカーの群れは何だ?」“AD”の社長がいら立って聞く。「“ルーレット族”でしょう。毎夜、環状線でバトルをしてます。付近に覆面が居る可能性もありますので、ご注意を」「うぬー!この忌々しい改造車の群れは我慢できん!そろそろ横浜へ向かうぞ!」社長は遂に焦れた。「後、3周できませんか?そうすれば60%まで蓄電できます」「ちっ!これ以上の我慢は無理だ!俺は転進するぞ!第三京浜に出れば加速して蓄電率も稼げるだろう!用賀へ向かう!」癇癪を起した社長は、用賀方面へ転進した。「この先の加速で、どの程度稼げる?」「およそ75%前後でしょう。蓄電池を加えれば80%前後になります」「えぇーい!それで充分だ!ミスターJの“司令部”を叩くには全電力を投入すればいい!どうせ1回しか攻撃は出来んのだ!一撃必殺!葬ってくれるわ!」いきり立つ社長は、徐々にスピードを上げ始めた。「まもなく取り締まりポイントです。ペースを落として下さい」「分かっとる!!」癇癪が破裂し始めた。こうなると手には負えない。徐々に蓄電率は上がり始めてはいたが、取り締まりに遭えば厄介な事になりかねない。サイバー部隊員は、止む無くPCを起動させて、周囲の状況を探り始めた。今の所、警察に遭遇する気配は感じられないが、来ない保証も無い。ムキになって車を走らせる社長と、PCに夢中になっている同乗者。後方に食らいついている“機動部隊”に気付く者は居なかった。
「“機動部隊”よりミスターJへ、ベンツが転進しました!用賀方面へ向かっています!東名へ行くのか、第三京浜へ乗り換えるのかは、現時点では不明です!」「見失うな!どの道、第三京浜へ向かうだろうが、確率は分からん。着かず離れず追尾を続行しろ!」「了解!」ミスターJは、あんかけ焼きそばを慌てて流し込むと、PCの画面に高速道路の渋滞情報を映し出した。「都心からの流れは順調だ。この分だと、1時間半もすれば射程圏内に入る。各員配置に着け!」食事も早々に“司令部”は臨戦態勢へ入った。「大隊長!ビーコンを発信しろ!それで、おおよその現在位置が推定出来る!」「了解!ビーコン出します!」「“シリウス”ビーコンをセンシングして、渋滞情報に重ねられるか?」「了解。少々お待ちを」“シリウス”が情報を処理して画面上に反映させる。「よし!まだ、首都高を抜けていない。“スナイパー”!」「へい、米軍に知らせて、部隊展開を急がせます!」「N、“車屋”シールドの最終チェックを急げ!」「了解、回路電流から再点検だ!“車屋”ノートPCを起動しろ!」「はい!」「F、U事務所攻撃の際、撹乱波がシールドを破っていたな?こちらでも可能性があるか検討してあるか?」「撹乱波の照射角度が異なりますし、窓の面積も違います。一概に比較対象は出来ません。ですが、万全を期して計算してみます!」「うむ、頼んだぞ!さて、リーダー、遊撃隊をどう使う?」「真っ直ぐこちらに向かってもらわなくては困ります。蓄電率が不十分な状態で、向かってこられた方が有利ですし、第三京浜で隊列を組んで妨害工策をさせましょう!」「分かった。指揮は任せる」「大隊長!ベンツの進路を見定めたら、そのまま東名へ侵入しろ!第三京浜では遊撃隊が任務を引き継ぐ。“機動部隊”はZ病院付近へ集結させろ!」「了解!」「リーダー、遊撃隊にもビーコンを発信させろ!“シリウス”同じように画面に出してくれ!」迎撃態勢は整いつつある。「推定ゼロアワーは、午後10時半だ!各自時間を合わせろ!」“司令部”の全員が時計を睨んだ。刻一刻と時は迫った。

「うっ、うーん」DBは鼻に着く消毒の匂いで目覚めた。全身からアルコールの匂いが漂う。“どうやら消毒をしたらしいな”心の中で呟くと眼鏡を探す。ダンボール製の机の上に眼鏡は置かれていた。ヨロヨロと歩んで眼鏡をかけた。臭気を放っていた便器からも匂いは消されていた。“また、クスリで眠らされたらしいな。室内は徹底的に消毒か”DBはベッドに横になると天井を見回した。レーザーの発射口が煌めいている。下手に動けば、火傷は免れない。天井から絶えずアルコール臭がするのは、空調の風に混じってアルコールが散布されているためらしかった。“臭さを消すためか。思えば、この2ヶ月臭い水でしか体を洗っていない。さすがに苦情でも出たのだろう”ベッドの上で横たわったままDBは思いに沈んだ。随分と体形は変わった。出っ張っていた腹は萎み、手足は細くなり、頬は削った様に三角になった。“腹が減った。食事はまだか?”DBは空腹に苛まれた。「はっ・・・腹が・・・減った」と口にした途端、レーザーがベッドを焼いた。「!!!」DBは口を覆ってアルミシートを頭から被った。「私語ハ禁止サレテイル。次ハ外サナイ!」合成ボイスが警告を発した。震えが来た。うっかり、声を出したがためにレーザーに狙われたのだ。“焼かれるのはもう沢山だ!”ようやく言えた火傷の跡を無意識にさする。ベトナムは夜になっていた。実は、消毒作業に時間がかかり、夕食を出すのを忘れて社員たちは帰寮してしまっていたのだ。“空腹は我慢できるが、火傷は癒えるまで痛みが続く”DBは必死に空腹感を忘れようとした。生き永らえるには、それしかなかったからだ。

クレニック中佐が横田基地へ降り立ったのは、夕闇が迫り来る時であった。「あれからもう1年半。久しぶりね。¨潜入捜査¨で銀座に潜っていたのが、昨日の様だわ」「中佐、¨潜入捜査¨とはどの様なものだったのですか?」少佐が聞いてくる。「まだ、その時分は大尉だった。麻薬の横流し先を突き止めるために、ホステスに成り済まして銀座の高級クラブへ潜ったわ。情報を掴んだまでは良かったけれど、脱出ルートの開拓に失敗!危うくJapaneseヤクザに売られる寸前まで追い詰められた。でも、地下組織のメンバーに救い出されて、帰国出来た。笑い話にもならないわ!」「地下組織って、どんなメンバーだったんです?警察ですか?それともCIAの様な情報機関ですか?」「不思議な組織よ。警察でも情報機関でもない。日本語で¨義¨って言葉を実践しているのよ。¨ニンジャ¨の様に影に潜み、¨サムライ¨の様に悪を斬るの。ただ、¨殺し¨はしないの。事実を白日に曝して社会的に制裁を下すのよ。彼らは様々な技術を駆使して立ち向かうの。その道のプロが集められてたわ。そして、巧妙で変幻自在に動き回ってた。そして実態はベールに包まれて最後まで分からなかったの。今回もその¨シャドー¨が関わっているらしいの。今回は、彼らの実態解明もしたいと思っているの!」中佐は、軍指し回しの車に乗り込むと「少佐、ケイコからの報告よ!」と言って薄い書類の束を差し出した。暫くすると「どうやら、今回も¨シャドー¨が動いているらしいわ。出来る事なら、ボスに会って置きたいものね!」と言って窓の外を見つめた。「中佐、何故¨シャドー¨に拘るのです?」少佐が尋ねると「銀座から脱出する際、クラブのホステス全員を煙の様に連れ去ったのよ。経営者達には一切気付かれる事無くね。私も横田基地まで秘密裏に護送されたわ。あの手口、手際、行き届いた配慮、何故、見ず知らずの者にそこまでやるのか?単純に聞きたいだけ。¨オモテナシの心¨とは何か?ボスに教えを乞いたいのよ」「中佐、彼らは応ずるでしょうか?」「分からないわ。でも、礼は返したいのよ!今があるのは、彼らの手助けがあればこそ。どんな形でも構わない!救われた借りは返して置く必要があるわ」彼女は凛としていい放った。そして、遠い目を車外に向けた。役者は続々と集結しつつある。“司令部”への攻撃も目前に迫った。勝負の夜が迫りつつあった。