祈りの海(ハヤカワ文庫)グレッグ・イーガン

2007年05月08日 | 読んでみました
「ひとりっ子」を読みたくて、読み始めました。

正確には「グリュフォンの卵」の口直しをしたくて
本屋で平積みされていた短編集を眺めていた時に
イーガンさんの「ひとりっ子」が目に付いたので
購入したのですが、第三短編集だった事に気づいたため
急遽、第一短編集である本書を購入した次第でゴザイマス。

祈りの海

グリュフォンの口直しにはなりましたが
満足出来たか?というとイマイチ感が…

どの作品も面白いんだけど、単体で十二分に評価出来るんだけど
「万物理論」で感じた圧倒的な何か、には欠けます。
順列都市以前の作品だからしょうがないんだけど。

「順列都市」の習作的作品というか、関連作が
数作見られるカンジですね。
っていうか、最初に読んだ作品が「万物理論」である立場としては
全てのイーガン作品が習作にしか見えないのですが…

で、全体としては「これぞグレッグ・イーガン」という紹介が出来る程には
作者の現在の能力に比すると、作品全体のレベルが高くないし

「これがグレッグ・イーガン」という紹介も可能といえば可能なんだけど
真骨頂とも言える量子系が含まれていないので、
イーガン語るならこれを読め、的な紹介も出来ないし

どれが好きだったのか?と問われたら「イェユーカ」が好みかな。
ナニゲに一番SF風味の薄い作品ですが…

しかし、この短編集が後の作品群に繋がる事だけは確かなので
イーガンマップを作るためのメモはとっておきます
相変わらず自分のためのメモでスマヌ

「貸金庫」
毎日『自分』が変わる人生を描いた作品。
順列都市系列とこじつけられない事も無いかも。

「キューティ」
子供に恵まれない夫婦(というか夫)が
遺伝子形質から仮想生物(ロボット?サイボーグ?)
を購入するオハナシ。
アラスジ的には、もっと悩み深いんだけど
マップ的には順列都市系列。「ひとりっ子」の原型か?

「ぼくになることを」
純粋な順列都市系列。
銃夢の「脳無し」はマンマこの世界観がモチーフですね。
どっちが先なのかは知らないんだけど。

「繭」
ウィルスだけではなく、脳内物質も制御可能な完璧な胎盤とは
みたいなカンジ。万物理論系列に当るのかな。

「百光年ダイアリー」
ニワトリが先かタマゴが先か。
「あなたの人生の物語」もモチーフ的には似てるよね
あ、あと、この通信のアイデアってシンギュラリティスカイで
使われてた気がするんだけど…
もちろんイーガン先生のが先に発表しているのですが。

「誘拐」
妻が誘拐されたと言う「映話」は、現実なのか非現実なのか。
順列都市系列です。って言っちゃうとネタバレ?

「放浪者の軌道」
無宗教という宗教、という表現は淡白すぎか
もしかしたら万物理論に繋がるトコロがあるのかも。

「ミトコンドリア・イヴ」
ストーリーよりも、アインシュタイン-ポドルスキー-ローゼン相関関係
という理論に惹かれました。
本当にあるんだねぇ…

「無限の暗殺者」
特異点ってアレだよね。最近だと電王。
どの時間軸も影響を受けないという。
特異点の話としては「ひとりっ子」に繋がるのか?

「イェユーカ」
モラトリアムとボランティアの境目は自己犠牲なんだと思う

「祈りの海」
宗教系のオハナシと言い切ってしまっていいのだろうか?
「あなたの人生の物語」の中の『地獄とは神の不在なり』とは
対極に位置するオハナシだと思う…

そんなカンジの作品集でした。
毎度の事ながら感想のみで
小説の内容が不明でスマヌ

あ、ほんで結局この短編集は
僕みたいにイーガンの実力を思い知っている人が
イーガンの素を知るための本かと。
入門書としてはイマイチかも。
むしろファン向けってカンジで。
コメント
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