ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

希望のミシン

2015-10-07 00:10:30 | 日記
9月に入居してきたヤエコさん(仮名)は
関節リウマチで手の自由が利かない。
ペットボトルのキャップを回すだけでも
わざわざエレベーターを使い
事務所まで訪ねてこなければならない。

先週、ヤエコさんのもとにミシンが届いた。
一人では梱包が解けないだろうとお手伝いに行った私は
ふと、疑問に思って彼女に尋ねた。

ヤエコさん、ミシンで何か作るんですか?

まだここでの生活に慣れないせいか
あるいはもともとの性格ゆえか
食堂でも一人ぽつんと座って誰とも話をしない彼女。
こちらから声をかけなければ
職員ともほとんど言葉を交わすことがない。

そんな彼女が私の質問に
くるりと首を回し、初めて見る笑顔でこう言った。

「希望、なんです」

キボウ? 何のことだか分かりかねている私に、彼女は言葉を続けた。

「病気になる前は、ミシンで色々なものを作っていたんです。
それこそ、子供が小さいときは洋服は全部手作りしたんですよ。
それが病気で指先がうまく使えなくなってしまって・・・。
でも、このままじゃあまりにも悲しいから
もう一度ミシンを踏めるような自分になりたいから
だから、希望を捨てないためのミシンなんです」

ふんわりと、見えない羽毛が身体を包む。
とっさに口をついて出てきた言葉は
「ありがとうございます」だった。

しんどいことが続いたから
ヤエコさんの言葉は本当に温かかった。

ヤエコさん、ありがとう。
あなたの存在が、今の私には“希望”です。