ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ハルオ、ついに箸を握る

2016-10-22 23:50:00 | 日記
まさかとは思ったが
本当に、「News every」の撮影隊がやってきた。
※「ハルオ、脚光を浴びる!?」(10/15)参照

いつもは食堂でみんなと食事を取るハルオだが
今日は特別に部屋食。
献立は職員がハルオのために茹でた蕎麦である。

ハルオの拘縮した左手にピタリとフィットするようにデザインされ
丁寧にやすりにかけられた世界でひとつだけの箸。
それを恭しく持って、職人さんが登場する。

「さあ、ついに箸が完成しました。使ってみてください」

箸を握らされ、蕎麦を前にするハルオ。

できるのか? 
箸で、大好きな蕎麦を口に運ぶことができるのか?
いざ行け、ハルオ~!!!

ウチの責任者とケアマネ、私、そして何人かの登録ヘルパーが見守る中
ハルオはついに、箸をどんぶりの中に入れた。
そして次の瞬間、いともやすやすと箸で蕎麦をすくい、口に運んだ。

わーーー!!!
思わず大歓声。

しかしそれに気圧されることなく、ハルオは黙々と蕎麦を食べ続け
どんぶりいっぱいの蕎麦を完食したのだった。

まるで、いつも箸を握って自分で蕎麦を食べてますよってな
涼しい顔をしてるが
よおく見て! アナタの手、いつもグーでしょ?
握った手のひらの隙間にスプーンを差し込んでご飯を食べるのが
精一杯の生活をしてきたでしょ?

箸を作った職人さんは
「自分のつくった箸がお役に立てて…」と感動して泣いている。
私たち職員も
「ああ、ハルオさん、ハルオさん。
ついに念願かなって、自力で大好きなお蕎麦を食べることができたのね」と
感激に涙が止まらない。

カメラマンがどんな風に撮影したかわからないが
主役であるハルオを囲み、感動は大きな渦となっていたのだ。

インタビュアーが聞く。
「ハルオさん、今のお気持ちは?」

よ~し、ハルオ、ここはニコリと笑って
「うまかったぁ」と言うんだぞ!

しかしハルオ…、ああハルオ…
ヤツはキョトンととぼけた顔でひとこと。

「よくわかんねえよ」

ああ、アンタという爺さんは…。

ま、とにもかくにも取材は
というか“ハルオに大好きな蕎麦を自力ですすってもらうプロジェクト”は
ここに大成功を収めた。

放送は来週。
楽しみではあるが、それ以上に
献立表を見たら25日の昼食はきつね蕎麦だという。
その日こそがいよいよハルオのお箸デビュー。
ハルオが元気な高齢者たちと同じように箸を使って蕎麦を食べる姿を思うと
今から嬉しくて嬉しくて胸が躍るのである。


2 コメント

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見ましたよ~ (nene)
2016-10-28 18:23:50
ちかさん、こんばんは。

何気にテレビつけたらちょうど始まるところでした。
ハルオさん、上手にお蕎麦召し上がっていましたね。
それにしても、スゴイお箸があるんですね。
初めて見ました。
知らないで不自由されている方いっぱいいると思いますよ。
テレビで紹介されて、欲しいっていう方いらっしゃるのではないかな。
そうそう、ハルオさんがお蕎麦を口にした瞬間、すごく喜んでいた方、もしかしてちかさんかしら。
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見られちゃった~!? (ちかさん)
2016-10-30 02:05:55
neneさん、ご無沙汰です。
見てくれたんですね? どうもありがとう。
私も職場でみんなと見ました。
さあ、はじまるよ、はじまるよと
食堂の大画面テレビの前で待ち構えていたら
まさかのことに、最初に映ったのは私の姿!
撮影されていることに気づかず
素直に感動してました。

そう、アレが私です。
思わぬところで公開しちゃいましたね。

ハルオさんが自力でお蕎麦を食べるシーンには
マジ、感動しました。
介護職に就いてよかった。
改めて、そう思いました。

悲喜こもごものこの仕事ですが
こんな感動があるからやめられない。

これからも頑張っていこうと思っていますので
どうかneneさん
私を見守っていてくださいね。


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