受精卵もOK! 内膜もOK!と妊娠への期待が膨らむのに、妊娠しない、、、
そんな時には「何が悪いの? 何が原因?」とうまくいかない状況に腹立たしささえ感じますよね。
今回は、着床が上手くいかずに悩まれている方(反復着床不全)に「こんな方法もあるんだな~」と希望を持って頂けるように「内膜スクラッチ法」について記事にしてみました。
2003年、米国のBarash医師が「前もって子宮内膜に小さな傷をつけておくと、体外受精の妊娠率がよくなる」という論文を発表しました。
子宮内膜に傷をつけるとは?
実際にどんなことをするかというと、子宮内膜の生検(組織の一部をとって病理検査をすること。子宮体癌検査など)をしたり、体外受精の前に子宮鏡検査を行って子宮内の異常の有無を観察したりなどという、「子宮の中が少し傷つくような操作」を意図的に行うということです。
まだ一般的な処置ではないので、単に内膜生検(biopsy)と書かれたり、内膜スクラッチ(scratch)とか内膜スクレイピング(scraping)と書かれたりもしています。
実際のところ、どれくらい効果があるのでしょう?
2012年に参加者計2062名、7つの研究結果をまとめて評価した論文によると、原因不明で「繰り返し着床に失敗する」人に対して内膜スクラッチなどを行った場合は、そうでない場合に比べて70%以上も妊娠しやすくなる(臨床的妊娠)と結論されました。
また、スクラッチの方が子宮鏡検査よりも2倍も妊娠しやすいという結果です。
実際に一般的な治療として認めるためにはさらに大規模な研究結果を待たなければいけませんが、2016年7月、欧州生殖医学会(ESHRE)は、タイミング・人工授精後の内膜スクラッチ法にての臨床的妊娠率、出産率がそれぞれ、1.9倍、2.3倍向上したと発表しました。
いつ処置をすればよいのでしょう?
体外受精を行うために排卵刺激を行う前の周期の黄体期(月経後半の基礎体温が高くなる時期)に1回内膜スクラッチを行うことが多いようですが、刺激前の黄体期と刺激周期の卵胞期(月経周期の前半)の両方で行うこともあります。
逆に採卵日に内膜スクラッチを行うと妊娠率は悪くなるという報告があります。
内膜スクラッチでなぜ妊娠しやすくなるのでしょうか?
はっきり言えばよくわかっていません。
排卵後、卵管内で受精が成立し、受精卵は分割しながら卵管内を進み子宮に到達します。この受精後、5日間ほどの僅かな間に子宮内膜側に受精卵の受け入れ体制がうまくできていないと妊娠は成立しないのです。
そして、前もって子宮内膜に傷がつけられると、内膜修復の過程に出るさまざまな因子によって内膜が着床に適した状態になるのだという考えがあります。
以前は、不妊症検査の一部として子宮内膜日付診という組織検査を行うことがよくあったようですが、最近では既にほとんど行われていませんでした。子宮内膜日付診というのは月経周期の黄体期(周期の後半)に子宮内膜を一部採取して組織検査をするという、いわゆる生検(biopsy)です。
ただし、内膜組織を調べても着床のし易さが判断できるとは限りません。
当院では、繰り返し受精卵が着床しない場合には、内膜スクラッチ法をお勧めしています。
通常、この検査は妊娠している可能性が低い周期に単に検査として行います
数分の処置で終了し、特に麻酔や痛み止めは使う必要がありません。
いかがでしたか?
着床が上手くいかない場合の対処方法は他にもありますが、今回は内膜スクラッチ法について説明させて頂きました。
ご相談は医師、看護師にお声かけくださいね。
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