酸素は私たちが生きていくうえで欠かせないものですが、呼吸で摂り込んだ酸素のうち2~3%は化学的に不安定な分子「活性酸素」となり体内に存在するといわれています。そしてこの活性酸素は、物質から電子を奪い、その物質を酸化させて本来持っている性質を変化させます。
「病気や老化の原因となる活性酸素」
活性酸素は元来、人間を含め動物や植物の体内にあって細菌、ウイルス、病原微生物などの外来の敵を撃退してくれる働きをもつ健康維持に必要な物質です。しかし必要以上に増えて過剰になると正常な組織へのダメージを与えてしまいます。反応性の強い活性酸素は体の中のたんぱく質や遺伝子等を損傷させ、動脈硬化や糖尿病などのさまざまな病気や老化の要因の一つとされています。生きているかぎり活性酸素の発生は避けられないのですが、とくに問題なのは、近年、私たちの体の中の活性酸素が必要以上に大量に発生している、ということです。
体内で発生する活性酸素には4つのタイプがあります。同じ活性酸素でも生成の仕方、働き方、酸化力に違いがあります。
・スーパーオキシドラジカル:代表的な活性酸素。酸化力はそれほど強くないが大量に発生する。
・過酸化水素:不安定でヒドロキシラジカルを生成しやすい。
・ヒドロキシラジカル:もっとも酸化力が強い。たんぱく質、脂質などあらゆる物質と反応し細胞のDNAに突然変異を起こすとも言われている。
・一重項酸素:紫外線や放射線を浴びると肌の細胞で発生し、老化や皮膚がんの原因になるとされる。
「活性酸素の発生源」
呼吸のみならず、激しい運動、喫煙、飲酒、甘いもの、紫外線、放射線、電磁波、大気汚染、農薬、食品添加物、薬物、ストレスなど、現代人の生活には活性酸素の発生源があふれかえっています。私たちの体には異物が侵入すると、それを撃退して排出しようとする仕組みが備わっています。例えば農薬や食品添加物なども化学物質なので、体に取り込んだ場合は異物として認識し、攻撃をします。そのときに武器となるのが活性酸素です。これらの発生源は自分でコントロール可能なものもありますが、個人の力だけでは対処し難いものも増えています。
「酸化の害から身を守るには」
では、体を錆びつかせて病気や老化を引き起こす原因となる酸化から身を守るには、どうすれば良いのか。
一つには、禁煙、節酒、甘いものを控える、放射線や紫外線、農薬や食品添加物の害など食習慣や生活習慣の改善で自分にできるところから活性酸素の発生源をできるだけ排除していくことです。また合わせて抗酸化物質を体内に増やすことが有効な手段となります。活性酸素の過剰な発生を抑制するために体にもともと備わった抗酸化機能の一つが、SOD(スーパーオキシド・ディスムターゼ)で、体に増えすぎた活性酸素を除去する働きをもつ生体内酵素です。その他、抗酸化物質には、ビタミンCやEなどの抗酸化ビタミン、亜鉛、セレンなどの抗酸化ミネラル、フィトケミカルなどがあります。これらは体内では生成されませんが、植物に多く含まれます。なかでもフィトケミカルは主に野菜や果物など植物に由来する抗酸化成分で健康と免疫力に大きな影響をもたらし第7の栄養素として注目されています。
妊娠をめざす方に意識してほしいのは、排卵する卵子を体の酸化から守ってあげること。抗酸化のためには食事をととのえることは大事なポイントです。そこで次回はフィトケミカルの働き、摂り方等についてご紹介したいと思います。
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