今も昔も、玄関床に敷かれた大理石を見て驚かなかった方はいないでしょう。
明治大正時代、上がり框(かまち)に正座し、頭を下げて来客を出迎えていた状況からすれば、ここ山本家住宅での玄関でのお出迎えは立ったままでの状態であり、当時としては不思議な世界だったかもしれません。
ただし靴を履いたままで屋敷内に入る正式な洋館と違い、洋室と和室が混在する為、靴を履いたままで屋敷内に入る事はなかったでしょう。
この玄関ホールで上履きであるスリッパに履き替えていたのでしょうか。
現在、山本家を案内する時は、大理石貼りの玄関ホールに入る手前のスノコを敷いた所で靴を脱いで頂き、寒い時期はスリッパに履き替えて頂いています。ここ最近は、暖かくなったので靴を脱いだ状態でスリッパは履かずに、家に入って頂いています。
大正時代のゲストはこの大理石貼りのホールで靴を脱ぎ、そこに置いていたのか、お手伝いの方が一旦片付けたのかは想像するしかありません。
いつまでも大理石に見とれていてはいけません。天井をご覧ください。
照明の上の中心飾りは漆喰装飾です。
欧米でもこのような装飾が沢山ありますが、欧米での作り方は、まず木で装飾を施した型枠をつくり、そこに石膏を流し込んで作りました。しかし日本の左官職人は、石灰・ふ糊・麻を混ぜ合わせた漆喰を少しずつ盛り上げては鏝(こて)で丹念に浮彫りに整形する作業を繰り返し、その場所にしかない、オンリーワンの細やかな細工の漆喰装飾をつくりあげていました。
洋室にあるそれぞれの違った照明の中心飾りの漆喰装飾も紹介します。
玄関ホール
書斎
サンルーム
階段室
腰板は楓(かえで)材を使用しております。これから案内します洋室部分の腰板は楓(かえで)材です。
楓(かえで)材の中でも玉杢(たまもく)という高級品です。
枠の部分は木曾檜(きそひのき)を使用しています。
山本家住宅の洋室の腰板は全て楓が使用されています。
山本家より4年遅れの大正11年(1922)に完成した旧名古屋控訴院地方裁判所区裁判所庁舎である名古屋市市政資料館の会議室の腰壁と同じです。
協力:網干歴史ロマンの会・あぼしまちボランティアガイド
銘木関係:原匠江尻店長
※山本家住宅は、第1、第3日曜日の10時00分~16時00分に公開中です。
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