うちの芝生が一番青い

Tokyoに暮らす、ごくごく平凡で標準的な【ナイスサーティーズ】の奮闘記。

書評 ~ 「建築家 安藤忠雄」

2011年05月09日 | 書評
本日はかなり久しぶりの書評です。

今週のチョイスは 「建築家 安藤忠雄」







現在、世界で最も有名な建築家である。もはや疑いの余地はないと思う。

今でも大阪を拠点としながら、世界中に美しく、崇高な雰囲気さえ漂う建築を作りつづけている。
彼の作るコンクリート打ちっぱなしの建物には、建築に対する強い思いや意志が詰まっているようだ。


そんな安藤氏の今まで歩んできた人生、建築に対する思いを
自身の作品を紹介しながら綴った構成となっている。



もうかなり有名な話であるが、安藤氏は建築の勉強を学校で受けていない。

経済的な理由から大学には進学せず、誰にも師事することなく全て独学で学んできたというのだ。
アルバイトをしながらひたすら書籍を読み、コルビジェなどの作品集をトレースしていく。
(時には大学の授業に潜り込み、講義を受けていたらしい)

そしてお金をためては、世界中を旅しながら建築物を見てまわる。
まさしく全て独学である。


将来に対する保障など全くない中で自分の事務所を開設。
全く仕事がない状況の中、彼を支え続けたのは「強い意志」「強い気持ち」なのである。

実際、彼が残してきた建築は、実現するために『様々なハードル』を乗り越えなくてはならないものが
多いのだが、それを常に乗り越えながら実現させているところが凄いと思う。
(技術的、法規的、コスト的・・・などなど)


それから40年。
若いころ思い描いた自分になっている。





一見「華やかなサクセスストーリー」に見えるが、安藤氏はそれを全面的に否定している。


 ~ とにかく思うようにいかないことばかり、なにか仕掛けても大抵は失敗に終わった。
   それでも僅かな可能性に懸けて、ひたすら影の中を歩き、一つ掴まえたら、またその次を目指していく。
   そうして、小さな希望の光をつないで、必死に生きてきた人生だった。


安藤氏は人間にとっての 【幸せ】を 次のように考えている。


・本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。
 その光を遠く見据えて、それに向かって懸命に走っている。

 無我夢中の時間の中にこそ、人間にとっての【幸せ】があるのではないだろうか。



建築に全く興味がない方にもおすすめです。
講演会のときもそうでしたが、話が面白く、わかりやすい。そして深いのです。