第6話-6

　田村が車を入れたパーキングエリアには、日本各地のナンバーの、車種も様々な車が停まっていた。関東近県の乗用車、中部、関西地方からの観光バス、東北、北海道ナンバーのトラックなど、その中から所沢ナンバーのタンクローリーで仮眠していた若いドライバーを田村は選んだ。

　トイレに行って連れの女がＧＰＳの発信機を持っていないか確かめて、第一目的地点である廃車置場の場所を書いた紙を女に見せてくるまで、若いドライバーの仮眠は続きそうだ。廃車置場には、偽パスポートや航空券が入ったトランクを載せた車が駐めてある。

　田村はピストルをジャケットのポケットに戻し、女の手首を後ろで縛った粘着テープをはがして上着を脱がせて、前で貼り直した。こうして上着を手首に被せれば、車酔いの女が優しい彼氏に連れられて男子トイレに入っても、不審には見えないだろう。

　田村はチャイルドロックを外す前に、ピストルが入ったジャケットのポケットを藍原に当てた。「分かってるな」藍原はうなずいた。
　チャイルドロックが外れて、車をおりて助手席に回った田村が「大丈夫か？トイレに行ったら吐いてもいいから、頑張れよ」と田村が言った。
　田村に腰を捉えられて、藍原は車を下りた。