On The Road

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第6話-1

2010-12-12 20:01:00 | OnTheRoadSSS
 「強盗さーん、ブタさん、片付きました。血は洗ったけど、まだちょっと湿ってるんで、気をつけて下さいね」
 「お金の方は路駐の車の前に用意しました。連番じゃない古いお札です」

 男達が声を掛けた。田村は藍原に冷めた銃口を押しつけた。
 「いい子にしてればプリンセス。悪い気を起こしたらあの世行きだからな」
 藍原は田村にうなずき返しながら、亡くなって行った患者さんや彩菜のことを考えた。あの人達には死以外の選択肢はなかった。死を受け入れることで、死の瞬間まで生きていられたんだわ。
 もっといろんな人の手伝いもしたかった。素敵な恋もしてみたかった。でも、私さえ殺されてしまえば、レンジャーズは銀行に乗り込めて、犯人が捕まって事件は終わる。
 藍原は一瞬弱気になって天井を見上げた。屋内だから空は見えない。

 「強い男って、女の子には優しいもんですよね」
 作業を終えて帰っていく大柄な男が、大きな声で一言言った。
 そんなことを考えているから、お前は清掃作業員にしかなれないんだよ。本当に強い男は平気で女を捨てられる。邪魔になったら殺したって良心は咎めない。
 ただ、この女は殺すには惜しいかもな。僕みたいな優秀な男にふさわしい、頭の良さそうな女だ。


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