第6話-10

　「赤沢さん、ＬＯＥから電話が入ってるみたいネ」
　車に戻っていた黄から、赤沢の携帯に連絡が入った。「ワタシにはよくわからないけど、清掃の仕事が入ってるらしい」
　「こんな時に仕事って、何考えてんだ？」と携帯を切って、赤沢はワゴン車に走った。黒木は青山から受け取ったホットドッグを３口で食べて、青山と一緒にワゴン車に乗った。村崎はハンドルロックが掛かっているのを確認して、バイクを離れた。

　ＬＯＥからの電話はまるで要領を得ない。職員が話しているのは外部からの電話の伝聞で、電話の主自体、自分が言っていることの意味が分かっていないような伝言だからだ。

　「ＬＯＥの赤鬼、貝塚の廃車を作業車で撤去しろ。急がないと飛行機に間に合う」

　ＬＯＥ本部で赤沢に会ったことのある職員は、赤鬼が赤沢のことだとすぐにわかったらしいが、後の言葉は意味不明だ。電話を受けた職員は千葉県出身ではない。
　「貝塚は若葉区にある地名だ。その町にある廃車置場の車を撤去しないと」黒木が言いかけた。
　「急がないと間に合うっていうのは、なんか変ですね。あ、そうか、急いで行かないと、田村が海外逃亡してしまうってことか」
　村崎が言った。

　「田村の車はもう３時間もここに駐まっている。村崎、赤沢を貝塚まで送ってくれ。作業車は手配する」