On The Road

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第6話-11

2010-12-12 20:11:00 | OnTheRoadSSS
 昼時の客がはけてテーブルの片付けも終わったラーメン店で、丸顔のおばさんは亭主と自分のためにウーロン茶を注いだ。この時間帯に来る客はほとんどいない。店主である亭主はコップのウーロン茶を音を立てて飲んで、テレビの画面を見た。
 銀行内の人質が楽しそうに解放されてしまうと、テレビは臨時番組をやめていつもの再放送のドラマを流し始めた。銀行強盗犯のうち1人は元幸せ作ろう社社員の近藤、1人は大喰い選手権で殿堂入りした大竹、1人は大学院で物理学を学んでいたのに、ギャンブルにハマって身を持ち崩した坂野。残りの1人は平成の米騒動の時に、家畜の飼料用の古米を消費者に売り付けようとして失脚した、食品会社の社長田村の息子。この田村ジュニアだけは依然逃走中ということだ。

 「大喰い王の大竹って、3年前は細くて大喰い王子なんて人気があったけど、対戦者が戦意を喪失するからって殿堂入りさせられた子だよね。3年でこんなになっちゃうんだ」
 おばさんの声に、「女ってのは下らない噂話には目がないな」と、うんざりした顔で店主が答えた。
 でも、「近藤って男がいた会社って、前に村崎君がいたところじゃない?」とおばさんが言うと、「村崎君は辞めてよかったんだよ」と店主は満足そうに笑った。


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