コーヒーを飲み終えて、サトウさんが立ち上がって事務室へ向かった。退院の話をしてくるらしい。サトウさんが立ったから椅子はすこし広くなったけど、なんだか気まずくなった。アキエさんは少しずつミルクティーを飲みながら庭を見ている。
沈黙に耐えられなくて、「本とか好きなんですか?」と僕は聞いた。「タカハシさんは高村光太郎の詩が好きなんでしょう?」と限定で言われて、シジン志望の僕はあせった。ドーテーの作者はタカモリでもタカマツでもなくてタカムラだったんだ。
「詩集は読んだことないです」本当のことを言うしかない。「流行の小説もめったに読まないし、本を読める人ってすごいと思います」
「私は好きなだけなの。本を読んでると会ったことのない人に会える気がして」とアキエさんはちょっと恥ずかしそうに笑った。
アキエさんが「何かプレゼントしなきゃ」と言った。重そうな本を思い浮かべて僕はちょっと暗い顔をしたみたいだ。「本じゃないから安心して」とアキエさんに言われたから。
「昔、書道をやっていたの。入院してから先生や看護婦さんに色紙をプレゼントするのが楽しみで」
文学がわかって書道もできるアキエさんが、どんな文学少女だったか想像してみたら、サトウさんがうらやましくなった。
文科系の女子で優しくてきれいな人を僕は知らない。議論を吹っかけてくるのが趣味だったアネキの印象が強すぎて。
沈黙に耐えられなくて、「本とか好きなんですか?」と僕は聞いた。「タカハシさんは高村光太郎の詩が好きなんでしょう?」と限定で言われて、シジン志望の僕はあせった。ドーテーの作者はタカモリでもタカマツでもなくてタカムラだったんだ。
「詩集は読んだことないです」本当のことを言うしかない。「流行の小説もめったに読まないし、本を読める人ってすごいと思います」
「私は好きなだけなの。本を読んでると会ったことのない人に会える気がして」とアキエさんはちょっと恥ずかしそうに笑った。
アキエさんが「何かプレゼントしなきゃ」と言った。重そうな本を思い浮かべて僕はちょっと暗い顔をしたみたいだ。「本じゃないから安心して」とアキエさんに言われたから。
「昔、書道をやっていたの。入院してから先生や看護婦さんに色紙をプレゼントするのが楽しみで」
文学がわかって書道もできるアキエさんが、どんな文学少女だったか想像してみたら、サトウさんがうらやましくなった。
文科系の女子で優しくてきれいな人を僕は知らない。議論を吹っかけてくるのが趣味だったアネキの印象が強すぎて。