日の沈む前の時刻に。
海上に雲がかかっていてその一部がピンクに染まるに留まる。季節柄夕日を望むのは難しいのだろう。
丘を降りて暗くなった街に出る。まだマラッカ川クルーズは終了してはいない。次は8時半だと言うのでまだ40分ある。夕食をとってから乗ってみることにした。
夕食と言っても今日は平日、屋台も観光客用の店も地元の人用の店もほとんどが閉まっている。仕方なく、あまりお勧めでないと言われるチキン・ライス・ボールの店に入る。せっかくなので昨日と今朝食べたものと比較してみることにした。怖いもの見たさでもあるけれど、美味しいと言う店がそれほどでもなかったからだ。
結果として言えるのは、ライス・ボールと言う食べ方自体がチキン・ライスにとって最適な食べ方ではないのだろうとう言うこと。味付けも他とちょっとは違うが言われるほど大差があるわけでもない。評判の店は確かに塩味とニンニクがよく効いていて食い付きと言う面では勝る。しかしお勧めでない店が不味いかと言うとあえて比較すれば特にそうでもないのだ。どちらにしてもライス・ボールよりは同じ材料で普通によそってもらったご飯の方が美味しいと感じた。
そうして普通のチキン・ライスと比べてしまえば、マレーシアではチキン・ライスはポピュラーなのだけれど、近所で食べるチキン・ライスがここの行列ができる店に劣るとは全く思えない。ただ、マラッカのこれらの店の料金は安く、つまり今まで地元の人が食べていた味が観光客にもそれほど違わない値段で食べられると言う意味では歓迎されるべきではある。値段は1人前5リンギット以下なのだ。
8時20分にボート乗り場に着くともう少し列が出来ていた。10リンギットのチケットを買ってその列に並ぶと間もなく平たい屋根つきボートに案内される。色とりどりの街のイルミネーションが水面にゆれる。建物が白で統一された場所あり大きな壁画が描かれたゾーンあり、そしてマレー式伝統住居を再現した地区あり。これらは見せることを意図して作られたり演出されているのだけれども、実際に人が住んでいたり生活したり生活のために使っているものばかりなのだ。
そうした意味も含めて、予想を裏切ってとても楽しめるクルーズだった。これはちょっと素晴らしい。仕事しなくて良いのなら本当にこの街に住んでも良いかもしれない。
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