できない事をやる人がいる

久しぶりに華やかな街へ出てみた。
KLCC、ツインタワーへ。
って言っても用があるでもなし。
開店とともに(どんだけ早く行くんだ！)、伊勢丹をぐるり。
けっこう美味そうなものが売られている。
(あたりまえだ。マレーシア一番の高級モールだ。)
が、別にそんな高級なもの食べたくない。
第一、収入のレベルと合ってない。
日本にいた時銀座の高級デパートで買ったりする身分じゃなかったし。

上の紀伊国屋書店へ。
たまに行くと積んである本が変わっていて面白い。
でも買わないけど。
目の保養、マレー語ではチュチ・マタと言う。

する事もなので何か食べて帰ろうかと。
でもKLCCだとあまり食べるところが無い。
フードコートでもちょっと高いのだ。
が、ここはレジャー、レジャー、
せっかくだから片田舎の街に無いものを食べて行こう。
段差の低い清水の舞台から飛ぶ感じだ。

そこにはしばらく前から日本食の弁当屋が出ていたが、
食べていなかった。
今回それを試すことに。
あまり高いのは選ばない。
最低が14リンギ台、そこから16台、
そしてその上のメニューになるとフードコートのレベルを超える。
壁のある和食屋でも30リンギ弱でセットがあったりするが、
フードコートでそれを超えるとちょっと選べない。
清水の舞台、足挫くまで高くなる。
死には至らないが。

結局選んだのは親子丼とチキンカツセット。

親子丼、どんぶりじゃなく重箱に入って来た。
一口食べると思っていた親子丼じゃ無いと即座に判明。
鶏肉と水の溶いた卵で炒めている。
ニンニク味だ。
ご飯の上にそれとドレッシングのかかったサラダも乗っている。
2つは隣り合っていて明確に分かれていない。
飛行機の窓から赤道の赤い線を探すような感じで
どっちも海だ。
ジャブジャブしている。

チキンカツセット。
カツやたら薄い。
びっくりしたのがご飯。
白いご飯が茶碗に入って来たのは良いが、
粒が1つ1つ舌先で選り分けられるほど固い。
そして炊くのに油を使っている臭いがする。
どうやらオーナーは中華系だろうと想像できる。
自分が星一徹でなくて店は命拾いした。


と、まあ星一徹でもここでは怒りはしない。
なぜならここはマレーシア。
いくら大都会の真ん中で近年マレーシア人旅行者の多くが
日本を目指すようになったとは言え、
本当の日本の味を知る者などほとんどいない。
そうした人達のための料理なのであって
ごく少数しかいない日本人のために彼らは作ってはいないのだ。


そう言えば、ずっとずっと以前シンガポールでタイ料理を食べた
あの経験を思い出した。
ちゃんとした壁のある店だったがそれはどう考えても考えても
タイ料理の味ではなかった。
今回のこれと同じだ。

どうも中華系、テキトーにやるのが好きらしい。
そうそう、パン屋なんかもそうで見た目と味が違うのが多い。
パンの毛が生えてたりするし。

しかし、このマレーシアの大中心、KLCCでこれができるとは…
これはもう恐れ入りました、としか言えない。
要は自分に出来ない事をこうして平気でやるのである。
ある意味、これは偉いし見習うべき事だ。


我々日本人、もしこれやったら袋叩きに会うと思う。
炎上…


中学校に入る前の冬休み、友達がスキーに連れて行ってくれた。
蔵王だった。
神奈川出身者としては巨大地蔵が頭を残して雪に埋まる土地があるなんて…
スキーってのはそんなとこでやるものなのか…と。
初めてだったわけで、スキーのスの字も知らずにそんな所へ。
もちろんスキーなんて履いてもスキーが成立するわけもなし。

世の中良くしたものでそんな初心者のためにスキー教室ってのがある。
親切だ。
まずはボーゲンから…
ちょっとするとなんとなくコツが掴めてきた。
でもスキー教室はまだまだ続く。
まだまだ続く。
そしてまだまだ続く。
…
おいおい、別にプロもオリンピックも目指すわけじゃない、
いい加減にゲレンデに出してくれ！
と、子供らしくない感情が…

日本人はスキーに限らず全てにおいてこうなんだ、と
その時から感じている。
基礎からコツコツ、積み上げ方式で上へ上へ。
って事は中華系と違って出来る事しかやらないとも言える。

しかし、そう言うやり方、日本以外では
スタンダードでない場合もあるのだなと今頃気付く。
出来ない事を平気でやる、ある意味ちょっと羨ましいのである。
こっちが段差の低い清水の舞台を飛ぶか飛ばないかと
考えている隙に彼らはロープ無しでバンジーを飛んでいるのだから。