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笑わない眼 その後

2012-06-26 08:22:41 | 落語・その他芸能一般

 

笑わない眼 その後
 冒頭の写真は・・小三治 『千早振る』のTV放映を、筆者がデジカメで撮影したもの。笑わな添付写真のような眼ができるようになるのには、芸もさることながら、人間としての修養も積んだんだろうなあ・・

  随分前、blogに「笑わない眼」と題して、柳家小三治の芸風について書いたことがある。小満んと比較して、高座上での「眼」の動き・働きに関して、縷々述べた。
 この時の小三治は、NHKで『金明竹』を演じていた。恐い眼をしていて、眼は最後まで笑わなかった。

 ところが、つい最近、同じNHKで彼の『千早振る』を見た。
 
   まるで別人だった。 眼は、頼みもしないのに、笑いっぱなし! 

 そりゃあそうだろう。いまや落語協会の会長だから・・とは、思わない。やはり師匠である先代の小さんの頸城から脱したと観るべきだろう。
 若い時分から将来を嘱望され、ご本人も“その気になっていた”小三治だった。一気にスターダムに登り詰める彼に冷水を浴びせかけたのは、他ならぬ師匠の先代・小さんだった。
 日頃、弟子に稽古を付けない小さんが、珍しく人気絶頂の小三治を呼んで稽古を付けた。稽古の途中で突然、小さんは言った。「おめえの落語は面白くねえなあ! 俺は散髪に行ってくる・・」。

 今生での彼と師匠小さんとの遣り取りは、これが最初で最後だった。師匠の言葉は、小三治を苦しめた。
 それでも彼が苦しみながらも、老境に達した頃、師匠は逝った。なにも言わずに・・。

 或る日、或る頃、彼は翻然と思ったと吐露している。「いいや・・師匠の言うようには、とても出来ない。俺は俺が出来るようにしか出来ない・・」と。彼の眼が再び笑うようになったのは、この頃からだった・・。
 
 
 
 
 


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