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白山 雅一
(平成13年8月14日 記/㊤の写真は「新宿・末広亭」)
声色(こわいろ)つまり現代流に言えば、声帯模写界の長老・歌謡声帯模写の第一号が、白山 雅一だ。
大正14年生まれの77歳(平成13年8月現在)。
初代・柳家 三亀松に弟子入りしたのが、昭和17年、18歳の時。入門直後から、歌謡声帯模写で師匠と一緒の初舞台を踏んだ。
師匠は、何も教えてくれなかったそうだが、『過剰に演るなよ。デフォルメするなよ』とだけ言ったそうだ。今の物まね芸人に聴かせてやりたい言葉である。流石、三亀松だ。
最近、白山 雅一の生の舞台には、残念ながらお目に掛かったことがない。テレビでは、数回観るチャンスがあった。14日のNHK衛星放送で、久しぶりにお目に掛かることが出来た。
本業の歌謡声帯模写に入る前の前振りで、歌手以外の物まねを数人聴かせてくれた。巧いモノダ。
大河内伝次郎、小西 得郎、花菱 アチャコ、
三遊亭 圓生、
中村 歌衛門・・・何れも素晴らしい。
なかでも、柏木(三遊亭 圓生)と成駒屋(中村 歌衛門)の巧さには、絶句する。目を瞑って聴いていたら、本人と間違えるだろう。病的に似ている。
本業の方は、以下の通り演った。
・ 灰田 勝彦:アルプスの牧場?
♪雲が行く雲が行く・・・題名を忘れた
・ 藤山 一郎:東京ラプソディー
・ 岡 晴夫:東京の花売り娘
・ 東海林太郎:旅笠道中
・ 小畑 実:湯島の白梅
・ 田端 義男:大利根月夜
何せ、灰田 勝彦が死ぬ数日目に、本人から頼まれて銀座の劇場で二日間も代演(?)を勤めただけに、巧い。代演と言ったって、灰田 勝彦のワンマンショーだよ。客が納得したそうだから、凄い。
この時は演らなかったが、田端 義夫(バタヤン)の物まねはは、若いときのバタヤンと今のバタヤンの両方を演ってみせる。これは、文句無しに唸らされる。
白山 雅一が、良いことを言った。
『声までは、真似できない。それを他の方法で似ているように見せるだけだ。声帯は、ひとつしかありません』。蓋し、名言だ。
さすれば、声帯模写という呼び方は、やはり野暮の突き当たりだ。断然!“声色”でなくちゃ!
こうも言った。『世間には、この人の真似だったら、誰にも負けないという素人の方がいるものです。そういう人には、我々は敵いません』これも、至言である。
『あれっ!? 白山 雅一は、最近見ねえなあ。一体、アイツ、どうしてるんだ?』と言われるような形で、世間から消えて行きたいとも言っていた。
いきだねえ!
06.06.05