
蝦夷地こぼれ噺1;「汽車は死語ではなかった」
(写真:立ち待ち岬)
二年半くらい前、“三人旅”に出た。函館→小樽→札幌→余市(ニッカウィスキー工場見学)→新札幌(北海道開拓の村)→千歳(キリンビール工場見学)→支笏湖と方々を経巡る旅だった。
初めに草鞋(わらじ)の紐(ひも)を解いたのは、函館。現在では「烏賊(いか)」やその他の海産物で有名だが、産業そのものはほとんど何もないと云ってもよく、タクシーの運転手の言葉を借りれば「ゴーストタウンです」。1日(日曜日)、2日(月曜日)と二日間滞在したが、人通りも少なく車もあまり走っていない。歩いている人間は、たいがい観光客だ。
「朝市」は有名で、結構繁盛しているものの、これとて観光客だけが頼りで、本来の市場機能は果たしていないらしい。要するに、観光だけが収入源の街のようだ。
結局、函館滞在中、この朝市で二回飯を喰ったが、安くて旨いことは確かだ。イカは「するめイカ」で、今が旬らしい。コリコリして実に旨い。函館を訪れる機会があったら、是非お勧めです。
そのほか、観光スポットとしては、函館空港から市内に向かう途中にある「立待ち岬」「啄木の墓」なども一見の価値はある。
あとは、「五稜郭」「函館山の夜景」「赤煉瓦倉庫街」も名所のひとつだろう。なかでも函館山から眺めるイカ漁の漁船の“漁り火”は、幻想的で神秘的だ。
市内観光はタクシー以外は、市電とバス、それに「てめえ(自分)の足」が中心になる。他にJRの函館駅がある。面白いのは、現地の人は未だに、市電を「電車」と呼び、JRを「汽車」と呼んで区別していることだ。
「汽車」という言葉が死語になったと嘆く声が聞こえるが、ここには未だ残っていた。当地には、それだけ人間的なものが残っているとも云えようが、逆に現代に取り残されて行く函館を象徴しているとも云えそうだ。
市電は、お目当てのレトロ電車・函館ハイカラ号(本当は「號」)には残念ながら乗車できなかった。月曜日は運休だというのも、痛かった。その替わりといってはなんだが、元都電が「1000番台」の名称を貰って、未だに現役で3台も活躍しているのは嬉しいことだった。そのうちの2台は営業運転をしているところが視認できた。感無量だ。(平成14年9月6日記)
1000形1007(元東京都電7000形)
06.04.26