
旅日記:「新疆ウイグル自治区を行く」 ⑦名物・特産品「ハミ瓜」
ハミ瓜を売るウイグル族のおじさん
新疆というと誰しもが真っ先にあげるのが「ハミ瓜」であろう。ダントツの一位といってよいだろう。その次が「シシカバブー」、この二位も堅いであろう。その他順位は別にして、トルファンの干しぶどう、干し杏(アンズ)、ヤンギサルのナイフ、西域の楽器、ざくろ酒、薔薇(ばら)ジャム、玉(ぎょく)、清真(イスラム)麺等々、枚挙に暇がないほどである。果樹園はオアシスの各地に見られ、果物は豊富である。日本で見られるアンズの干したのは、当地の産だそうである。

ところが、「ハミ瓜」という呼び方には大きな問題がある。
もし当地で「ハミ瓜」と呼ぼうものなら、ウィグル人からかなり深刻な抗議、もしくはブーイングを受けることを覚悟せざるを得ないだろう。
それもかなり真剣な!
(中略)
我々が日本の百貨店の果物コーナーで目にするものは、「ハミ瓜」と称して陳列されている。どうして「ハミ瓜」では駄目なのか? 中国人(漢民族)だって、「ハミ瓜」と呼んでいるではないか。そお! そのことが原因なのだ。
漢民族が「ハミ瓜」と呼ぶこと、そのことが真にウィグル人の「お気に召さない」のだ。癪に障るのだ。
わけを話すと、次のようになる。
当地は元来、オアシスの果樹園が多く果物には恵まれており、品種も多く、品質・味とも特産の名に恥じないだけのものを持っている。なかでも瓜・メロン系はザッと十二種類もあり、品質・味とも抜群に優れている。
これらの瓜系十二種類が中国の中原(黄河流域の政治・文化の中心地)に流入する窓口になったのが、新疆の東端の街・ハミであったのだ。それ故、漢人はこれらを総称して「ハミ瓜」と呼ぶようになったという経緯がある。
ところが、所謂「ハミ瓜」の主生産地は「ハミ」ではなく、むしろ新疆の西部地区とくに「カシュガル」を中心とする地域だけに、話はもつれてくる。
これら十二種類の所謂「ハミ瓜」は皆それぞれ固有の名前を持っている。ウィグルの人びとは、それぞれの固有名詞で呼んでいると聴いた。
カシュガルの現地案内人エリキン氏(我々は彼を大統領と呼んだ)は、達者な日本語で「十二の果実は皆それぞれの名前を持っており、味も風味も形状も色も、まるで別物だ。瓜もあればメロンもある。それなのに、何処かの馬鹿が、何もかも一緒にして『ハミ瓜』だと! こういうのを馬鹿の一つ覚えと言うんだ! だいいち、ハミで瓜なんか穫れやしないんだ!」
転瞬(一応、池波 正太郎風…不悪)、私は泥棒猫のような目つきで漢人のガイド・胡 衛新――フゥ ウェイシン氏の顔を盗み見た。勿論、彼も日本語は十分に話せる。律儀で生真面目な彼は、体躯をやや縮めるようにして「済まない」というような顔をしていた。
大統領も、流石、それ以上は言葉を呑み込んだようである。このようなヤリトリが一日のうちに何度となく繰り返されるのだ。
大統領は大学で化学を専攻し、卒業論文では「新疆の河川の重金属による汚染」を取り上げ、科学学術誌に掲載された由。ロシア語・日本語をはじめ、五~六か国語に堪能な才人で、阿刀田 高のファンであるそうだ。(一部略)
『ハミ瓜』の説明が大分長くなり、また大きく脱線をしたようである。
話を元に戻そう。胡氏には、後に「割礼」の咄で、再度登場して貰う予定。
あ、それから『ハミ瓜』は、気が狂いそうになるくらい旨いことを申し添えたい。
一番旨かったのは、砂漠のハイウエイに車を止め、車の影で新聞紙を敷いて、ナイフで切って喰った『ハミ瓜』。これが一番、一等賞!でした。
平成17年5月24日
面白ブログが盛りだくさん「BLOG! TOWON」

新疆というと誰しもが真っ先にあげるのが「ハミ瓜」であろう。ダントツの一位といってよいだろう。その次が「シシカバブー」、この二位も堅いであろう。その他順位は別にして、トルファンの干しぶどう、干し杏(アンズ)、ヤンギサルのナイフ、西域の楽器、ざくろ酒、薔薇(ばら)ジャム、玉(ぎょく)、清真(イスラム)麺等々、枚挙に暇がないほどである。果樹園はオアシスの各地に見られ、果物は豊富である。日本で見られるアンズの干したのは、当地の産だそうである。

ところが、「ハミ瓜」という呼び方には大きな問題がある。
もし当地で「ハミ瓜」と呼ぼうものなら、ウィグル人からかなり深刻な抗議、もしくはブーイングを受けることを覚悟せざるを得ないだろう。
それもかなり真剣な!
(中略)
我々が日本の百貨店の果物コーナーで目にするものは、「ハミ瓜」と称して陳列されている。どうして「ハミ瓜」では駄目なのか? 中国人(漢民族)だって、「ハミ瓜」と呼んでいるではないか。そお! そのことが原因なのだ。
漢民族が「ハミ瓜」と呼ぶこと、そのことが真にウィグル人の「お気に召さない」のだ。癪に障るのだ。
わけを話すと、次のようになる。
当地は元来、オアシスの果樹園が多く果物には恵まれており、品種も多く、品質・味とも特産の名に恥じないだけのものを持っている。なかでも瓜・メロン系はザッと十二種類もあり、品質・味とも抜群に優れている。
これらの瓜系十二種類が中国の中原(黄河流域の政治・文化の中心地)に流入する窓口になったのが、新疆の東端の街・ハミであったのだ。それ故、漢人はこれらを総称して「ハミ瓜」と呼ぶようになったという経緯がある。
ところが、所謂「ハミ瓜」の主生産地は「ハミ」ではなく、むしろ新疆の西部地区とくに「カシュガル」を中心とする地域だけに、話はもつれてくる。
これら十二種類の所謂「ハミ瓜」は皆それぞれ固有の名前を持っている。ウィグルの人びとは、それぞれの固有名詞で呼んでいると聴いた。
カシュガルの現地案内人エリキン氏(我々は彼を大統領と呼んだ)は、達者な日本語で「十二の果実は皆それぞれの名前を持っており、味も風味も形状も色も、まるで別物だ。瓜もあればメロンもある。それなのに、何処かの馬鹿が、何もかも一緒にして『ハミ瓜』だと! こういうのを馬鹿の一つ覚えと言うんだ! だいいち、ハミで瓜なんか穫れやしないんだ!」
転瞬(一応、池波 正太郎風…不悪)、私は泥棒猫のような目つきで漢人のガイド・胡 衛新――フゥ ウェイシン氏の顔を盗み見た。勿論、彼も日本語は十分に話せる。律儀で生真面目な彼は、体躯をやや縮めるようにして「済まない」というような顔をしていた。
大統領も、流石、それ以上は言葉を呑み込んだようである。このようなヤリトリが一日のうちに何度となく繰り返されるのだ。
大統領は大学で化学を専攻し、卒業論文では「新疆の河川の重金属による汚染」を取り上げ、科学学術誌に掲載された由。ロシア語・日本語をはじめ、五~六か国語に堪能な才人で、阿刀田 高のファンであるそうだ。(一部略)
『ハミ瓜』の説明が大分長くなり、また大きく脱線をしたようである。
話を元に戻そう。胡氏には、後に「割礼」の咄で、再度登場して貰う予定。
あ、それから『ハミ瓜』は、気が狂いそうになるくらい旨いことを申し添えたい。
一番旨かったのは、砂漠のハイウエイに車を止め、車の影で新聞紙を敷いて、ナイフで切って喰った『ハミ瓜』。これが一番、一等賞!でした。
平成17年5月24日
面白ブログが盛りだくさん「BLOG! TOWON」