
ねえ、カー太、スズメ達、今日も来なかったわね。
他の野鳥も殆んど見かけないし……みんな何処にいるだろうね。
もう、これ以上待っても来ないと思うから、また明日にしましょ。
陽も沈みかけてるし……カー太、母ちゃん帰るからね。
朝夕2回、スズメ達を誘導する事で何とか森の近くまでは、ついてくるようになりました。
でも、それ以上は近づいてこようとしません。
生きる=警戒心(彼らは、空腹よりもこちらを優先します)

どうしたのカー太、ねぐらに帰らないの?

この場所は、山の斜面が遊歩道のように整備されており、山と言うよりは小高い丘と
言った方がピッタリかも知れません。
頂上はもう少し上になりますが、そこから先はもう何もないと思っておりました。
でも……何となく気になり登って見る事にしました。
えッ!これって……まさか……目の前に広がる景色に思わず立ちすくんでしまいました。
この頂上に立つまでは、頭の中はスズメ達の事でいっぱいだったはずのに・・・
心の中は、申し訳ない気持ちで張り裂けそうに苦しかったはずなのに・・・
初めての景色に心が奪われ、一瞬、スズメ達の事が頭から離れてしまいました。

そして、今まで抑えていた気持ちが抑えきれなくなり、後から後から涙が溢れ出て来ました。
ごめんね。ごめんね……。