アカの不思議な行動は、物置小屋の一件で全て納得ができました。
自分が連れてきたネコの為にご飯(煮干しや魚の切れ端)をせっせと運んでいたのです。
弟の落としたおにぎりを持ち去ったのは、その為だったのでしょう。
夕方、釣りから帰って来た父は『今日は、殆んど釣れなかった』と、言って2~3匹の小さな小魚を網から取り外しました。
(当時は、クーラーBOXなどありませんでしたので、手桶のようなものに網を入れて使っておりました。まだまだ貧しい時代でしたので、釣りは家族の食料調達の為でもありました)
昼間の件を知った父は、周りに聞こえないようにそっと『アカにはれっきとした本妻がいるべ。じゃなにか?妾か?』
すると、つかさず祖母は、『違う!!妾は外に住むもんじゃ。アカはちゃんと家のはなれに住まわせたべ。だから立派な側室じゃ!』明治生まれの祖母はキッパリと言い切りました。
(確かに物置小屋も見方によれば、はなれだけど・・・)
実は、アカには立派なお屋敷に住む本妻がおりました。アカはそこのご隠居さん(飼い主さん)に気に入られ、通い婿としての役割も果たし子供も2匹もうけましたが不幸にも生まれて間もなく死んでしまいました。
そのような経緯もありアカとしては何とか子孫を残そうとしたのかも知れません。
そんな時、目に留まったのが今回のネコだったようです。
祖母が最初に言ったように、側室と言う名にふさわしい真っ白な美猫でした。
************************
祖母は居間に座ると、アカを膝の上に載せ優しく頭をなでながら諭すように話しかけました。
『アカ、今までなんで黙ってたんだ。ちゃんと話せばよかったべ。あんな所で赤ん坊生ませたら側室様も赤ん坊もかわいそうだべ』
ばあちゃんは、おいらにそう言ったけど、おいらだって話せるもんなら話したがった。
だけど仕方ねえべ。おいらニャーニャーしか話せねえもん。
『アカ、もう何も心配しなくても大丈夫だぞ。側室様にはばあちゃんのおかずとご飯を分けて上げるからな。これからは人様の物を取ったりしたらダメだぞ。分かったべ。』
ばあちゃんは、おいらにそう言ってくれたけど、煮物と沢庵だけはいらないからね。
嫁が好きなのは魚だけだから・・・そこんとこよ~く分かってね。
(アカは、時折耳を傾けながら、ニャーといって祖母の話をじーっと聞いていましたが、何か思い立ったように部屋から出て行きました)
『ヤッパリ、子供と側室様が気になるだな~自分が守ってやらねばと思ってるんだべ。健気だな・・・』
***********************
祖母は、離れに住むネコを側室様と言ってとても良く可愛がりました。
側室様も私たちには中々慣れませんでしたが、祖母だけには心を許し抱かれるようになりました。
そして、3匹の子ネコ達の目も空いて可愛い盛りを迎えました。
一方父は、祖母が冗談で言った『ご飯を分けて上げる』と言う言葉を耳にし、年寄りにそんな惨めな事はさせたくないと、毎週、休日の前の晩には夜釣りに行くようになりました。
ネコ総勢5匹、犬1匹、ニワトリ3羽、そして人間が7匹、あッ!違った、7人。
生き物の方が人間よりも多くなって益々貧乏になりました。
父は家族からの励ましを受けながら、生き物たちの期待を一身に背負い、下僕となって夜釣りに精を出しました。
(家からかなり離れた場所に、イシモチという魚が釣れる海岸が有ります。
イシモチはその名の如く頭の中に小さな白い石が入ってる魚ですが、夜しか釣れませんでした)
***********************
アカは5年と短い生涯でしたがアカなりに精いっぱい生きました。
そしてシッカリと自分の子孫を残すことが出来ました。
『おいらのネコ生に悔いはなし!! 満足じゃ!!』
多くの生き物たちと暮らした思い出はまだまだ沢山あります。
いずれまた折を見て書いて見たいと思います。
※最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。
自分が連れてきたネコの為にご飯(煮干しや魚の切れ端)をせっせと運んでいたのです。
弟の落としたおにぎりを持ち去ったのは、その為だったのでしょう。
夕方、釣りから帰って来た父は『今日は、殆んど釣れなかった』と、言って2~3匹の小さな小魚を網から取り外しました。
(当時は、クーラーBOXなどありませんでしたので、手桶のようなものに網を入れて使っておりました。まだまだ貧しい時代でしたので、釣りは家族の食料調達の為でもありました)
昼間の件を知った父は、周りに聞こえないようにそっと『アカにはれっきとした本妻がいるべ。じゃなにか?妾か?』
すると、つかさず祖母は、『違う!!妾は外に住むもんじゃ。アカはちゃんと家のはなれに住まわせたべ。だから立派な側室じゃ!』明治生まれの祖母はキッパリと言い切りました。
(確かに物置小屋も見方によれば、はなれだけど・・・)
実は、アカには立派なお屋敷に住む本妻がおりました。アカはそこのご隠居さん(飼い主さん)に気に入られ、通い婿としての役割も果たし子供も2匹もうけましたが不幸にも生まれて間もなく死んでしまいました。
そのような経緯もありアカとしては何とか子孫を残そうとしたのかも知れません。
そんな時、目に留まったのが今回のネコだったようです。
祖母が最初に言ったように、側室と言う名にふさわしい真っ白な美猫でした。
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祖母は居間に座ると、アカを膝の上に載せ優しく頭をなでながら諭すように話しかけました。
『アカ、今までなんで黙ってたんだ。ちゃんと話せばよかったべ。あんな所で赤ん坊生ませたら側室様も赤ん坊もかわいそうだべ』
ばあちゃんは、おいらにそう言ったけど、おいらだって話せるもんなら話したがった。
だけど仕方ねえべ。おいらニャーニャーしか話せねえもん。
『アカ、もう何も心配しなくても大丈夫だぞ。側室様にはばあちゃんのおかずとご飯を分けて上げるからな。これからは人様の物を取ったりしたらダメだぞ。分かったべ。』
ばあちゃんは、おいらにそう言ってくれたけど、煮物と沢庵だけはいらないからね。
嫁が好きなのは魚だけだから・・・そこんとこよ~く分かってね。
(アカは、時折耳を傾けながら、ニャーといって祖母の話をじーっと聞いていましたが、何か思い立ったように部屋から出て行きました)
『ヤッパリ、子供と側室様が気になるだな~自分が守ってやらねばと思ってるんだべ。健気だな・・・』
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祖母は、離れに住むネコを側室様と言ってとても良く可愛がりました。
側室様も私たちには中々慣れませんでしたが、祖母だけには心を許し抱かれるようになりました。
そして、3匹の子ネコ達の目も空いて可愛い盛りを迎えました。
一方父は、祖母が冗談で言った『ご飯を分けて上げる』と言う言葉を耳にし、年寄りにそんな惨めな事はさせたくないと、毎週、休日の前の晩には夜釣りに行くようになりました。
ネコ総勢5匹、犬1匹、ニワトリ3羽、そして人間が7匹、あッ!違った、7人。
生き物の方が人間よりも多くなって益々貧乏になりました。
父は家族からの励ましを受けながら、生き物たちの期待を一身に背負い、下僕となって夜釣りに精を出しました。
(家からかなり離れた場所に、イシモチという魚が釣れる海岸が有ります。
イシモチはその名の如く頭の中に小さな白い石が入ってる魚ですが、夜しか釣れませんでした)
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アカは5年と短い生涯でしたがアカなりに精いっぱい生きました。
そしてシッカリと自分の子孫を残すことが出来ました。
『おいらのネコ生に悔いはなし!! 満足じゃ!!』
多くの生き物たちと暮らした思い出はまだまだ沢山あります。
いずれまた折を見て書いて見たいと思います。
※最後までご覧いただきまして本当にありがとうございました。