チビのおしゃべり日記

お星さまになったチビへ
どんぐり母ちゃんが語りかけます。
ねえ、チビ・・・聞こえる?

サザエさん一家の波平さんのように・・・。

2018年06月22日 | 日記
病室の椅子にうつむき加減に座る弟の頭頂部は、
蛍光灯に反射して神々しいほどにテカテカと光っていました。
顔の表情も亡くなった父親にそっくりになってきました。
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どんぐりは4人姉弟です。
弟は上から3番目の長男として生まれました。
これまで、地元から一歩も離れることなく実家を守ってくれてます。
姉弟の中では一番の親孝行で家族思いの優しい弟です。

最初は車で見舞いに来ると言いましたが『車では絶対に来ないように』と
強く反対しました。
行き帰りの事を考えると心配のあまり治る病気も治りません。
万が一、事故にでも遭遇したら家族に申し訳が立ちません。

弟は素直に応じてくれましたが、本心は車で来たかったのでしょう。
田舎と言えば何処へ行くのも殆んど車。

都会の電車など乗った経験がない弟にとって、
果たして上手く乗り継ぎが出来るかどうか、そちらの方が
不安だったと思います。

以前は、特急の乗り換えは殆んど上野でしたが
つい最近は品川まで乗り入れが出来るようになり便利になりました。

しかし、品川も新幹線へ直結してます。
休日ともなれば乗り換えの混雑ぶりは並大抵ではありません。

車内での座る席など皆無に等しいです。
満員電車に乗った経験が無い彼にとって目的地へ着くまでは
さぞかし地獄のような時間だったと思います。

途中の駅で、目の前の席が空いたので座ろうとしたら
後から乗って来たおばさんと目が合ってしまい
席を譲ったそうです。

病室へ入って来た時は、どちらが病人か分からないような疲れた顔をしていました。
弟にはまだまだ元気でいてもらわなければなりません。

『心配しなくても大丈夫!
姉ちゃんは、まだまだ死なないから。
それよりも、ずいぶん髪の毛が無くなっちゃたね』

『そんなことねぇベよ~、まだ少し残ってっぺ?
姉ちゃんよりはおれの方があっとぉ~』(髪があるという意味です)
(今ではなかなか聞けない、貴重な茨城弁丸出しで弟はしゃべってくれました)

そして頭頂部に残ったわずかな髪を大事そうに撫で始めました。

狭い病室です。カーテン越しに隣から小さな笑い声が漏れてきました。
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弟のテカテカ光る頭を眺めながら、サザエさん一家の波平さんの頭を思い浮かべました。
一本だけになるのも時間の問題だな・・・
私は心の中でそうつぶやきました。


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