"作曲家"の林光(はやし・ひかる、1931-2012)が昨年9月、
散歩中に転倒して頭部を強打し、意識不明がつづいてたが、
去る1月5日に死亡したと報道されてた。今から39年前、
NHKの大河ドラマは、斎藤道三とその女婿織田信長を描いた
司馬遼太郎原作の「国盗り物語」だった。私は子供の頃から
NHKの大河ドラマはほとんど観なかったし、
司馬遼太郎にもまったく興味がなかったが、これだけは観てた。
慶應の普通部にも中等部にも合格者名簿に載らなかった
拙脳なる私は公立中に行ってた。同番組はその
同級生の間で共通の話題となってたのでしかたなく、
途中から観るようになったのである。
斎藤道三=平幹二朗、織田信長=高橋英樹、
明智光秀=近藤正臣、羽柴秀吉=火野正平、
というキャストだった。この主役や準主役級以外に
印象に残ってるのは、まず、
雑賀孫市(鈴木重秀)役の林隆三である。それから、
室町幕府第13代将軍足利義輝役の竹脇無我である。
義輝は対立してた三好三人衆と松永弾正久秀の大軍に
二条の館を襲撃されて討ち死にした。
義輝は上泉伊勢守や塚原卜伝に剣を学んだ
「剣豪将軍」と後世呼ばれてる人物である。このときも、
<足利家に伝わる銘刀を何本も床に突き立てて、
刃こぼれするたびに取り替えながら敵兵を次々に斬り倒し>
て応戦したという。実際に将軍の数十名ほどの手勢の
応戦ぶりは相当で、なかなか義輝を誅せなかったらしい。が、
所詮は多勢に無勢。奮戦虚しく、ついには
義輝は四方から畳を盾にして同時に突きかかられたとのことである。
ここで特筆すべきは、
この状況が17年後の「本能寺の変」に酷似してることである。
京都において約1万の大軍で軽い防塞の居所の中の、
数十名の近習だけの標的を取り囲んで襲撃し炎上させる、
というものである。
[五月雨は、露か涙か。ほととぎす。わが名をあげよ、雲の上まで]
これが、御所を大軍に囲まれて死を覚悟した義輝の辞世の歌とされてる。
[ときは今、あめが下知る、五月哉](光秀)
……[水上まさる、庭の夏山](愛宕西之坊威徳院住職行祐法院)
亡命中の父義晴から将軍職を譲られたのは、義輝11歳のときだった。
将軍就任式は、亡命先の近江坂本日吉神社で執り行われた。ともあれ、
この義輝の壮絶な最期を当時のイケメンオヤジ竹脇無我が演じた。
さて、
そんな「国盗り物語」のBGMを担当してたのが、
林光だった。オウプニングの曲は、印象に残ってる。
(以下は39年前の記憶から起こしたもので、
原作とは大きくかけ離れたものであるかもしれないので、
悪しからず了承いただきたい)
[曲はイ短調、おそらく4/4拍子、四分音符=144ほど]
♪ラー●●・<ドー●●・>ラー●●・<ドー●●♪
という伴奏に乗って、木管が
♪ミー│<ラーー>ソ・<ラ<シ<ドーー・・ーーーー、・>シ<ド│
>ラーー>ソ・<ラ>ミ<ラーー・・ーーーー・ーー、>ミ<ソ│
<ラーー>ソ・<ラ<ド<ミーー・・ーーーー・ーーー、<ソ│
>ミ>♭ミ>レ>ラ・ーーーー・・ーーーー・ーーーー♪
という主題を吹く。トランペットが合いの手を入れ、
ソ連の作曲家どもふうに木琴が加わると、
主題は弦に引き継がれる。そこにホルンが
オッブリガートを吹きまくる。イ短調の主和音で休止されると、
一転、曲は四分音符=96程度に減速され、ニ長調に変じられる。
エルマー・バーンスタインの西部劇映画ふうの主題を
弦がのびのびと歌い、ホルンがオッブリガートを吹く。
♪ソーーー│<ドーーー・<ソーーー・・>ファー>ミー・ーー>ドー│
<レー>ラー・ーーーー・・ーーーー、・ラー>ソー│
<ラー<ドー・ーーーー・・ーーーー、・<レー>ドー│
>シー>ソー・ーー>ミーー・・ーーーー、・ミーーー│
<ファー>ミー・>レー<ファー・・ーーーー、・ファーーー│
<ソー>ファー・>ミー<ソー・・ーーーー、・ソーーーー│
<ソーーー・>♯ファーーー・>ミー>ドー・ーー<レー│
ーーーー・ーーーーー・・ーーーー♪
戦国時代の勇壮・悲哀を表すかのように
短三和音(マイナー・コウド)が効果的にちりばめられてる。
この主題はトランペットの吹奏で繰り返される。いっぽう、
「国盗り物語」から4年後の大河ドラマ、
同じく司馬遼太郎原作で、大村益次郎を描いた
「花神」では、シューバートの「アヴェ・マリア」の伴奏をパクッた
リームスキー=コールサコフの「シェヘラザード」第1楽章主部の
低弦による6連符アルペッジョふうな伴奏に乗せて
主題を高弦の低音部に弾かせる書法を見せた。
指揮は山田一雄だった。ちなみに、この当時まだ、
「国盗り物語」のテーマ音楽のほうを指揮した
森正は生きている、のだった。
散歩中に転倒して頭部を強打し、意識不明がつづいてたが、
去る1月5日に死亡したと報道されてた。今から39年前、
NHKの大河ドラマは、斎藤道三とその女婿織田信長を描いた
司馬遼太郎原作の「国盗り物語」だった。私は子供の頃から
NHKの大河ドラマはほとんど観なかったし、
司馬遼太郎にもまったく興味がなかったが、これだけは観てた。
慶應の普通部にも中等部にも合格者名簿に載らなかった
拙脳なる私は公立中に行ってた。同番組はその
同級生の間で共通の話題となってたのでしかたなく、
途中から観るようになったのである。
斎藤道三=平幹二朗、織田信長=高橋英樹、
明智光秀=近藤正臣、羽柴秀吉=火野正平、
というキャストだった。この主役や準主役級以外に
印象に残ってるのは、まず、
雑賀孫市(鈴木重秀)役の林隆三である。それから、
室町幕府第13代将軍足利義輝役の竹脇無我である。
義輝は対立してた三好三人衆と松永弾正久秀の大軍に
二条の館を襲撃されて討ち死にした。
義輝は上泉伊勢守や塚原卜伝に剣を学んだ
「剣豪将軍」と後世呼ばれてる人物である。このときも、
<足利家に伝わる銘刀を何本も床に突き立てて、
刃こぼれするたびに取り替えながら敵兵を次々に斬り倒し>
て応戦したという。実際に将軍の数十名ほどの手勢の
応戦ぶりは相当で、なかなか義輝を誅せなかったらしい。が、
所詮は多勢に無勢。奮戦虚しく、ついには
義輝は四方から畳を盾にして同時に突きかかられたとのことである。
ここで特筆すべきは、
この状況が17年後の「本能寺の変」に酷似してることである。
京都において約1万の大軍で軽い防塞の居所の中の、
数十名の近習だけの標的を取り囲んで襲撃し炎上させる、
というものである。
[五月雨は、露か涙か。ほととぎす。わが名をあげよ、雲の上まで]
これが、御所を大軍に囲まれて死を覚悟した義輝の辞世の歌とされてる。
[ときは今、あめが下知る、五月哉](光秀)
……[水上まさる、庭の夏山](愛宕西之坊威徳院住職行祐法院)
亡命中の父義晴から将軍職を譲られたのは、義輝11歳のときだった。
将軍就任式は、亡命先の近江坂本日吉神社で執り行われた。ともあれ、
この義輝の壮絶な最期を当時のイケメンオヤジ竹脇無我が演じた。
さて、
そんな「国盗り物語」のBGMを担当してたのが、
林光だった。オウプニングの曲は、印象に残ってる。
(以下は39年前の記憶から起こしたもので、
原作とは大きくかけ離れたものであるかもしれないので、
悪しからず了承いただきたい)
[曲はイ短調、おそらく4/4拍子、四分音符=144ほど]
♪ラー●●・<ドー●●・>ラー●●・<ドー●●♪
という伴奏に乗って、木管が
♪ミー│<ラーー>ソ・<ラ<シ<ドーー・・ーーーー、・>シ<ド│
>ラーー>ソ・<ラ>ミ<ラーー・・ーーーー・ーー、>ミ<ソ│
<ラーー>ソ・<ラ<ド<ミーー・・ーーーー・ーーー、<ソ│
>ミ>♭ミ>レ>ラ・ーーーー・・ーーーー・ーーーー♪
という主題を吹く。トランペットが合いの手を入れ、
ソ連の作曲家どもふうに木琴が加わると、
主題は弦に引き継がれる。そこにホルンが
オッブリガートを吹きまくる。イ短調の主和音で休止されると、
一転、曲は四分音符=96程度に減速され、ニ長調に変じられる。
エルマー・バーンスタインの西部劇映画ふうの主題を
弦がのびのびと歌い、ホルンがオッブリガートを吹く。
♪ソーーー│<ドーーー・<ソーーー・・>ファー>ミー・ーー>ドー│
<レー>ラー・ーーーー・・ーーーー、・ラー>ソー│
<ラー<ドー・ーーーー・・ーーーー、・<レー>ドー│
>シー>ソー・ーー>ミーー・・ーーーー、・ミーーー│
<ファー>ミー・>レー<ファー・・ーーーー、・ファーーー│
<ソー>ファー・>ミー<ソー・・ーーーー、・ソーーーー│
<ソーーー・>♯ファーーー・>ミー>ドー・ーー<レー│
ーーーー・ーーーーー・・ーーーー♪
戦国時代の勇壮・悲哀を表すかのように
短三和音(マイナー・コウド)が効果的にちりばめられてる。
この主題はトランペットの吹奏で繰り返される。いっぽう、
「国盗り物語」から4年後の大河ドラマ、
同じく司馬遼太郎原作で、大村益次郎を描いた
「花神」では、シューバートの「アヴェ・マリア」の伴奏をパクッた
リームスキー=コールサコフの「シェヘラザード」第1楽章主部の
低弦による6連符アルペッジョふうな伴奏に乗せて
主題を高弦の低音部に弾かせる書法を見せた。
指揮は山田一雄だった。ちなみに、この当時まだ、
「国盗り物語」のテーマ音楽のほうを指揮した
森正は生きている、のだった。
アメブロで大河ドラマの記事を更新しています。
一大河と申します。
このたび、大河ドラマ『国盗り物語』のレビューを書きました。
同じく『国盗り』関連の記事を書かれているブログ様を検索しておりましたところ、チャイコフスキー庵さまに行き着いた次第でございます。
トラックバックを貼らせていただきました。
今後とも、よろしくお願いいたします!
コメント及びトラックバック、ありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
ただ、申しわけないのですが、
本文で書いたとおり、大河ドラマはこの
「国盗り物語」以外は、開始の1、2話だけであとは
大概はみてません。この「国盗り物語」の翌年の
「勝海舟」だけは前年からの勢いでみてましたが、
渡哲也が降板してからみなくなってしまいました。ただ、
冨田勲の主題曲だけはよく覚えてます。じつは、
冨田氏は前年の林氏の「国盗り物語」の主題曲の
♪ソ<ド<ソ>ファ>ミ♪という音型を「勝海舟」の主題音楽の
クライマックスに挿し込んで、リスペクトの意を表していたのです。
「創造物」というものは、こういうセンチメンタルなことができるから
素敵だなあと思うのです。