2021年は私にとって在仏ン十年目にして初めて訪れた、フランス現代文学への開眼の年でした。
2020年11月初頭、コロナ禍で会えないままだった父の訃報がとうとう実家から届き、パリの家族に留守を頼んで単独で帰省した東京。理解ある家族のお陰で2ヶ月ちょっともの間を実家の母とゆっくり過ごすことができ、年明けの2021年1月8日にパリに戻りました。その日ドゴール空港まで迎えに来てくれた夫の車のラジオから流れてきた番組で話題になっていたのが、前日の7日にフランスで発売され衝撃の大ベストセラーとなったノンフィクション作品「La familia grande」。「この本の評判聞いた?東京でも話題になっていたでしょ?」と夫。日本で翻訳版が出版されたのなら兎も角、フランスの出版物が日本で話題になるはずないじゃない!と、いつもの事ながら夫の純フランコ・フランセ振りには苦笑。翌日、近所のスーパー、モノプリに買い物に行くと、話題の「ラ・ファミリア・グランデ」はここでも書籍コーナーに平積みに。フランスの書店で新刊書籍を手に取って買って読もうと思うことなど滅多に無いのですが、「これか〜」と珍しく手に取り購入しました。
前回で詳しくお話ししましたが、著者のカミーユ・クシュネルさんは国境なき医師団の設立者でもあるベルナール・クシュネル氏の娘さん。本は彼女の義父(母親の再婚相手)で政界や知識人界にも多大な影響力を持っていた政治学者のオリヴィエ・デュアメル氏による彼女の双子の弟への性的虐待の告発本でした。従来なら揉み消されてしまうようなフランスの上流社会での恥ずべき出来事の告発であり、彼女の勇気は並大抵のものではなく、この本の出版が社会に及ぼした波紋は大きかったようです。
普段、現地語の新刊本は如何せん買っても最後まで読み終わらないことが多いいのですが、時代背景も自分の子供時代と重なる部分があり、子供の視線で語られた複雑な家族の物語は個人的にも心に響くものがあって、あっという間に読み終わりました。物語の内容も場所もドラマも全く自分とは関係がありませんが、ひとりの女性によって語られたある家族の物語には、その時の私の心境と共鳴するものがありました。
それからしばらくして、パリのママ友さんからたまたま「パリ市講座の申し込み期限が伸びたよ!」と教えて頂いたご縁で、それじゃあとダメ元で「外国人向けフランス語創作書き方講座」に申し込んだのでした。同年3月3日にあった面接試験に運よく合格。その折に先生からご示唆頂いたマルグリット・デュラス・ワールドにどっぷりとはまり込んでしまい、その大航海はいまも継続中です。
そして3月10日から始まった授業では、毎回何人かのフランス現代作家の作品の抜粋を読み、それを模して書いてみるというプロセスで、今までぜんぜん知らなかった現代フランス文学の世界に触れることができました。チャーミングでステキな先生に感謝です。
毎回の授業が楽しみで、3ヶ月の講座期間は本当にあっと言う間に過ぎてしまいました。自分の娘か息子くらいの若いクラスメートと一緒に勉強できたのもスゴクいい刺激でした(笑)。
イギリス、ギリシャ、スペイン、メキシコ、コロンビア、チリ、アルゼンチン、ブラジル、台湾、イスラエル、ラトビア… 世界各国からパリに集まったクラスメート達。最初の生徒数は20名ほどでしたが、最後まで毎回出席していたのは10~15人。人類学や文学の研究に来ている学校の先生や研究者、映画関係の勉強や仕事をしている人などが多く、老いも若きもクリエイティブでとても素敵なメンバーでした。
クラスの全員が講座期間中に一度、自分の好きな一冊、作家を皆に紹介すると言う宿題があったのですが、アルゼンチン人のクラスメートが紹介してくれた、80歳になって初めて日の目を見たという彼女の国の女性作家の話には沢山の勇気を貰いました(笑)。
そう、人生はチャレンジ。最後まで自分を信じて精一杯生き続けること!人生の最後まで学び続け、作り続けられたら、これ以上の幸せはないだろう!とつくづく思いました。もちろん、愛する家族との幸せも✨
今日も全てのご縁に、お陰さまに感謝いたします。
これからは少しずつフランス語でも文章を書いていこうと挑戦中。ン十の手習い!でも80まではまだまだあるし、私も最後まで頑張ります(笑) 。