さて、遭難寸前で狸のタクシーに助けられたつる姫は
そのタクシーの中で、運転手さんに尋ねていたのです。
もう一つ先の山の上に、行ってみたい神社があったのです。
あそこまでは、30~40分かかるよ・・・と運転手さん。
多分この人は、短めに言っているのだろうな、と
先ほどの経験を踏まえて
つる姫は、東京に帰るまでにここで費やせる時間を
粗末な頭脳ではありますが、パパっと計算しました。
引き算までできれば、人は生きていけます。
そうそ、この計算力
あの学業成就の神社のご利益かも!
遭難しそうになったことなどもう忘れて
懲りもせず山道を上り始めました。
最初から、太ももに来るような急な上り坂です。
上から人が降りてきたので、神社までどの位かかるか聞きました。
その方は、つる姫の足もとを見て
困ったような顔をしながら
「女性の足で40分弱でしょうか・・」
と、教えてくださいました。
「あの先は、その靴じゃ無理ですよ。雪も残ってるし」
つる姫は娘から(無断で)借りたムートンのブーツを履いていたのです。
舗装された道とはいえ、勾配はすごく急で
少し大き目だった靴の中、足が固定されていないので
非常に歩きにくかったのです。
それでもつる姫は、引き返そうとは思いませんでした。
ここまで来て、行かずに帰れるかっ!
おなかが空いたころには、お店屋さんのない山道に入っていました。
動いていた自販機で水を買って、
リュックに入っていたカロリーメイト的なものを口にしながら
てくてくと上るつる姫。
道路のわきには、先日降った雪が残っています。
わ~い!雪だぁ、と心の中ではしゃいでみます。
後ろから、車が一台上ってきました。
家族連れでしょうか、中からしっかり見られました。
なぜにこんな山道を歩いて上るか~って、思ったんでしょう。
曲がりくねった道をどんどん上ると
心臓はバクバク、のどはカサカサ、頬っぺはパリパリ。
このまんま ミイラ化しそうな 冬の山道 つる姫
やっとこさたどり着いた、吉野水分神社の赤い鳥居
おなかが空いたなあ・・・
それでも、力をふりしぼり
凍った石段、滑りそうになりつつ、
命の3番目くらいに大切なカメラをかばいながら階段を上りますと
おお、歴史を感じる佇まい。
雪が積もって、ますます趣があります。
先ほどの車の家族がいました。
どうやら、安産祈願に来られたようで
おなかの大きなお母さんに
女性の宮司さんがお祓いをしていました。
静かな山の中に宮司さんの声が
厳かに響き渡っていました。
それにしてもおなかが空いたなあ
静けさや 腹にしみいる 太鼓の音 つる姫
不審なおねえさん(むふふ)は、神社の下の民家の犬に
がるるっ、わん!と吠えられます。
吠えた後 目をそらすわんこの いじらしさ つる姫
足の短い愛犬を思い出しつつ、つる姫は坂道を下ります。
ああ、スタート地点の蔵王堂がはるか下界に・・・・
こうしてみると、つる姫はあの蔵王堂が建っている山の向こう側で
遭難しそうになっていたんですね。そうなんですね~。
先ほどの家族連れの車が、上から下りてきました。
「・・・のせて~」と、ちらと思いましたが
乗ってる人が狸でもない限り、そんな勇気はないでしょう。
自力で山を上りそして下ったつる姫は
予定通り、料金が安い方の普通電車に乗って奈良まで戻り
思い通り、夜の9時頃までには、つる姫城に帰って
思惑通り、炬燵でビールを飲んでおりました。
素晴らしい
あの神社のご利益だあ
しかし、家族には、無茶をする!!と怒られました。
実は遭難しかかった時に、携帯の電池がほとんどなかったので
「山道で迷っていつ帰れるか分からない」
と電話したきり、電池が切れて音信不通だったのですもん。
終わりよければすべてよしの山~♪
めでたしめでたし。
助けてくれた狸さんに感謝をこめて つる姫
他にも多少不思議体験はありますが
折々に。