ある日、街に滅多に降らない大雪が降りました。
しばらく、病気でお外に出れなかったみいちゃんは
お母さんに無理矢理頼んで、雪の降るお庭にでました。
重たくて、大きな雪がぽたぽたと降っています。
みいちゃんの小さなてのひらに落ちると、あっという間にとけてなくなります。
みいちゃんは、大喜びです。
お口を大きく開けて、落ちてくる雪を食べてみたり
小さく丸めた雪の球を、お母さんに向かって投げて
きゃあきゃあはしゃいでいます。
お母さんは、ひやひやしながらみいちゃんを見守っていますが
こんなに楽しそうなみいちゃんを見るのは久しぶりです。
「お母さん、ゆきだるまつくろうよ」
みいちゃんは、お母さんに手伝ってもらって
よいしょ、よいしょと雪の玉を転がして
丸い大きな雪の玉を作りました。
次に、さっき作ったより少し小さいのを作って、
お母さんが、よっこいしょと大きい方に乗せました。
みいちゃんの背丈ほどもある、雪だるまの完成です。
「ひとりじゃかわいそうだね」
少しお咳が出てきたみいちゃんは、
お母さんに頼んで
もう一つ、同じくらいの大きさの雪だるまを作ってもらいました。
お庭に小さくしゃがみこんだみいちゃんは、目をキラキラさせて
お母さんが作る雪だるまを見ていました。
もう一つの雪だるまが完成すると
みいちゃんは石を拾ってきて、おめめを入れました。
お庭にあった葉っぱを挿して、おしゃれしてあげました。
「お熱が出るといけないから、もうおうちに入りましょう」
みいちゃんのほっぺは真っ赤です。
小さなおてても凍えそうです。
でも、みいちゃんはご機嫌です。
いつもなら昼間無理をすると、夜にお熱が出たり咳が出たりするのですが
みいちゃんは、元気いっぱいです。
いつもよりたくさんご飯を食べて、ぐっすり眠りました。
翌朝、窓から雪だるまさんを見ると、
朝日に照らされて仲良く日向ぼっこをしているように見えます。
「お母さん、あまり天気がいいと、雪だるまさんとけちゃうよね」
「うん、とけて小さくなってお空にのぼるんだよ。
あんなに大きいと重たすぎてお空を飛べないものね。
お空はここよりもずっと寒いから、絶対にとけないの。
他のおともだちの作った雪だるまさんたちと、お空で一緒に遊べるかもしれないね」
「そう!?」
みいちゃんは、雪だるまがとけるのはさみしかったけど
お空にのぼる雪だるまを想像して、気持ちが明るくなりました。
翌朝早く、お母さんが新聞を取りに表に出てみると
雪だるまの頭が二つとも落ちて転がっています。
こんな姿を見たら、みいちゃんが悲しむと思って
お母さんは、雪だるまの頭をもう一度胴体に乗せました。
見ると、白いお顔に、靴の跡がついています。
誰かが足で蹴飛ばしたのね。。
お母さんは怒りと言うより、悲しみを覚えました。
病気でほとんどお外で遊べないみいちゃんが一生懸命作った雪だるまを
こんな風に蹴飛ばすなんて、きっと心が淋しい人の仕業ね。
病気と言うのは、体にも心にもあるのだな、とお母さんは思い
みいちゃんをとても愛おしく思いました。
また少しお咳が出てきたみいちゃんは、
毎日、窓から雪だるまさんの後姿を確認しました。
仲良く寄り添う雪だるまの顔に、足跡がついている事に気づくことなく
やがて雪だるまはてとけて、お空に行きました。
その日から、みいちゃんは空を見てにこにこする日が増えました。
空の上で、数えきれないほどたくさんの
小さな雪だるまが遊んでいるのが見えているのでしょうか。
そして、みいちゃんは
少しずつ元気になっていきました。
おしまい
今日は阪神淡路大震災から18年でしたね。
あの朝の事は東京にいた私もはっきりと覚えています。
ご冥福をお祈りいたします。
ご訪問くださりありがとうございました。
感謝をこめて つる姫
悲しい結末
今朝見たら、雪だるまの頭が道に投げ飛ばされてました
みいちゃんには秘密ですよ