5月30日(火)ヴィオラスペース2017 vol.26 コンサートⅠ
「フレンチ・タッチ」~フランス文化の影響を受けて
上野学園 石橋メモリアルホール
1.ノックス/マラン・マレ「スペインのフォリア」の主題による変奏曲
2.ヴュータン/悲歌
3.ストラヴィンスキー/悲歌
4.レフラー/4つの詩より 第1番「ひび割れた鐘」

5.フランク/ヴィオラ・ソナタ イ長調~第1、2楽章
6.武満徹/鳥が道に降りてきた

7.エネスク/演奏会用小品
8.シュターミッツ/ヴィオラ協奏曲 ニ長調
【演奏】
Vla:今井信子(5)/アントワン・タメスティ(2,4)、大島亮(1)、鈴木康浩(1,6,7)、アンドレア・ブルガー(1,8)、ルイーズ・デジャルダン(1,3)/MS:波多野睦美(4)、草冬香(2,4,5,7)、桐朋学園オーケストラ(8)
普段は目立つことが少ない弦楽器、ヴィオラに光を当てて毎年行われている大規模なイベント「ヴィオラスペース」のコンサートを2年ぶりに聴いた。今夜は2日間で行われるコンサートの1日目。5年来、このコンサートの企画を担うフランス人ヴィオリスト、アントワン・タメスティの話によれば、今回のシリーズのテーマは「フランス」だが、今夜のプログラムにはフランス人作曲家の作品はなく、その代わりにフランスに影響を受けた作曲家の作品を集めたということで、武満の曲も並んだ。
並んだヴィオラが主役の曲の中で知っている曲は、その武満作品とフランクのソナタ(元はヴァイオリンソナタ)だけだったが、馴染みのない曲もみんな充実した作品尽くしで、しかもヴィオラの魅力がとてもよく伝わる曲が並び、それらを何人ものヴィオリスト達の個性が光る演奏で聴け、「ヴィオラスペース」ならではのコンサートとなった。
最初のノックスの作品は、有名な「ラ・フォリア」のメロディーによる多彩な変奏曲。特殊奏法や故意の怪しい音程などの珍しさも面白かったが、何といってもヴィオラ4本による深く温かく香り高い響きに心を奪われた。次のヴュータンの「悲歌」は、泣きが入った演歌のよう。タメスティの歌心溢れるヴィオラが切々と悲しみを訴えた。同じ「悲歌」でもストラヴィンスキーの作曲となると全く雰囲気が異なる。デジャルダンが無伴奏で奏でる重音が続く不安げな旋律は、何だか頼りなく聴こえた。
波多野睦美の歌が入ったレフラーの「ひび割れた鐘」は、幻想的で沈思的な魅惑的な作品。レフラーなんて名前すら知らない作曲家だが、すっかり魅せられた。草冬香のピアノが奏でる夜の帳を静かに揺らすように鳴り響く鐘の音を背景に、波多野の深く濃厚で神秘的な歌と、それに気だるくまとわりつくように寄り添うタメスティのヴィオラとの対話が、深遠で果てることのない情景をイメージさせた。これは名曲で名演!そして、ヴィオラスペースを立ち上げ、長年支えてきた今井信子が登場。今井のヴィオラは筋金入りの真っすぐな強さがあり、スケールの大きな演奏を聴かせた。
続いて僕がずっと注目しているヴィオリスト、鈴木康浩が武満とエネスクの作品を演奏した。武満では、透明で浄化された世界と、エモーショナルな世界を巧みに弾き分け、音が結晶したように鳴る草のピアノと共に世にも美しいタケミツトーンを響かせた。エネスクでは切々とした語りと熱い歌が聴こえた。鈴木のヴィオラは、音が大きく堂々とした存在感を示すイメージが強かったが、今夜の演奏を聴いて、細やかで柔らかなニュアンスの表現にも長けているのを感じた。
演奏会の最後は、ブルガーが桐朋のオケを指揮しながらシュターミッツのコンチェルトを独奏。嬉々として瑞々しくはじけ、濃厚な表現力たっぷりのオケに乗って、ブルガーのヴィオラが明るく伸びやかに、豊かな表情を湛えていた。躍動感溢れる終楽章は華やかで、演奏会の締めに相応しかった。
ヴィオラの名曲に出会い、ヴィオラという楽器の魅力をここまでたっぷり味わうことができる機会はヴィオラスペースをおいてないだろう。貴重なイベントを今後も継続してもらいたいが、このイベントの協賛の方々だろうか、毎回開演時や終演時にロビーで偉そうな身なりで勢ぞろいして突っ立っているのが気になる。外に出たら黒塗りのハイヤーが列をなしていた。協賛してくれるのはいいが、大企業の存在感をあまり出さない方がいい。
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7.エネスク/演奏会用小品

8.シュターミッツ/ヴィオラ協奏曲 ニ長調

【演奏】
Vla:今井信子(5)/アントワン・タメスティ(2,4)、大島亮(1)、鈴木康浩(1,6,7)、アンドレア・ブルガー(1,8)、ルイーズ・デジャルダン(1,3)/MS:波多野睦美(4)、草冬香(2,4,5,7)、桐朋学園オーケストラ(8)
普段は目立つことが少ない弦楽器、ヴィオラに光を当てて毎年行われている大規模なイベント「ヴィオラスペース」のコンサートを2年ぶりに聴いた。今夜は2日間で行われるコンサートの1日目。5年来、このコンサートの企画を担うフランス人ヴィオリスト、アントワン・タメスティの話によれば、今回のシリーズのテーマは「フランス」だが、今夜のプログラムにはフランス人作曲家の作品はなく、その代わりにフランスに影響を受けた作曲家の作品を集めたということで、武満の曲も並んだ。
並んだヴィオラが主役の曲の中で知っている曲は、その武満作品とフランクのソナタ(元はヴァイオリンソナタ)だけだったが、馴染みのない曲もみんな充実した作品尽くしで、しかもヴィオラの魅力がとてもよく伝わる曲が並び、それらを何人ものヴィオリスト達の個性が光る演奏で聴け、「ヴィオラスペース」ならではのコンサートとなった。
最初のノックスの作品は、有名な「ラ・フォリア」のメロディーによる多彩な変奏曲。特殊奏法や故意の怪しい音程などの珍しさも面白かったが、何といってもヴィオラ4本による深く温かく香り高い響きに心を奪われた。次のヴュータンの「悲歌」は、泣きが入った演歌のよう。タメスティの歌心溢れるヴィオラが切々と悲しみを訴えた。同じ「悲歌」でもストラヴィンスキーの作曲となると全く雰囲気が異なる。デジャルダンが無伴奏で奏でる重音が続く不安げな旋律は、何だか頼りなく聴こえた。
波多野睦美の歌が入ったレフラーの「ひび割れた鐘」は、幻想的で沈思的な魅惑的な作品。レフラーなんて名前すら知らない作曲家だが、すっかり魅せられた。草冬香のピアノが奏でる夜の帳を静かに揺らすように鳴り響く鐘の音を背景に、波多野の深く濃厚で神秘的な歌と、それに気だるくまとわりつくように寄り添うタメスティのヴィオラとの対話が、深遠で果てることのない情景をイメージさせた。これは名曲で名演!そして、ヴィオラスペースを立ち上げ、長年支えてきた今井信子が登場。今井のヴィオラは筋金入りの真っすぐな強さがあり、スケールの大きな演奏を聴かせた。
続いて僕がずっと注目しているヴィオリスト、鈴木康浩が武満とエネスクの作品を演奏した。武満では、透明で浄化された世界と、エモーショナルな世界を巧みに弾き分け、音が結晶したように鳴る草のピアノと共に世にも美しいタケミツトーンを響かせた。エネスクでは切々とした語りと熱い歌が聴こえた。鈴木のヴィオラは、音が大きく堂々とした存在感を示すイメージが強かったが、今夜の演奏を聴いて、細やかで柔らかなニュアンスの表現にも長けているのを感じた。
演奏会の最後は、ブルガーが桐朋のオケを指揮しながらシュターミッツのコンチェルトを独奏。嬉々として瑞々しくはじけ、濃厚な表現力たっぷりのオケに乗って、ブルガーのヴィオラが明るく伸びやかに、豊かな表情を湛えていた。躍動感溢れる終楽章は華やかで、演奏会の締めに相応しかった。
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