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N響 2017年1月B定期(ヘスス・ロペス・コボス指揮)

2017年01月21日 | pocknのコンサート感想録2017
1月19日(木)ヘスス・ロペス・コボス指揮 NHK交響楽団
《2017年1月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1. レスピーギ/グレゴリオ風の協奏曲
 【アンコール】
 バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調 BWV.1005~ラルゴ
Vn:アルベナ・ダナイローヴァ
2.レスピーギ/教会のステンドグラス
3.レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」

1月B定期はヘスス・ロペス・コボス指揮によるレスピーギ特集。「グレゴリオ風の協奏曲」は曲名を聞くのも初めて。穏やかで柔らかく、淡い色調の糸を寄り合わせてタペストリーが織り上げられていくような、ヴァイオリンソロ付きの上質な音楽。ヴァイオリンを受け持ったウィーンフィルのコンサートマスターも務めるダナイローヴァは、そんなタペストリーの文様のなかで、派手ではないがフワッと浮き立ち、息の長い柔らかく上品で、温かみのある調べを奏で、確かな存在感を示していた。終始穏やかな曲調のためか、途中で気持ちよくなって少しウトウトしてしまったが、心地よい気分に浸ることができた。

後半の曲目では、気分もまどろみから覚醒へ転じた。「教会のステンドグラス」は、曲名は知っていても聴いた記憶はない。大聖堂を囲む一面のステンドグラスの光と色彩に包まれる気分の音楽かと思ったら、ステンドグラスに描かれた聖書の物語をシーンごとに音楽にしたということで、もっと親密な音楽だった。光と色というより、聖堂内陣の温度や湿度、ほのかな香の匂いまで漂ってくるような静けさと祈りと人の息遣いが感じられる。オーケストラはそんな祈りの空気を大切に包み込み、穏やかで乱れのない、密やかだけれどはっきりとした「語り」を聴かせる。その一方で、大音響を響かせた終曲など、ミサに集まった会衆による篤い熱気で歌われる合唱が、オルガンの響きと共に聖堂内の 空気を熱く震わせるようだった。

「ローマの祭り」では、ヘスス・ロペス・コボスの「棒さばき」の巧さが光った。お祭り騒ぎの表現とは言え、単純な浮かれたばか騒ぎではなく、リズムの一つ一つが深く真っ直ぐに大地に刻まれ、 地に足がついた演奏。それは大地に根を生やした人々の、堅実で力強い息遣いを伝えてきた。圧巻は終曲。活気に満ちたナボナ広場の喧騒の渦中に飛び込んだ気分。笑い声、怒鳴り声、子供の泣き声、酔っ払いダンスに喧嘩に大道芸… あちこちで起きていることがゴチャゴチャにならずに、それぞれがリアルに迫ってきて、騒ぎの中に引き込まれて行った。終盤の弦のユニゾンで奏される歌のけん引力の凄さと言ったら… 音楽は更に盛り上がり続け、どこへ連れて行かれるかわからないほど天井知らずの興奮へ導かれ、圧倒的なフィナーレを飾った。

パンフレットには「ヘスス・ロペス・コボスは興奮を煽るタイプの指揮者ではない」といったことが書かれていたが、どうしてどうして、ドラマへ引っ張り込む力と明晰な表現力も持ち合わせている。そして、それを実現したN響の底力も改めて思い知った。

CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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