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バッハ博物館(音楽の旅 2023 レポート)

2023年11月28日 | ドイツ、オーストリア 音楽の旅2023
音楽の旅 2023 レポート(Wien, Berlin, Leipzig, Nürnberg)

2023年9月にウィーンとベルリンを中心に、演奏会や作曲家ゆかりの記念館を訪ねたレポートです。

BACHMUSEUM LEIPZIG ライプツィヒ・バッハ博物館

2023年 9月16日(土)

バッハの町と云えば、後半生の27年間をカントルとして奉職したトーマス教会があるライプツィヒが真っ先に浮かぶのではないでしょうか。折しも今年(2023年)はバッハがトーマス教会のカントルに就任してから300年目を迎える記念の年です。そんな年にドイツ統一後初めてライプツィヒを訪れ、真っ先にバッハ博物館を見学しました。

トーマス教会のすぐ近くにあるバッハ博物館は、現在はバッハ資料財団が入っている建物の中にあります。トーマス教会の敷地内で最も古い建物のひとつで、ボーゼハウスと呼ばれています。ここにはバッハ家と懇意にしていた商家を営むボーゼ一家が住んでいました。バッハ一家はボーゼ家のちょうど真向かいにあったトーマス学校寄宿舎に住んでいましたが、寄宿舎は1902年に解体されました。


エントランスのホワイエでは大理石のバッハの胸像が出迎えてくれます。この胸像は、1894年に発見されたバッハのものと思われる頭蓋骨から型取りしてカール=ルートヴィヒ・ゼフナーによって作られたものです。


入口近くにある薄暗いSchatzkammer(お宝部屋)は、博物館が所蔵する貴重な資料の宝庫です。バッハの自筆譜、手紙、初版の印刷譜、肖像画などが展示されています。
あの超有名なエリアス・ゴットロープ・ハウスマンが1748年に描いたバッハの肖像画を見ることができました(室外からズームで撮影)。バッハの肖像画といえば右手にカノンの譜面を持つこれですよね。2015年にこの肖像画を所蔵していたアメリカの音楽学者から譲り受けたそうです。間近で見るとバッハからパワーがもらえる気がしました。


2階のエントランスにはオルガンの演奏台が展示されています。ライプツィヒのヨハネス教会にあったオルガンの演奏台で、この楽器が完成した際、バッハが楽器の鑑定のために試奏しました。老朽化や空襲の影響で演奏台の多くの部分は新たに作り直されましたが、これはライプツィヒで唯一残っているバッハが演奏したオルガンを偲ぶことが出来る展示物です。


バッハの自筆譜のオリジナルは、全て1階のお宝部屋に展示されていて撮影できませんが、2階のバッハの作曲の歩みを伝えるコーナーでは、いくつかのバッハの自筆譜をファクシミリで見ることが出来ました。

平均律クラヴィーア曲集第2巻の前奏曲とフーガから、変イ長調のフーガの自筆譜です。流れるような美しい譜面です。


マタイ受難曲第2部の終盤、イエスが十字架上で息絶えたあとに天変地異が起こったことをエヴァンゲリストが朗唱し、合唱が「まことに、この人は神の子であった」と歌う感動的な場面が譜面に歌詞付きで記されています。


こちらは、ロ短調ミサから「クレド」の冒頭部分。


この手紙、筆跡は美しいけれど判読は至難の業ですね。解説のキャプションによれば、大学の音楽の職務を分割されて収入が減ったことを不服として、ザクセン選帝侯に提出した嘆願書だそうです。


「バッハのオーケストラ」の部屋には、バッハの時代の様々な楽器が展示されています。室内ではバッハの管弦楽曲が流れていました。




様々な楽器を演奏しているプレイヤーのパネルが並び、パネルにあるボタンを押すとそこが明るく照らされて、流れている管弦楽曲のなかでそのプレイヤーが演奏している楽器の音だけがクローズアップされて聴こえる仕組みです。管弦楽組曲第3番、ブランデンブルク協奏曲第5番、カンタータ19番のコラールのオケアレンジ版などで、楽器のそれぞれのパートを聴くことが出来ました。


試聴室ではバッハの全作品を、様々な検索方法で探して聴くことができるほか、館内のあちこちに試聴ブースがあります。ここの試聴ブースでは鈴木雅明氏指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏が2曲聴けるようになっていました。雅明氏はライプツィヒ市からバッハメダルを授与されているし、今年のバッハフェスティバルでは、鈴木雅明指揮BCJがトリでロ短調ミサを演奏しているし、雅明氏もBCJもバッハにとって欠かせない存在と云えるでしょう。


(拡大可)


カンタータ第191番「「正しき者に光を」より冒頭合唱/鈴木雅明指揮BCJ


ヨハネ受難曲よりアリア「我を打ちたまえ」/T:ゲルト・テュルク、鈴木雅明指揮BCJ


我らがBCJの演奏でバッハの2つの名作を心静かに聴きました。

バッハ家にあったであろう様々な道具がテーブルに並び、手に取って音を出してみることができます。バッハが日常でどんな音を聴いていたかを体験できるという趣向です。


どっしりしたこのチェストは、現存する唯一のバッハ家で使われていた家具だそうで、ずっとマイセンの博物館で寄付金箱として使われていて、2009年にバッハ家のものということがわかったという代物です。


バッハ博物館は、建物はバッハが暮らしていた家ではないため、バッハの生活や音楽活動を部屋や家具から感じることはできませんが、ハイテクを使ったり、クイズ形式の謎解きがあったり、触れて体験するコーナーがあったりと、様々なアプローチでバッハとバッハの音楽に触れることができる博物館でした。

博物館の向かいに建つトーマス教会の入口には、バッハの銅像が立っています。とても堂々とした立派なバッハをイメージする銅像です。


一方、トーマス教会のすぐ近くの歩道の植え込みにはもう一つのバッハの像がひっそりと立っています。地面に埋め込まれたパネルには「1843年にメンデルスゾーンによって建てられた最古のバッハ記念碑」と刻まれていました。ライプツィヒで活躍したメンデルスゾーンは、バッハを世に蘇らせた真の功労者でもあります。このバッハ像と向い合わさるように、同じ歩道の一角にはメンデルスゾーンの銅像が立っていました。


トーマス教会の前の銅像と比べ、質素なバッハというイメージです。この旅行に出かける前に聴いた鈴木雅明氏のレクチャー「バッハとライプツィヒ」で、雅明氏がこの記念碑のことを「より親しみやすいバッハに会える」と紹介してくれたおかげで見ることができました。トーマス教会から数分のところにあるので、ライプツィヒに来たら是非こちらのバッハにも会いに行ってください。



バッハ像を見つめるように立つメンデルスゾーンの銅像

鈴木雅明:音楽講演会「バッハとライプツィヒ」

オルガン礼拝コンサート(2023.9.16 ライプツィヒ・トーマス教会)
Willkommen, Bach! (ようこそ、バッハ!)(2023.9.16 ライプツィヒ・トーマス教会)


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