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タカーチ弦楽四重奏団

2013年09月26日 | pocknのコンサート感想録2013
9月26日(木)タカーチ弦楽四重奏団 
~クァルテットの饗宴2013~
紀尾井ホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第4番ハ短調 Op.18-4
2. バルトーク/弦楽四重奏曲第4番 BB95
3. ブラームス/弦楽四重奏曲第2番イ短調 Op.51-2
【アンコール】
スメタナ/弦楽四重奏曲第1番ホ短調 Op.59-2「わが生涯より」~第2楽章

タカーチ弦楽四重奏団は1975年にハンガリーで結成された団体。これまでの間にファーストバイオリンとビオラはメンバー交替をしているが、今夜の演奏を聴いて、このカルテットはメンバー交替を経つつも、カルテットとしての強い連帯感を育くみ、このカルテットならではの固有の音色や語法を獲得し、更にこの先のステージを見据えながら歩んでいるのを感じた。

ベートーベンの第1声を聴いただけでこのカルテットのただならぬ魅力が伝わってきた。磨き抜かれた木製の高級家具のような光沢と、深い味わいを持つ響き。アンサンブルは、天然酵母をたっぷり使った生地を入念に練り上げ、ほどよい空気を含ませてふっくらと焼き上がったパンのように、柔らかくてしなやかな弾力性があって、いい香りがする。

このクァルテットが奏でるベートーベンは、口角泡を飛ばしてアグレッシブに迫ってくるベートーベンではなく、情熱を宿しながらも冷静な口調で、深い確信を持って語りかけてくるベートーベンだ。4人の呼吸が見事にシンクロナイズして、ひとつの整った美しい形に凝縮される。第3楽章の中間に出てくる3連符の刻みに乗ったバイオリンのデリケートな歌の美しさ、第4楽章のコントルダンス風のリズムの楽しげな表情もそんな見事なシンクロが効を奏した賜物だろう。

続くバルトーク、バルトークの弦楽四重奏曲というと火花を散らして攻めてくる刺激的な演奏を期待してしまうが、タカーチSQ のアプローチはバルトークの攻撃性よりも、濃厚な民族性を重んじ、熱っぽく語って歌い、臨場感ある踊りの様子を伝えてきた。若くて腕の立つプレイヤーが繰り広げるメカニックな熱演もいいが、今夜のようなバルトークを聴くと、これこそ本物!という気がしてしまう。おまけにこのクァルテットはメンバー全員が驚くほど腕も立つ。

後半はブラームスの2番。ベートーベン、バルトークと聴いて、タカーチSQのブラームスはきっと最高にしっくりくる演奏が聴けると期待した通りの素晴らしいブラームスだった!これ以上あり得ないくらいのデリケートな開始。美しく細かい模様のレースが風になびくよう。レースはたなびきながらも、求心力が働いて一点を目指し、密度の濃い演奏が展開する。そしてその演奏はいつも匂やかに香り立ち、滑らかに歌い、熱く語ってくる。極上のブラームスに酔いしれた。

アンコールで聴かせてくれたスメタナがこれまた素晴らしかった。民族舞踊を見ているような楽しさ。特に中間部のふわっとした動きは、スカートを膨らませて軽やかに宙に浮くダンサーの姿が目に浮かぶようだった。

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