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蓮の会ホールオペラ「トロヴァトーレ」

2008年09月06日 | pocknのコンサート感想録2008
9月6日(土)蓮の会ホールオペラ第二回公演
【演目】
ヴェルディ/「トロヴァトーレ」抜粋

【演奏】
ルーナ伯爵:旭 潔/レオノーラ:杉下友季子/アズチェーナ:小谷円香/マンリーコ:小林 浩/イネス:横関文子/衛兵:小林和浩
ピアノ:大賀美子

日本の内外で活躍する今が旬の歌手達が会して行われたホールオペラ公演で「トロヴァトーレ」を聴いた。このホールオペラはパリトン歌手の旭潔氏が主宰する「蓮の会」のシリーズ公演で、何と言ってもその旭氏が歌ったルーナ伯爵がこの公演の要となった。

ホールの後方で聴いていたがその轟かんばかりの太く底力のある声はホールの隅々まで響き渡り存在感を出しまくり。ずっしりとしたバスの魅力から輝かしいヘルデンテナーの声質までを備え、オペラの場面場面で使い分け、役柄に大きな幅を与えていたのはさすが。旭氏の歌はこれまでサロンコンサートで聴いていたが、こうした本格的なホールに立てば更にその真価を発揮することを実感した。更に大劇場への出演が待たれる。

レオノーラ役の杉下さんも良かった。声も表情も密度が濃く、音の運びも滑らかで、気高さを持ちつつ熱くてひたむきなハートがひしひしと届いてきた。ドラマティックとリリックを兼ね備えたとても幅の広い歌唱を聴かせてくれた。

アズチェーナを歌った小谷さんはヴィヴラートの幅が少々気にはなったが、こうした一癖ある役柄にはむしろ合っているかも。いずれにしてもその存在感と熱い怨念がたぎるような異彩ぶりが十分発揮されていて、役を見事にこなしていた。

タイトルロールはヨーロッパでも活躍する小林氏。音が高くなると声が後退してしまうのがちょっと惜しまれるが、場数を踏んだ経験がそのステージ姿に貫禄を与えていた。スッと立った立ち姿や気品とエネルギーがみなぎるような振る舞いが大変印象深い。

目だった歌はなかったもののイネス役の横関さんもとてもしなやかでしっかりした歌を歌っていて、こうした役にも実力のある歌手が配されたことで公演全体の格が上がる。

今回の公演はピアノ伴奏で行なわれたが、ピアノの大賀さんがまた素晴らしかった。緊迫した場面が連続するこのオペラだが、そうした緊張感を途切れさせることなく、ぴったりと歌をサポートし、また情景描写や心理描写を雄弁に行い、主役級の歌手達と優るとも劣らない本公演の立役者と言っていい。

これほどに充実した公演だったが、お客の入りがもう一つだったのはもったいない。有名なアリアが随所に散りばめられたオペラではあるが、ストーリーや流れをきちんと把握していないお客(自分も含めて)が少なくないことを考えると、字幕を出すとか、ナレーションを入れるなどして、オペラの筋書きが誰にでもよくわかるように工夫してもらえると、もっと多くのお客が集まるのではないだろうか。今後にますます期待。

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